12話
ラブとミステリーが同時にスタートしました!今は並走してますがどちらが先に先頭を走るでしょうか!
この世界にはゲームの世界とか大分解釈が違うことがあるのだが……。
ゲームでのモブはロラン商会として登場していたが実際は外相であった。そしてロラン商会についてヒロインに聞いたのだが……。
「僕が取引きしているのはアシュタル商会だよ」
「え、ロラン商会じゃないの?」
「そうだよ」
「え、どういうこと」
「だからアシュタル商会だって」
「??」
このように相手には通じるそれが、私側からは会話が成り立たないで聞こえてしまうのだ。試しに学園でロラン、ロランと家名だけで呼んでみるが、誰も反応を示さなかったのだ。会話では別の名前に、名前を呼べば無音へと変化する。
何だろうこの気味の悪さ。モヤモヤした感情のまま過ごしていたそれがある日確信になるのだった。
それは卒業パーティーのドレス選びのときだった。
ギリギリだが合格点を越えることができ、卒業パーティーも参加することが決まった私はケーキのデザインがアートなら、センスそのものを備わっているリュシアンにモブから送られてきた数着あるドレスを見てもらうことにしたのだ。
「この黄色でレースの刺繍が足元にかけてあしらったドレスとかいいんじゃないかな」
「確かに可愛い」
判然としない私の返事に気付いているリュシアンは、並べられたドレスを今一度眺めた。
「薄い青の入った光沢の色のパフスリーブが大人の色を可愛らしくしてくれるAラインドレス。半透明で光沢のあるオーガンジーを重ねられ洗練さと華やかさも忘れない黄色のベルラインドレス。薄い赤茶のサテンに薄い赤桃色のシフォンを使った可愛らしいエンパイアドレス。首元まで覆ったレースに後ろにリボンを重ね、シックと可愛さを忘れない黄緑色のプリンセスラインのドレス。どれもラティエに似合う、よく考えられたドレスだよ。ところで入ったの?」
ソファーに腰掛けすらりと伸びる足を組み、持参したナッツを混ぜこんだマシュマロクッキーをかじる友人の姿に、絶賛食事制限中であるラティエは怨めしそうに眺めた。
どのドレスも試験後にモブから送られてきた物で、一度試着したのだが、どれも似合っていてとても気に入っている。ただしパーティー間近になってドレスの調整をするためもう一度試着したのだが、腰回りが少しばかりキツくなっていたのだ。思わず、ちょっとお肉!お前いつの間に引っ付いていたのと自分のお腹についているお肉を摘まみながら語り掛けてしまったじゃない。
それもこれも目の前のヒロインが要因だ。試験期間もそうだが、試験後も頻繁にラティエの元に試作品のお菓子を持ってくるのだ。近々二人の結婚式が行われるのもそうだが、我が国の建国祭が行われる際に地方だけでなく、各国からも人が沢山訪れてくるのだ。その際に、新作を新たな話題性として売り込む魂胆だそうだ。この世界のヒロインは商魂たくましい。
とまあそれは置いといて、結婚後暫くはエリアーゼ様との二人の時間を確保したいという本音のために、怒涛の勢いで仕事を巻いているのが現状だ。
勿論結婚式を控えた婚約者は試作品を少しは試食するだろうがそれでもほんの少量だ。そして試作の感想を貰いにラティエに回ってくるのだ。ちなみに他の人に試食させてもどれも美味しいとしか感想を貰えないのであまり参考にならないと言っている。
漸くリュシアンの婚約者であるエリアーゼ様の切実な叫びを身をもって痛感した。
ほんとやめろ、まじで。限度があるぞ限度が。そんなカロリーの固まりもう持ってくるな。
ちなみに試作する本人はどんなに食べても太らない体質だとかなんとか。そんなところでヒロインパワーを発揮するな。全くもって乙女の敵である。
とまあ私の恨み辛み関係なしに、優雅に紅茶を飲み終えたリュシアンは腕時計を確認する。そろそろ次の予定が近付いてきてるのかな。
「彼は卒業パーティーに間に合うんでしょ?」
「……どうだろう、一週間前に届いた手紙にはそれついての内容は書いてなかったから分からないわ」
「ふーん、婚約者としては素っ気ない手紙だね」
「ま、まだ仮婚約者よ」
「それならますます黄色のドレスを着てあげなよ。ラティエが少しでも好意があるなら相手の色を身につけてあげることは嬉しいことだからね」
「黄色……」
「ほら彼も王妃陛下と王太子殿下と同じ白金色の瞳でしょ」
「そうね……」
そっちもか。
腑に落ちないラティエの姿にリュシアンはうーんと顎に指をあてる。
「これから互いを知っていけばいいんじゃないかな。僕とエリアーゼの婚約期間は長かったけど、だからって互いの腹の中を把握できた訳じゃない。喧嘩だってするしね」
あの修羅場を茶目っ気たっぷりに話すリュシアンについ白けた目で見てしまった。あんな茶番劇に巻き込まれるのはもう懲り懲りだ。
それでも彼の言葉には一利ある。いい加減彼の腹の中を少しはつつかせていただこうじゃないか。仮にも彼から婚約を申し込んできたのだから、こちらにも少しは教えてもらう道理がある。この何度も絡み合った糸がいくつも阻むのなら、私はそれを少しでも緩めたい。
「リュシアン、私ドレス決めたわ」
私の顔を見て口元をにんまりし、楽しいおもちゃを見つけたような年相応の表情をする。
「そうそう。ラティエはラティエらしくが一番だよ」
流石ヒロイン、ウインク一つの威力がでかい。
おまけ。
「それじゃ、減量頑張ってね」
「ちょ、この試作品持っていきなさいよ」
「この僕のお菓子をタダでしかも食べ放題なんだよ?」
「さっきご自分が言ったことの意味を理解しているの?」
「ええ~持ってくるの大変だったんだよ。ラティエ食べて。それで感想ちょうだい」
「だ、か、ら、減量中よ!!」
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