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17話 ラムダク大国

二章始まりました。よろしくおねがいします。

 


 どうもラティエ・ショコルドルです。現在私は提灯を翳しながら暗くひんやりした通路を一人で通っております。とてもじめじめしています。



 何でこんなことになったのだろうと現実を見たくなく遠くを眺めたくなるが、生憎天井が真っ暗闇で先が見えません。これぞお先真っ暗だ、なんちゃって。

 もうこんなくだらないギャグを考えるくらいには疲れきって表情が死んでるラティエは、どうしてこんなことになったのだろうと考えた。





「そうだラティエ嬢、ラムダク大国に行く?」

「ちょっとお出掛けみたいな軽い口調で話してませんか?」

「それで、ラティエ嬢は?」

「勿論着いていきます」


 息巻くラティエにカイン(モブ)は優雅にティーカップを持ち上げ口をつける。一瞬だが口角が上がったのをカップが巧妙に隠し、ラティエからは見えていなかった。そしてその後小さく呟く。


「今年も建国祭は参加できそうにないな」



 ことの発端は私がモブに着いていくって強引に取り付けたことからが始まりだ。しかしそれからの行動が早く、卒業パーティーを終えた翌日には我が家の屋敷に訪れ、両親に成り行きを説明し、外のテラスでお茶を頂いていたときにこの話題を持ち出されたのだ。



「こちらで旅路の用意を手配するけど、ラティエ嬢からも持っていきたいのがあれば見繕ってもらいたい」

「期限はいつまでですか」

「そうだね、明日には」

「え、ちょ、明日ですか」

「申し訳ないね、どうしても立て込んでて……ああいや違う、そういう意味じゃないんだこれは……」

「結局、婚約したら私をまた置いていくつもりだったのですね。二つの意味でも」


 そう言葉にした後にハッとしたモブは慌ててラティエへと弁明するが、ラティエは拗ねたままだ。それもその筈だ、本来卒業パーティーで婚約を取り付けたらカインはラティエを国内留学という(てい)のいい足留めをし、王妃陛下(叔母)に監視役を任せるつもりであったからだ。そしてトドメがこれである。そもそもカインはカルティロナ国そのものに長く留まるつもりではなかったのだ。

 当然そのことに感付いたラティエは、顔を横に向き完全にへそを曲げてしまった。

 カインからは彼女の横顔が見えるだけ。ボロを出し自業自得だ。



「返す言葉もない……」


 それなりに女性と接する環境に置かれ、どう対処すれば事を荒立てず穏便にすむか身をもって経験してたつもりが、彼女(ラティエ)相手だとどうも通用しないなと目の前の仮婚約者を眺めながらカインは思った。

 気候に恵まれ外での活動も過ごしやすい穏やかな日中とは裏腹に、外のテラスで行われた茶会での二人の醸す空気は真逆を纏っていたのだった。



 それからなんとかラティエの機嫌も治り、翌日二人は出立したのだが……。



「え、たった一ヶ月程でラムダク大国に着くのですか」

「そうだね。能力の高い馬の飼育,それに伴い替え馬用の宿駅の整備,貿易路、街道や橋の渡し船の改良によって大幅に時間を短縮することが出来るようになったんだ。最も一番時間短縮できるのは海路を船で下るのがいいけど、船は人によって得意不得意があるからね。今回は馬車を利用するが、休憩時間もきちんととるし、観光もできる時間を組み込んでるから退屈しないと思うよ。現在地を地図で示すならこのあたりだよ」


 馬車の壁に貼られていた地図に指を指せば、既に王都から離れ、国の外れに来ているようだ。カルティロナ国と真逆に位置するラムダク大国に向かうにはかなり時間を要するだろうに、この馬車時速何キロなのと思わず計算しようとしたラティエに一つの瓶を差し出された。



「リュシアン殿からこれをラティエ嬢にと頼まれてね」


 手渡されたそれは宝石のようにカラフルな紙に包まれ沢山入っていた。これは私とリュシアンが関わることになった思い出のキャンディーだ。店舗ではキャンディーの数個売りも人気だが今までは紙袋か直に手渡しなどが専らだった。だが問題もあり、キャンディーが溶けて引っ付いたりするため持ち帰りには瓶ごと購入が主流だった。しかしそれだとそれなりに値段も張り、子供だけで手軽に購入するには手が出しにいのが現実だ。そもそもこのキャンディーはリュシアンの意向で子供たち向けに手軽に手に入れれるよう発案した商品だったのだが、子供たちには少しばかりもて余してしまう商品であったのだ。そんなことになっては本末転倒になってしまうのでどうすべきか頭を悩ませていたリュシアンの元に一通の手紙が届いたのだ。キャンディーをワックスペーパーで包んでほしい、と。そこから目まぐるく動く彼を学園で見かけてはそっと見守っていた私だったが、婚約者と上手くいってなく関わることになり、そこからまあバレるよね。


「これラティエの文字だよね」


 それなりに仲良くなり、気兼ねなく会話するようになったときに手紙を持ちにこやかに笑うあの顔を私は忘れない。キラキラしてたけど言い逃れなど許さないあの圧がとても恐ろしかった。やだ~ヒロインてば怖い。



 そんなことがあったなと手元でキャンディーを一つ遊ばせながら思いを馳せれば、向かいに座り大量の資料と格闘しているモブへと差し出した。



「カイン様一ついかがですか」

「ありがとういただくよ」


 私も一つ食べようと両端を捻られたワックスペーパーを解せば、中から緑色と透明が螺旋に模様されたガラス玉のように美しい飴玉が手のひらへと転がる。それを口に含めば爽やかで優しい味がじんわりと広がった。

 昨日は急いで旅に出る支度をする中で、親しい人たちに手紙のやり取りをしたが何せ急の別れで親友二人の都合が合わず、卒業パーティーを最後に会えず仕舞いになってしまったのだ。リュシアンの結婚式見れなくなっちゃったな。ツィリィア嬢は大国トラッドルサ国に留学に行くのでそれこそ会えなくなってしまう。それでも……。チラリと目の前の人物を盗み見すれば、飴玉を口に含みながら書類を見ているカイン(モブ)の姿がある。


 何となくだけど、この人を見失ってしまえば二度と会えない気がするのだ。自分の勘がそう告げている。だからこそ私は彼の側にいることを決めたのだ。そしたいつか彼に聞けるだろうか、カイン・レルトリッド・()()()について。





 ラムダク大国への旅路は始まったばかりだ。


 口内で小さくなった飴玉を舌で転がしたのだった。
















「ラティエ嬢、馬車は三台あるんだし疲れたならいつでも一人でゆっくりしてもいいからね?」

「大丈夫です!体力あり余っているので」

「そうか。遠慮しないでいつでも声かけてくれればいいよ」

「はい!」

「(中抜け出来そうにないなぁ……)」

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