村の少女
家の扉を開き、辺りをきょろきょろと見渡してみると、この場所は森に囲まれた小さな集落だという事だけが分かった。
藁ぶき屋根の小さな民家が7件ほど建ち並び、木の柵で囲った畑は、そろそろ収穫時期を迎えるほどに実っている。民家の庭には所々、鶏や豚と言った家畜が飼育されていた。
しかし、つい最近まで、人が生活をしていたという気配はあるものの、探せば探せども村の住人を発見するっことは出来ない。
この集落は、山賊や盗賊に襲われたという形跡もない。どちらかと言えば何かを恐れ、すべての家財を放棄し、全員が逃げてしまったというのが、一番しっくりくる状態である。
ただ、ここの住人が何から逃げてしまったのか、それだけはレイには分からなかった。
村の散策をしばらく続けていると、集落の近くを流れる川で、誰かが水浴びをするような音と共にかすかに鼻歌が聞こえて来た。
ようやく人がいたと思ったレイは、鼻歌を頼りにその方へ行ってみると狭い川で水を浴びる少女の姿がそこにはあった。勿論全裸である。
すらっとした体のラインに、小さな胸と引き締まったお尻。
少女の歳は、だいたい10歳くらいだろうか。この土地では珍しい金色の髪に、そこまで高くない身長せいか、子供っぽさが残るようなかわいらしい女の子だった。
レイはその少女を見た瞬間、あっと気が付いた。
彼女こそが、戦場でグールに襲われそうになっていた時に、目の前に割って入って来た少女だったからだ。
「おい、そこのお前……!」
レイが目の前に居る少女に対して、声をかける。
すると少女は、びくっと体を震わせて驚き、とっさに近くにあった自分の服を取って、「きゃぁぁぁぁぁ!」と声を上げた。
「あーそう言うのいいから。というかお前みたいな子供の裸、見たところで嬉しくもなんともないから……」
手を左右に振りながら、めんどくさそうに言うレイに、少女は赤面する。
「は、はぁ!?まずは私に対して、謝るのが先じゃないんですか?と言うか、どっか行ってくださいよ!着替えれないじゃないですか!」
少女は、必死に抗議するが、レイは表情一つ変えなかった。
「だから、本当にそういうの良いから……。この村についていくつか、お前に聞きたいことがある……」
「な、なんで普通に話を始めようとしてるんですか!とっとと、どこかに行ってくださいってば!」
少女がほとんど裸で、そう叫んだ時だ。
森の奥から、すさまじい土煙を上げながら、何者かがこちらにやって来る。
初め、それは猪や馬と言った獣かとも思ったレイだったが、「俺の娘に、何してくれとんじゃぁぁぁ!」と大声を出してやって来たため、人間だと理解した。
「なんだ?」
レイは声のする方を向いた瞬間、怒りをあらわにしたドワーフの男が、肩に背負った角材を振り回して、
「娘の貞操を、脅かそうとしたのは、貴様かぁぁぁ!死んでつぐなえぃ!」
ドワーフの男が振り回した角材は、顔面見事に当たり、すさまじい力と破壊力で、避ける暇もなく、レイはその場から数メートルほど吹き飛ばされ、木の幹に頭を打ってまた気絶した。
「ふん……雑魚が……!」
100歳を超えるであろう、ドワーフの男は鼻を鳴らしながら、勝ち誇ったように言うのに対し、
「お父さんも、どっかに行ってよ!」
と少女は顔を赤くしながら言うのだった。




