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21話

遅くなってしまいました。

 


 ファンタジーって何だっけ。

 前世の記憶を取り戻してはや三年。遂に前世のファンタジー要素が現実でも起こっちゃいました。


 ほらあそこにドラゴンはっけーん!……ってちょっと待って!


 ドラゴン発見ってなにそれ。

 いや初めて目の当たりにしたあの場では、それ程驚かなかったけども。

 確かに(ラティエ)の反応は薄かった。だってモブ(カイン様)が日常で起こる風景のように話すし、それにさっさと馬車にエスコートされたから、その場では深く追及せずあらそうなんですね~って大人しく猫被っちゃったのよ。

 でも後で思い返せば返す程ラティエ、あの場ではもっと驚くべきことだし突っ込みをすれば良かったと自責の念に駆られる()、現実はそう甘くない。あの後馬車内でのモブとやり取りした会話が物騒すぎて、私の自責の念どころではなかった。どういうことよ。



 モブとの話し合いの末、そのまま急ピッチで国を二つ越えるのだけど、その間モブとは別々の馬車となり、彼のいる馬車は慌ただしい様子だったので私は一人別の馬車で大人しくしていた。

 こうしてウィンドリンゼル国(目的地)に着くまでの長い旅路は随分と一人きりとなってしまった。


 暇なので時折空を眺めれば、わぁ~なんか飛んでる。それに一頭ではなく群れでだぁ。あの高度から見た大きさだから実物はとっても大きいんだろうな()()()()て、と現実逃避をしたくなった。

 原作ゲームにはでなかった裏設定とかあるのですか。ちょっとそこ教えてください。




 もう本当に……。



 展開についていけない!


「さあ行こうかラティエ嬢」

「は、はい」


 藍色と銀色のドレスを纏い、緊張している手を誤魔化すように、こちらに差し出された腕へと添える。そしてきらびやかな会場へと歩き出した。




 どうもこんにちはラティエ・ショコルドルです。しかし今回は隣にいるモブの()()()の設定のようです。

 そこでモブと話し合った内容が――。



「まず始めに、今回僕は初めてウィンドリンゼル国の王都に()()することになる。そしてラティエ嬢は、()()()驚かず、いつも通りの君でいてほしい」



 何故そんなことを言うのだろうかと首を傾げたが、その訳を当日になって理解する。

 差し出している腕の本人をちらりと盗み見れば、目元には鉄製で作られ、細部には透かしを入れられた現代で例えるならベネチアンマスクをしているパートナーもといカイン様がいる。

 マスク越しに彼と目が合えば、緊張している私とは裏腹に柔軟な笑みを私へと向ける。その笑みに少しだけ鼓動が高鳴る。



「先方には先に粗方話しを済ませているから、挨拶が済めば肩の力を抜いても大丈夫だよ」

「その()()がとんでもない相手ですが……」

「ハハハ確かにね。けれど僕と各国を巡るなら、これはつきものだからね」



 カーペットの続く道から大きな扉が開かれている。ここから会場であるダンスフロアへと出るようだ。いよいよだと身を引き締め、足を踏み入れようとしたときだった。



「君は僕を必ず見つけてくれるのかな」

「……え?」



 小さく呟くが聞き取れ、聞き返そうとカインへと顔を向ければ……。

 彼の姿が残像のように揺れ、違う人物の姿がカインへと重なり、驚きに瞬きをすればそこにはいつも通りのモブの姿だった。

 無意識に彼の腕に触れている指に力が入ることに気付いていない。


 そんなラティエの様子にカインは当然気付いてはいるが、次には会場を視界に定め、口元に笑みを浮かべると一歩前へと踏み出しラティエのエスコートをリードする。




「行こうか、ラティエ嬢」



 会場のドアが開かれ、目映い景色が広がった。会場内は暖色の装飾が多く使われ、会場全体を明るく照らす。

 自身も貴族ではあるが、学生の身であり社交場に参加したのは数度だけ。にもかかわらず他国の貴族社会に足を入れるなど到底不可能である。右も左も分からぬところに置いてかれたら最後、絶対にボロがでる。

 後ろにはヘクターさんも参加しているが、彼は女性たちに囲まれているので最早居ない者カウントだ。よっ今日も眩しい美貌は各国健在ですね!

 とまあ、なのでここは何としてもモブと離れる訳にはいかないので事前に彼には釘を指しといたのだ。




「ならば条件ですカイン様。いいですか、必ず私の傍に居てください。もしも置いていこうものなら……」

「置いていこうものなら?」

「壁の花にでもなります」

「来賓が壁の花になるのは……それは確かに良くないね」




 という訳で、夜会中は傍にいてくれる約束を取り付けたのだが……。会場内の演奏が変わり、会場内にいる皆の視線が一点へと注目される。会場入りした扉とは違い、赤色の大きな扉が開かる。


 赤色のすらりとした衣装には金糸をふんだんに使われ、王冠を被る女性は、7歳くらいの小さな男の子にエスコートされる。思わぬほっこり場面に場の緊張は和らぎ、和やかな空気へと変わる。


 小さな男の子にエスコートされた女性は会場内を一瞥し、口元に笑みを見せる。



「今宵は我が王太子と共に夜会を開催する。皆も楽しんでいくように」


 ()()()()の夜会開始の言葉に会場内はダンスの曲が流れる。

 小さな王子は母親に向けて手をかざせば、笑顔で握りかえし会場の中央へと二人して歩き出す。

 そして一曲目は主宰である王族による和やかな夜会が始まったのであった。




 王族が踊り終われば、次には会場内にいる男女が中央へと集まり踊り出すのを眺めていれば、隣から「ラティエ嬢」と声を掛けられ横へ振り向いた。



「今夜は舞踏会だから僕たちへの挨拶は暫く後に回ってくるんだ。だからその、僕と……」



 耳を赤くしながらどもるカインになんだろうと眺めていたら、横から反対側の手を引かれて思わずそちらへと振り向いた。



「お姉さん、僕と踊ってくれませんか!」


 なんとそこには先程まで中央で一曲目のダンスをしていた少年もといウィンドリンゼル国の王太子殿下が、眩い笑顔で私の手に触れていたのだった。














活動報告にて20話のおまけあります。

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