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神々よ、ご遊戯のお時間はそこまでです。  作者: 神村遥


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19/20

新たな恋の予感のお時間です。

入学式を無事に終え、俺はいきなり理事長の部屋へお呼ばれされる。


ここは俺の知る学校の規模感を遥かに越えていた。


いわゆる学園都市といった街の作りとなっていて、今でも全体像が掴めていない。


なので、入学式の終わりに生徒会の一人が理事長室まで案内してくれることになっているのだ。


この巨大なホールに集められた大量の新入生が順番に退出していく列を不審に見つめる。


「どこにいるんだ?」


「だぁれだ」


「ん?」


俺の視界は突如、暗闇へと誘われる。


どうやら、誰かが背後から俺の視界を塞いでいるらしい。


どこかで聞いたことのあるような声や話し方だが、なかなか思い出せない。


そもそも声色的に女性だと思うが、

俺に同年代の女性の知り合いはいないはずだが。


「ごめん! 誰か分からないや」


「そうかぁ。そうだよねぇ。

六年もすればぁ、分からなくて当然だよねぇ」


視界は明るさを取り戻すが、目が明るさに再び慣れるまでぼやけている。


目をぱちぱちと開閉させ、ピントを合わせる。


満を持して後ろを振り返る。


そこには、思わず息を呑んでしまう見目麗しい女性がいた。


彼女の髪はホール内の薄暗さも相まって、鍾乳洞にたゆたう碧水(へきすい)の地底湖のように見えてならない。


彼女の髪型は狼のように襟足は肩まで伸び、前髪は額をヴェールのように覆う。


毛先の流動的でありながらも荒々しさを彷彿とさせる外側にハネた髪と、

輪郭を包むような内にハネた髪。


彼女の瞳はまさしく洞窟に潜むサファイアのようであった。


そんな美貌に反して、背丈は俺よりも高く、肩は張り出し、一目で分かる鍛え上げられた肉体美をしていた。


女性的な妖艶さと、男性的な精悍さのコントラストは不思議な魅力を醸し出していた。


「ねぇ、ボクのことぉ本当に思い出せない?」


突如、彼女は俺を強引に引き寄せ、体を密着させてきた。


「えっちょっさすがに……?」


なんだこの違和感は?


おかしい。


生物学的にありえない違和感がある。


なにやら硬質な感触が俺の体に突き当たる。


いや、気のせいだ。


きっと、彼女は剣士だから短刀でも忍ばせているのだろう。


冷や汗が止まらない。


俺は恐る恐る彼女の顔を覗く。


彼女は恍惚とした表情を浮かべていた。


「パル君、やっと会えたねぇ。もう、離さないよぉ」


「あっあぁぁぁぁぁ!!!!」


俺の中の何かが崩れる音がした。


脳内に警報が鳴り響く。


鳥肌が立つ。


『瞬間転移(モーメントゥム)』


俺は無意識のうちに魔法を発動していた。


この魔法は数メートル程度の移動なら瞬間的に可能となる。


先ほどまでの薄暗い所にいたからか、日差しが一層目に染みる。


目を狭めながら、必死に辺りを走り回る。


「アレって、主席の……」


「辺境伯様のご子息って話だよな」


「いや、トラキア族出身じゃなかったか?」


外に出るや否や、俺に視線が集まる。


別に目立つことは嫌いではない。


剣道の大会でも、よくメディアの取材や表彰はあった。


しかし、今こうして逃走中という状況では好ましくない。


クリスが俺の行く先を聞き回れば、すぐに俺の逃げ先など割れてしまう。


「 クソッ! もう一度転移するしかないか……」


『瞬間転移(モーメントゥム)』


「なっなんだ!? 主席が消えたぞ!!!」


「アレって、転移魔法の一種じゃないのか!?!?」


「この年で転移魔法ってミルディン様以来なんじゃ……」


さてと、どこなんだここは?


王宮を思い出すような煌びやかな装飾が施された壁面に、豪勢な絨毯(じゅうたん)が広々とした廊下一帯に敷かれている。


「ここも学院の一画なのか? 

勇者として王宮暮らしを経験していなければ、ここで生活するなんて夢のような生活に思えただろうな」


俺はそんなことを呟きながら、きょろきょろと探検気分で目的もなく歩く。


「あなた、そこで何をしているのですか?」


これまたどこかで聞き覚えのある冷めた声が背後から掛けられる。


ゆっくりと振り返ると、そこには俺を殺した殺人犯がいた。


殺人犯と鉢合わせる被害者という意味の分からない展開に、俺の鼓動は細かくリズムを刻み始める。


「実は理事長に呼び出されてまして……中々、部屋が見つからなくて迷っている所なんですよ」


まぁ、これは嘘ではない。


迷っているのは案内役から逃走してしまったからだが、迷ってるのも、呼び出されてるのも本当のことだ。


加害者は俺を睨みつける。


数秒経ってやっと獲物を狙う獣のような目線から解放される。


「あなたがそうなのですね。

承知しました。

私が責任を持ってあなたを理事長の部屋へ案内いたします」


俺は仇の背中に穴が空くくらい、「覚えておけよ」という感じでガンを飛ばし続ける。


そうしていると、やたらでかくて荘厳な扉の前で足が止まる。


「露骨すぎるだろ……」


そんな小言を挟みつつも、バカデカイ扉をメイド気取りのコイツはノックする。


「理事長、例の人物が参りました」


「入りたまえ」


軽々と扉を開け、理事長の姿が露になる。


「おっお前は……なんでここに……」


『スキル:憤怒の狂躁(ヘラクレス)』


熱気で服は裂け、上半身に刻まれた刻印が露わになる。


「なぜ、元国王までこの場にいるんだ……」

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