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13話 茶会

 

 深い木々に囲まれた先にはガラス張りのドーム状の天井に、何重にも布が垂れ下がっているグランピングのような建物がある。中には大きな丸いテーブルを長いソファーがU字型に囲んでいた。

 この場所は木々や石垣に巧妙に隠され囲まれている。垂れる布に一つだけ鈴が飾られ、不意に鈴の音が一つ鳴った。



「あら、あたしが一番のようね」

「ん、久しぶりだね三番目」


 突如現れた人物に驚くことなく、部屋の脇に置かれたカウチから男が起き上がる。



「なーんだ四番目居たのね」

「毎回思うけど、久しぶりに会う家族に対してそれはどうなの」

「あらじゃあ可愛がってさしあげようかしら」


 目をギラギラさせて近付いてくる相手に男は慌ててカウチから降りて後ろに下がろうとした。そしたら両腕を後ろからがしりと捕まれた。気付いたら鈴が二回小さく揺れた後だった。


「今回はこの人数だけですか?」

「なになに~楽しそう~」

「ちょ、お前ら!」

「久しぶり~四番目~」

「五番目六番目悪乗りするな!」

「それは命令ですか?」

「そうだ!」

「ノリ悪すぎです」

「あ~あ、つまんない~」



 後ろの二人は悪態をつけばさっさと席に付くと、各自でお茶を準備しだし途端に男の事など気にもかけていない様子だ。

 そして男と向かい合わせにいる相手はというと、じとっとした目で、手元にある一枚の紙を男の目の前に差し出した。



「はい請求書」

「ここで渡されたらややこしくなるんだけどな」

「何よ久しぶりに連絡きたかと思えば、ドレスを急いで四着も用意しろとか無茶振りしてきたのは、どこの誰かしら~」

「……すみませんでした」


 男の額をぐりぐりと指で押す三番目はある程度満足したのか、ふっと勝ち誇った表情をし次には建物に設置された時計を確認する。


「今日集まったのはこの四人だけ。一番目はいつものことだけど、二番目が無断で欠席なんて珍しいじゃない。あー待って、この様子だと寝てるみたいね。あらら寝りが深いわ。無理やり起こしてもいいけどどうする?」

「二番目は~寝起き悪いから~後でいいよ~」



 間延びした独特な喋り方をする、瑠璃色の髪を複雑に編み込みしている六番目に同意したのか、緩やかに巻かれたパール色の髪をかきあげながら三番目もソファーへと腰かけた。四番目と呼ばれた男もソファーの端に腰かけた。



「ある程度情報は各自に伝えてある通りだけれど、スティロア国について」

「軍部に潜入中ですが、それらしい動きの訓練は見られませんね」

「どこかが貧しいわけでも~鉱山や新たな燃料が発見された訳でも~ないみたい~。強いて言うなら~あんなに大国にべったりだったのに~ちょっと自立を目指してるみたい~。そこについてはまだ取り込み中~」

