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10話

作者失態、これからは年齢と年表だけ数字に、他は漢数字に統一します。ああああすみませんでした…!

 


 ピーピー令嬢ことツィリィア嬢は超スパルタ教師だった。

 いや、きちんと休憩時間も設け、メリハリを付けてた気がするけど可笑しいな、休憩してた記憶がない。休憩を思い出そうとするが、頭がずきずきするので自分のためにもやめた。私だけは自分を甘やかしたい。机に突っ伏しながらぎゅっと身体を抱き締めた。



「ふう、取り敢えず今日のところはこれでお仕舞いとしましょう」


 目の前にはキラキラ輝かしい笑顔を振り撒くツィリィア嬢がいるが最早答える気力もない。ついでにギラギラが払拭されたようだ。


「随分遅くなりましたわね。(公爵家)の馬車で送っていく

 わ」

「いえ、家の馬車が……」

「勉強が始まる前に、遅くなる旨の連絡を伝えに先に帰らせましたの」


 主より公爵家の命令に従い、さっさと帰宅した我が家の馬車に呆然としながら、私はツィリィア嬢に引きずられるように公爵家の馬車に乗り込んだのだった。



 当初に比べ随分上機嫌なツィリィア嬢をチラリと盗み見する。よく考えれば本来ツィリィア嬢は論文も提出し、長期休暇である学園に用はないのだ。寧ろ特別授業でも彼女はとっくの昔に学ぶ事は終えているのだ。

 ますますばつが悪くなってきた。皆が皆、私の卒業の為に助力してくれるのだ。だから彼女の好意を無下にせずきちんと受け取るつもりだ。

 にしてもだ、王太子殿下、公爵令嬢と少し前までこうして同じ場に居るどころか遥か雲の上のお方達であったのだ。それもこれも全て()()()()()殿()に出会ってからだ。




「そういえば」


 モブに対する悶々とする考えの中、ツィリィア嬢の声にハッとし、私を見つめる瞳に目が離せない。



「私とカイン様について少しだけ説明するわ」

「は、はい」

「私の兄は王太子殿下の側近の一人でもあり、遠いですが王位継承者にも含まれているわ。ですので兄は、幼少期から何かと王太子殿下と共に行動をされてまして、私それが羨ましくてよく兄の登城の時に同伴をせがんだり、よくその場に突撃もしたりして……。それでいつもの様に、兄と殿下の所に突撃に行けばそこに偶々カイン様もいらして……」



 そこから急に言葉が途絶え、苦虫を噛み潰したような表情をするツィリィアにえ、何?もしかしてモブのこと生理的に受け付けないとか?と変な心配をしてしまう。彼女の言葉の続きをハラハラしながら待っていれば、またまた登場した扇は開かれることなく骨の部分を両手で握りしめている。



「その頃の私は……年上の二人に追い払われる度に躍起になって追い掛けていて……その、よく周りが見えていない年頃でしたのよ」



 王太子殿下とツィリィアの兄上は我々と8歳差だ。幼い頃の彼女(ツィリィア)からしてみれば、年長者の遊び相手だ。確かにその年齢差ならまだ幼い子供の相手も対応出来るだろう。ただそれは数回まで。10代は体力がある。しかし年少児は持久力こそないが、休めば直ぐ元気を取り戻す体力(不死身)お化けなのだ。一度二度ならいいが、どうやら何度もしてるようだ。それは流石にキツい。10代だって一息つきたかっただろう。



「その、だからよく物陰から突撃して、その都度カイン様に激突してしまって」





 なんてこった、モブは襲撃されてたのか。それは痛い。モブとしては物理的にも、激突した姿を身内(従姉妹)に見られるのも。10代になってそれをされるのは憐れだ。



「そして遂にカイン様にこう言われました。それは楽しいのか、と」




 苛烈だなモブ。ツィリィア嬢は手元にある扇をミシミシさせ、悔しそうな表情をしている。



「そのことで初めて大泣きしてしまって……。今でも兄様から執拗に笑い話にされる始末で……。あの失態がなければ……」



 あ、黒歴史の方か。そして伯爵(兄上)いい性格してますね。

 扇がミシミシからギチギチ音へと変化していき、破壊するのではないかと疲れた中思考する。



「と、とにかく!今はカイン様と和解し、私の卒業後医療を研究するため、他国に移住するのに力を貸してくれましたの。いずれどこかで貴女と会うかもしれないわ。それに卒業試験で躓いてたら、この先持たないわよって聞いてらっしゃるの?」

