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草原の子  作者: 王虎
6/8

第6話 治療

「不思議だよねぇ」

「だよなー」 

「この草 昨日まで生えてなかったんだよ。」


 もっしゃもっしゃと草を食む 青燕のそばで寝ころぶ二人。


「青燕が好きだって 薩蘭がいってたからな」

「あー 耀花様」


 声をかけてきた耀花に飛び起きた薩蘭が抱き着く


「温泉?」

「ああ 今日で最後でいいだろう。ずいぶんとよくなった」


 薩蘭の頭をなでながら耀花がそう告げる

 きゃーと喜ぶ薩蘭を見ながら 巴特は言った。


「ありがとうごさいます。ありがとうございます。耀花さま」

「また早いぞ。今日が終わってからだ。いくぞ青燕」


 ぽっくりぽっくりと耀花の後をついていく青燕。

 その姿を見送ったあと2人は駆けだした。


「ひゃっほーい」

「ひゃっほーい」

「ぶーん」

「ぶーん」


 駆け回って 草をむしって 転げまわって。

 巴特は叫んだ


「くそおやじー ざまあみろ」


 次の日、走ってもいいと許可がでた。


「よし いいぞ」


 耀花の声に青燕の腹を軽く蹴る

 体が上下に揺れる


「ちょー ちょー」


 走りが変わる。揺れが止まった。

 できてる。ジョロー(側対歩)

 軍馬必須の走り方。

 これで青燕は死ななくて済む


「ちょっちょっ」


 スピードがあがる

 青燕だ 青燕だ


「私も 私も」


 せがむ薩蘭と交代する


「ちょっちょっちょっ」


 いきなり疾走させる薩蘭


 チリンチリンチリン

 耳元の鈴が揺れる。


 洞窟の奥を指して巴特は言った


「ぶつかるなよ!」

「へいきー」


 草の中を走り回る薩蘭たちを見ていると耀花が静かに横に立った。


「どうするんだ」

「帰ります」

「そうか」

「今の青燕なら おやじだって文句は言わない。言わせない」

「そうか」


 巴特は、膝をついた。


「いろいろとありがとうございました。御恩は一生忘れません」

「そうか」


 そのあとにつづく言葉はない。

 顔を上げると耀花がじっと巴特を見ている。

 鼻の奥がツンとした。何か言おうと言葉を探す巴特に彼女は言った


「で、どうやって帰るんだ? 帰り わかるのか」

「大体の方向はわかるし、青燕ならわかると思う。」

「ここがどこかわからないのに?」

「あ う」


 口ごもる巴特に耀花は言った。


「我がついていってやろう」

「うえ?」

「言ったろう 草原で我の知らないことはない。我がついていけば心配はない」

「いいの?」

「もちろんだ。青燕が心配だしな」

「ありがとう」

「よし 巴特 支度するぞ」

「はいっ!」


 ひとしきり走り回った青燕と薩蘭が戻るのを待って、そのあと支度を始めた。


「その草は青燕が好きなんだろう。もってけ。」

「荷物は小さくしろ 薩蘭が乗れないだろ」


 膝の上に薩蘭を乗せた耀花が指示をする


「支度するっていったじゃん」


「我がするとは言ってない」

「ねー 言ってないよね!」


 薩蘭が耀花を見上げて笑う


「ちぇー」


 巴特のそばにいた青燕がもぞもぞと毛布をひっぱる


「あ青燕 いいから 手伝わなくていいから」


 青燕の口から毛布を取り上げると不服そうにないた。

 額の流星をなでる


「帰れるからな。」


 そっとつぶやいた。


ジョロー

側対歩そくたいほ

馬の歩法の一種で、左右どちらかの前脚と後脚が同じ側で動く歩き方。上下の揺れが少なく、騎乗時の安定性が高い。弓を射る際にも有利とされる。

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