3話
3話目にして来たよ!
一話の後書きにておまけあります。
このまま帰るのもアレだから、モブについて私は周囲の評価を伺うことにした。
まずは部屋を出てから、こっそり護衛が付けられているので彼らに聞いてみた。
「カイン外相ですか。あの方は王妃陛下の甥っ子でもありますね。もちろん、殿下方の従兄弟である方との解釈でもいいでしょう。ですので王族の方々と気さくに話されておりますね」
「各国に外相として向かわれる立場の方ですので、顔も広いですし知識量も豊富な方ですね」
……モブやるじゃん。そうなのねと頷き、次に王城に働く侍女の人達に声を掛けることにした。
「カイン外相……ロラン様ですね。王族の方々もですが、身の回りのことはご自身でされる方だとお聞きしております」
「そうそう、一時期鈴をお持ちになられてたそうですよ」
これといって特筆したことも聞かない、良く言えば優等生、悪く言えば特徴のない人ってことかしら。……やはりモブはモブなのか。そんなことを考えながら、足元を見ながら歩いていたら、靴先が見えたので立ち止まり顔を上げる。
噂をすればモブじゃない。
「モ……カイン様ご、ごきげんよう!」
「こんにちはラティエ嬢。少し時間が空いたのでお見送りしようと伺ったのだが、同伴よろしいかな」
チョコレート色の瞳は私を見つめる。この瞳に見つめられると落ち着かないのよね。モブは私に手を差し出したのでどうやらエスコートしてくれるみたい。私はモブの手に自身の手を重ね、歩き出した。
「お茶会に参加出来なくてごめんね。叔母上とリュシュ…王太子との茶会はどうだったかな」
「ウフフ楽しかったですね」
身内の話を聞いているのだ、どう返事をしていいのか分からず乾いた笑いになってしまう。何割かは貴方を貶す内容だったなんて本人を前に言えるわけがない。そういえば王太子殿下が何か言いかけた話があったが、目の前に本人がいるのだし、本人に直接聞いてみよう。
「カイン様は、今回我が国にどのような件でお越しになられたのですか?」
「僕っていうより、ロラン家は色んな事業を手広くしていてね。今回は他国とカルティロナ国のパイプ役として遣わされたんだ」
まじかモブ凄っ!!!いやいやミニゲームでも顔は出てないが、攻略者に協力してくれる役だったけれども。いざ本人の口から話されると、ここはゲームではなく現実世界なのだと驚嘆する。
顔に出ていたのか、モブが私を見るそれは少し困ったような表情だ。
「近年のカルティロナ国からは食材の輸入を依頼されるね。今回だと……ほら、ラティエ嬢もよく知っている栗とさつま芋」
やはりお前かヒロイン!
そりゃ困った表情されるわ。その食材のせいで起きた修羅場からの今日ですものね。申し訳ないことしたかなとか全然気にしないでほしい。あれはヒロイン達の問題なので、外部のモブは気を悪くしないでほしい。ほんと外部からしたら馬鹿らしいことなので!
リュシアンめ、態々輸入してまで取り寄せていたのか……。
「何故リュシアンがあれ程同じ食材に拘るのか納得しました。美味しい食材が手に入るからこそ、その食材を極めるという彼の矜持だったのですね」
私の言葉に、チョコレート色の瞳がパチパチと瞬く。そしてうんうん、と納得し「お役にたてて良かったよ」と返された。
彼の足がピタリと停止したので、どうしたのかと周りを見れば、いつの間にか城門に辿り着いていた。どうやら随分と話に夢中だったみたい。事前に手配してあったのか、朝王城から遣わされた時と同じ馬車を見つけた。
馬車に乗り込むとこまでエスコートは続く。モブは律儀な紳士だった。
「ラティエ嬢。気を付けて」
「はい。それではカイン様また今度」
「ああ、また手紙も出すよ。それじゃあまたね」
やっぱり手紙届いてたーー。
こちらに手を振ってくれたので私も手を振り返す。苦笑いしてないわよね、精一杯笑えてるよね?うう、モブの優しさに罪悪感がびしばしくる。すみませんすみません今度から気を付けます……。
一人馬車の中で頭を抱えるのであった。
馬車が遠くに過ぎていくのを眺め、見えなくなれば手を振るのを止める。
「やはり見えてる……か」
呟かれた声はどこまでも平淡としたそれだった。
踵を返し城内へ入る。カインの元に一人の男が歩み寄る。
「お見送りは済んだのですね」
「そうだね」
僕に並列して歩く彼は、外相である僕の補佐官であるヘクターだ。彼は僕に書類を渡し、僕は歩きながらそれに目を通す。城内で働く者は僕らの姿を見掛ければ壁際に寄り頭を下げていく。その間を通り抜けながら書類を読み終えたので顔を上げる。
「うーん」
「何か不備がありましたか?」
「いや、よく調べてあるよ。」
昨日の今日で調べられた書類にラティエ・ショコルドル子爵令嬢について調べられていた。
「まあ暫く泳がすか」
楽しい。