「そうです……ねぇ……ぐー」


 連日の徹夜とツィリィアのスパルタによりラティエは意識を失った。










 疲れが溜まり寝てしまったラティエを屋敷に送った後、ツィリィアは一人馬車の中で思案する。顔は影に隠れ、どのような表情をしてるかは読み取れない。









「ねえ、ツィリィア嬢楽しい?」



 その一言で傍で笑い転けていた声がピタリと止んだ。

 直ぐ様異変を察知し、困惑した顔の王太子殿下が横を見る。


「ちょっとカイン、小さい子相手だよ」

「うるさいリュシュラパス。お前に聞いていない」


 低い声に身体が震え、王太子殿下(リュシュラパス)はそのまま黙りこんでしまった。私は何が何だか分からずお兄様、と声を掛けようとして言葉を閉ざした。



 お兄様が頭を下げていたのだ。


「申し訳ありません…!!まだ何も分からぬ、幼い妹なのです、だからどうか……!!」

()()()聞いてない」



 頭を下げたまま動かなくなったお兄様。お兄様の顔はこちらからは見えないから、お兄様がどうなっているのかわからない。

 涙で視界はふやけ、何が起きているのか分からず、私はとうとう泣き出してしまった。



「涙、いらない。声も、いらない」


 途端身体に衝撃を受け、涙も声もピタリと止まってしまった。ただ呼吸と瞬きだけは唯一()()()()いた。

 まるで見逃す事を許されないような声に、身体から血の気が引き、震えが止まらない。



 コツコツと足音が近くなる。その音と共に心臓の鼓動も加速していく。

 怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い。

 そして僅かな息づかいが聞こえ、恐怖で叫びだしたいのに声が出なかった。



「君の()()()楽しくない。下手すれば命を落とすことだってある。何度も忠告を聞いたよね?人の言葉に耳を傾けなよ。さもなくば……、





 殺されてたよ?」



 最後の囁く言葉に止まっていた涙が溢れた。足音が遠退き王太子殿下の前で一度止まった。




「リュシュラパス、お前はリティカ叔母上から何を学んでる。お前の城で起きたことだ。後始末はお前がやれ」

「………分かったよカイン。すまなかった」



 弱々しく呟いた王太子殿下は、頭を下げ続けていたお兄様の頭部に一度手を振るう。そしたらお兄様が糸が切れたように膝をつき倒れこんだ。そして次には涙で溢れる私へと、歩みよってきた。



「ツィリィアには()()を残したまま、しかしこの事を他言出来ないようにさせてもらうから。君をきちんと止められなかった僕らの失態だ。本当にごめんね……」




 そこでプツリと記憶が途切れた。





「っ!」


 目を見開き大きく息を吸い込んだ。心臓の鼓動が激しくうるさい。身体は震え、扇を強く握りしめてたのか、指の握力を感じられない。


 今でもあの頃を鮮明に思い出せる。

 確かに彼はあの時私の目の前にいたのだ。




 動悸が少しましになり、ふと先程同じ空間にいた彼女を思い出す。

 私のあの態度にどこ吹く風のようにマイペースで、どこか掴みにくい、しかし人を引き込む何かがある不思議な彼女。

 貴方には婚約者が()()()いるのね、ラティエさん。今も昔も私はあの方が見えない。

 これから先、彼女は婚約者、のちに妻としてどうなるのだろう。彼女に起こりうる事を思うと……。



「……ほんと、()躓いてたらこの先持たないわよ」








そろそろこの話終えて次話にうつります……。

キャラによしよしされたいのに作中キャラが不穏すぎて誰もしてくれない……。

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