「これといった情報がないわね。四番目、貴方は」

「どうやら、他国から資源の見込みがなくなった鉱脈の調査を請け負っているみたいだよ」

「使い道なんてないのにどうしてかしら」

「鉱脈は~有害物質が発生するから~調査なんて誰もしたくないのにね~」

「鉱脈……山の遠征訓練よりもむしろ内部の緊急時の守備強化をしていましたね」

「そう、それ」



 新たな声と共に鈴が小さく振動する。四人は声のするカウチへと見れば、よれよれの服装をさらに着崩しカウチにもたれかかっている人物がいた。


「二番目!来れたのね良かったわ」


 金糸雀色の髪をめんどくさそうに撫でつけながら、二番目と呼ばれた人物は気怠げで、起き上がる気配がない。


「恐らくだが、不法金属精錬をしている可能性がある。今すぐあの国を止めなくてはいけない」

「一度までならず二度もですか」

「え~(トップ)総取っ替え~」

「これじゃあ、貴方の結婚は当分先になりそうね」


 ちらりと三番目が男を一瞥すれば、男は無表情で頷くだけの様子に三番目は驚いたように瑠璃色の瞳が見開かれ、途端に眉を寄せた。


「そうだね。取り敢えず彼女は叔母上の元で預かっててもらう」

「あぁ?こっちにはそれ聞かされてないけど四番目」

「口が悪いわよ二番目」

「私の調査ミスだね~皆ごめんなさい。五番目は~私と一緒に着いてきて~」

「貴女がいち早く異変に気付いたのですから問題ありませんよ六番目」

「それなら一番目は私が呼び戻すわ」

「あーこっちは監視の目がキツくて、なか抜け位しかできそうにない」

「二番目、援助だそうか?」

「否、そっちに人員を割いてくれ。こっちは内部スパイの疑いをかけられているだけだ」

「二番目やば~!それじゃあ~いってくるね~」

「それでは失礼します」


 鈴の音が二回鳴り、五番目と六番目の姿が見えなくなればカウチにもたれかかったままだった二番目が、残った二人へと気怠げに声をかけた。


「金属精錬は古代より変わらぬ精錬方法だが、違法精錬は利益()()を優先している製法だ。本来なら適切な処置をしなければならない代物であり、このままでは膨大な公害になる。公害は環境、人体へ多大な損害を及ぼすだけでなく、それを修復するにも時間がとてもかかるんだ。下手すればその物質その物を使用禁止されてしまう。あれはまだまだ文明の進歩の可能性があるのだ。それだけはなんとしても避けたい」

「研究気質は分かったけれど、それについては私達だけではどうしようもできないわよ。今の二番目の立場では大国に話をつけるどころか帝国から出ることも難しいじゃない」

「分かった。僕が話をつけるよ」

「ちょっと待ちなさい!貴方カルティロナ国に行き、婚約を取り付けに行くんじゃなくて?!」

「大国とカルティロナ国の位置は正反対。どちらも訪れるなら、正式な立場で行かなければならない。それなら二番目と共に大国に行くよ」

「四番目、順序を履き違えるな。お前の手を借りるまでもない」

「だが二番目」

「何を優先すべきかなど始めから決まっている」

「帝国には家族がいるだろう」

「私はロラン家だぞ」


 二番目の真っ直ぐな答えに男は困ったように眉を下げた。張り詰めた空気を醸す二人とは打って変わり、三番目が手を叩きながら声高々に二人の向かい合う真ん中へと進み出る。


「はいはい!こういう時こそロラン家の先代の知恵を借りるわよ。他にも話をつけといたから何かしらいい案をくれるわよ。それと四番目、年頃の乙女心をきちんと理解しなさい」

「……その年になっても乙女心が健在だったなんて」

「あたしじゃないわよ!」

「まあ待て三番目、何せ四番目にとっては身内以外関わりがないからなぁ」

ふぁいひてなんひゃよ(二人してなんだよ)


 喉を鳴らして笑う二番目と口元をひくひくさせながら四番目の頬を摘まむ三番目は、薄暗い表情で男を覗き込む。


「いーい?四番目。乙女心はいつまでも貪欲なの。会いに来やしない男なんて、こっちから願い下げよ~。だからこっちのことは他が足止めしとくから、貴方は今することをしなさい!」





 思いっきり頬を引っ張られ次には男は別の部屋にいた。

 部屋には補佐官のヘクターが書類を整理しながら、男の帰還を待っていた。


「ーーーっ、いってぇ」

「お帰りなさいませカイン様、その頬は?」

「痕つけるほどやられたのかクソッ三番目め」

「?」

「チッ、予定通りカルティロナ国へ向かうぞヘクター」

「分かりました。準備は出来ております。この書類が済めば直ぐにでも向かうことができます」

「あーもー分かったよ」


 自棄糞ぎみにカインは机に置かれた書類を手に取ったのだった。






評価ポイントありがとうございます!皆様にもっと楽しんでいただけるように精一杯頑張ります!


今回は沢山の人数が会話していたので、特徴をつけてはいますが誰が誰か分かりにくかったらすみません。一応活動報告にて六人の特徴をかいてあります。

次回、再開なるか。

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