48話 人目は気にしようね。
あ~、うん。ジェニー君とはお話ししたいとは思っていましたよ?思ってはいましたが、……せめて放課後にお話ししたかったんですよ私は。
「夜風・ヴェヒター・琴波さん、昨日の手紙の返事を聞きに来ました。」
教室入ったと途端に、んな気まずいこと聞くなよ!ジェニー君ってバカなの?ねぇバカなの?頭は良いけど空気読めない方のバカなの?
「ジェニー君…その事は、今ここで聞かないといけない事ですか?」
「いや、別に昼休みでも放課後でも構わないが…。」
「(なら、何で今聞いたんだよ…。)そうですか…でしたら、お話は放課後にして頂けませんでしょうか?今この場で返事を言うのは、私は出来れば遠慮したいので。」
私は目立ちたくないんだよっ。教室とか人の視線が気になって仕方ないんだよチクショー。…ヒィィ、女子のグループの数名が私に睨みを効かせてくるよ!?ジェニー君、女の嫉妬はスゲー怖いんだぞ!…私、今夜辺りから背中には気を付けよう。(この件に関しても、私は限りなく無実だがなぁぁあ!)
「ふむ…では、今日の午後五時に中庭の中央にある桜の木の下…と言うのはどうだ?」
「午後五時ですか…分かりました。」
中庭の中央にある桜の木なんて、めっちゃ目立つところだから行きたくねぇけど、行かないと真相には辿り着けないし、場所を変えるような事言うのは面倒くさいし、しらばっくれる勇気なんて元から小心者の私にないし……ふっ、行ってやるさ。(何か上から目線だって?心のバランスを取るために仕方なくだ。決してノリノリでやってなどいない。)
ジェニー君とは半ば無理矢理に結論をつけてさっさと自分の席に着くと、事の顛末を殆んど知らないディオさんに色々聞かれたので、昨日合った事を話した。
「へぇ、それで今朝の一件に戻るって訳か。」
「はい、そうなんですよ。…でもまぁ、ジェニー君が本意で私に手紙を渡したとは限りませんから、ジェニー君が本気かどうかはまだ分からないですけどね。」
「…夜風、人の好意は素直に受け取っとけよ。そう考えているなんて、ジェニーが余りにも悲しすぎるぞ。」
ディオさんに呆れられてしまった…。
「ん~…では仮定として話をしましょう。もしディオさんが下駄箱を開けたとき、知らない女性からラブレターが入っていたとしました。さて、ディオさんはどう思いますか?」
「そりゃあ、物凄く訝しく思うけど…ああ、そう言う事か。様は、知らない奴からラブレターを貰って訝しげに思っているが、貰った好意を無下にも出来ないから困っている…と言う事か?」
「大体当たりです。(『どうしてこんなにも可愛いげの欠片もない私にラブレターなんぞを送ってきたのか?』と言う疑問も、その“訝しく思う”の中に含まれてますけどね。)」
ディオさんにこの事を言ったら、何かまた昨日のルナさん同様にクドクド…とまでは行かないとしても、色々言われそうな気がしたから黙ってますけどね。これ以上墓穴掘ってたまるかってんだ。
…おや、何やら新たな方向から視線を感じるぞ?
あからさまになり過ぎないように辺りを見回すと、ジェニー君がこちらをジーっと見ていた。…あ、私と目線が合うと視線そらした。…一体全体、私に何がしたいんだお前は。
「…まあ、ジェニー君に言う返事はもう決まっているんですけどね。今はまだ教えませんけど。」
「えぇ、何でだよ……って、当たり前か。ここ教室だし、幾ら頑張って声を潜めたって聞こえるものは聞こえるしな。」
「その点を考慮すれば、筆談って手もあるんですが…生憎手頃な紙がなくて。授業ノートに書く訳にもいきませんし。…そろそろ授業が始まりますしね。」
授業ノートに書いても本当は気にしないのだが、筆圧で後が残ってしまう可能性だってあるし、何より消すのが面倒だから却下した。
やはりジェニー君の視線を感じるが、授業や休憩時間も感じるそれを気にしない方向で総スルーしたが、別に私は酷くない、酷くない。だって、目線を合わせてもそらすんだもの、気にしない方が得策だよ。




