第5話 希望
「目が覚めたか?」
もぞもぞと動き始めた 薩蘭に巴特は声をかけた。
「うっ?」
ゆっくりと起き上がる 薩蘭。
チリン
耳元の鈴が揺れる。
ぼけっとした顔でこちらを見る。
「二哥!」
薩蘭が飛びついてきた。
チリンチリン
「青燕! 青燕は!」
つかまれた腕が痛い。
「大丈夫。俺らも助かった」
ほっとして力が抜けた薩蘭に声がかかる。
「粥 食うか」
薩蘭の向けた視線の先には 器を突き出した耀花がいた
「誰?」
「耀花様だ」
「誰?」
「俺たちを助けてくれた人。草原のなんかすごい人だ」
「ふーん?」
耀花に向かって 薩蘭は頭を下げた
チリン
「助けてくれてありがとうございました。」
「ふふふ 兄と違って妹は 礼儀正しいな」
なんとも言えぬ顔をした巴特を横目に見ながら耀花は薩蘭に器を渡す
「温まるから 早く食べな」
「ありがとう」
薩蘭が粥を食べ終わると巴特は改めて 耀花に向き直った。
「こちらが妹の薩蘭です」
チリン
「薩蘭です。」
手をつき深く頭を下げた 巴特をみて薩蘭もまねる。
「この度は我々を 助けていただき 本当にありがとうございました。」
「ありがとうございました」
低く下げた頭に声が降る
「気にすることはない 我にとってはついでのようなものだ
それより薩蘭と言ったか お前にも耀花と呼ぶことを許してやろう」
耀花を見ながらそっとこちらをうかがう薩蘭に巴特は軽く首をふった。
「ありがとうございます」
声が二つ重なった
「それで 青燕は?」
挨拶が終わると薩蘭はすぐ巴特に問う
巴特が答えるより早く耀花が言った。
「青燕はそっちだ 巴特つれてってやれ」
「あ はい」
耀花が指さしたほうを見て 薩蘭は目を見張った。
「草原? なんで?」
ぽかんとして巴特の顔を見上げる薩蘭
「あとで話す。行こう」
薩蘭を促して草をかき分ける
「青燕ー」
草を食む青燕を見つけて薩蘭がかけよった。
チリンチリン
頭を上げた青燕の首にほおずりする。
「よかったぁ。よかったぁ。ごめんねぇ ありがとう」
薩蘭の髪はむはむしようとする青燕と薩蘭の攻防を見ながら
巴特は言った。
「足、治るってさ」
「えっ」
「元通りになるって。走れるようになるってさ。」
「ほんと!?」
「ほんと。耀花さまがいってくれた。」
「耀花さま?」
「なんでもできる不思議な方。おれらのことも吹雪の中からみつけてくれた。
だから 大丈夫。青燕は治る」
「治る…」
あっという間に薩蘭の顔がくしゃくしゃになった。
チリンチリンチリン
「なおるんだぁ なおるんだぁー」
泣きじゃくる薩蘭の耳元に青燕が口を寄せた。
そっと鈴のついた耳飾りを口に含む。
チリチリチリ
口の中で器用に鳴らしてみせる。
「ちがうよ 青燕 悲しくて泣いてるんじゃないよ。これはうれしいからなの」
チリチリチリ
「くすぐったいってば」
チリチリチリ
「こら 青燕 いい加減 鈴吐き出せ! 小妹困ってるだろ ぺっしなさいぺっ」
チリンチリン
不服そうになく青燕。
なんでか笑えて。なんでか泣けて。
巴特は青燕の顔に自分の顔を寄せてぐりぐりした。




