Ep2-6 ご使用の際には取扱いに注意して下さい!
いまだに旅立っていません。もう少し説明回のようなものになってしまいます。
「ぜはっ、はっ、はっ・・・・・・・・」
今しがたの出来事を振り返ってみると、非常に危険な状態だった。
何せ戦闘ではなく、己の傷を治そうとして死にかけるという何とも間抜けな一幕だったからである。
端的に言うとこう。
骨折が治ることを期待してRESの数値を最大まで上げる。
↓
なぜか体力が目に見えて激減。死亡まで十数秒。
↓
パニック。ここで生命の水で体力が回復したことを思い出す。
↓
数本、草を毟り生命の水を飲んで体力、および傷が回復。
↓
一安心して八つ当たり気味に地面を殴ると骨折
↓
痛みは引き始めるが体力が激減し始める。
↓
再び体力回復。安心して木に手をついた衝撃で骨折。
コントかいっ!!
骨折しては、傷みに悶えて地面をごろごろ転がる。少し勢いが付いた衝撃で骨折する、を繰り返していたら、周りの雑草を大量に毟る羽目になった。
というか、どんだけ骨折するんだって話だが。
妹は、俺に動きが何かの遊びだとでも思ったのか、同じようにごろごろと楽しそうに転がっている。
まあ、そちらはひとまず放置していよう。勝手にどこかに行くわけでもない。目に見える範囲にいるように指示して、ともかく自分のこの状況について考えないと下手に動けもしない。
ひとまず深呼吸をする。
RESを上げたことによって、期待道理に骨折については1分もかからずに快癒したようだ。この辺については能力値さまさまである。次々に骨折した時も、痛みが数秒で引いてくれたのには助かった。
問題は、先ほどの猛烈な空腹感とそれに伴う急激なHP減少。
それについては何となくだが推測できる。
傷が治癒というのは、例えばプラモデルを組み立てる時のように部品と部品を接着剤で引っ付けるようなものとは全く違うからである。
細かい作用はわからない、というか高校の授業で習っていないので大体のイメージとしての話になる。恐らく細胞が分裂して新しく細胞を作り、傷をふさいでいく、というイメージだろう。
では細胞が分裂するときのエネルギーはどこから来るのだろう?
それが答えなのだ。急激に減少していったHP、それをエネルギーとして傷を癒していった。
考えてみると、一晩、眠っていたのに体力が全快していなかったことにも納得がいく。
まあ、睡眠時間が足りなかった、という事も考えられるが、RES 1の状態で傷を徐々に癒すためにHPを消費していた、とも考えられるからだ。
しかし、こうして考えてみると、俺はもしかしてやらかしてしまったのではないだろうか?
RES 1の時は無理なく、命の危険もなしに傷の治療は進んでいたはずだ。まあ、時間はどのくらいかかるのか見当もつかないが。
RES 99にしたとたんに襲いかかった命の危険。
このままの状態はまずいのでは?
例えば、森の中を歩いているとする。当然、整備された道ではないので怪我をすることもあるだろう。
途端に襲いくる命の危機。
自分の回復力が命を危険にさらしてしまうって、何のギャグだろう?
迂闊に歩くこともできないって!!
では、どうするか?
答え 今現在、どうすることもできません
上げた数値を下げることはできないだろうか?ステータスの操作を行ってみたのだが、上げることはできても下げることはできないようだ。
馬鹿ッ、俺の馬鹿ッ!!なんと短慮な行動をッ!!
自分の馬鹿さ加減に絶望。そして、ついつい地面を力を込めて殴ってしまい、両手が骨折。
二倍の速さで減少していくHPで、危うく死にかけるという間抜けな場面もあった。
この時点で妹は、遊び疲れたのか眠そうにしていた。
むぅっ!!
眼をしょぼしょぼさせている子犬も以外にかわいらしいではないかっ!!
現実逃避気味に馬鹿なことを考える。
自分の状況を考えると、まだまだ移動は難しい。下手をすると一歩歩いては骨折、死亡の危機、なんてことにもなりかねないからだ。
幸いなことに、安全とは言い切れないが隠れられる木の洞もある。もうしばらくはここで過ごすことを考えないといけないかもしれない。
母犬や鮪の死体があった場所には、血の跡があるが骨の欠片一つも残っていない。
血の臭いに関しては薄れてきているので、それが野生の獣や魔物を呼ぶことはないだろう。
食糧に関しては、母乳代わりの命の水で十分なのだから。
いつまでもこの場所にとどまっていることはできないだろうが、ひとまずは比較的安全な場所と考えてもいいかもしれない。
今日中に移動は考えないことにして、とりあえず妹が寝たいだけ寝せてやることにした。
もちろん、木の洞の中で寝るようにだけは注意する。事態が急変した場合でも、多少はましだろう。
鼻をすぴっすぴっさせながら木の洞にもぐっていく妹。
森の中であるため、時間帯はよくわからない。
だけど妹よ。
恐らくはまだまだお昼と呼ばれる時間帯だと思うぞ?寝すぎじゃないか?
妹の将来に、少々不安を覚える。
ああ、早く言葉を教えて少しは会話ができるようにしないと、まともに注意も出来やしない。
やっておかなければならない事柄として心の中にメモっておくのだった。
妹は眠ってしまったが、俺の考察はまだまだ続く。
なんせ、これだけ骨がぽきぽき折れるのだ。対策を考えないとやってられない。
何かのラノベで読んだことがある。確か昔、非常に貧弱な主人公の理不尽なゲームがあったとかなんとか。
まさに、現状の俺である。
どうしたものか。
昨日、骨が折れたときは鮪に痛めつけられたことが原因かとも思っていた。しかし、今日の事を考えると、どうも自分の力に耐えきれなくて折れてしまった、と考える方が正解のような気がする。
そうなると体の問題だろうか?
カルシウムを積極的に取り込む?時間がかかりすぎだね。
成長するまでおとなしくしている?どのくらい成長すれば、この力に耐えられるようになるかわからない。それまでひたすら骨折、死亡の危機に瀕するのだろうか?
仕方ないのだろうか?まあ、赤ん坊という貧弱な体が、自分の体よりも大きな鮪を吹き飛ばすほどの力を発揮できる、そのこと自体がおかしいのだから。
うーむ。能力値の変化で起きた事なので、同じように能力値をいじれば解決しないだろうか?
しかし、下手に触るとRESの二の舞だ。慎重にならないと。
俺の読んでいたラノベであれば、こういった場合のデメリットは何もなかった。 最初から思う存分、怪力を発揮していたため、何の参考にもならない。
他に何か参考になることはないだろうか?
自分にある知識は、あとはせいぜい高校の授業で習った事柄くらいだろうか?
と、そこで閃く。
そう、物理の授業だ!!
力、というものは力を加えた場合、その力を加えた方向にしか力が生じるわけではない。
力を加えた方向とは、正反対の方向、そちらにも力が生じるのである。
反作用、もしくは抵抗。
それを考えると、納得できるともいえる。ATK(攻撃力) 20の力を発揮した時に、その衝撃が俺の体に加わっている、ともいえるのだから。ATK 20に等しい反作用を生じている、ともいえる。
今の俺のDEF(防御力)は1。
なるほど、耐えられないのも理解できるというものである。
ならばどうすればいいか。
確証はない。しかし、外れている気もしない為、迷わず能力値の操作を行う。
DEF 1 → 20
経験値 43 → 24
これが吉と出るか、凶と出るか。
恐る恐る地面をたたいてみる。
いきなり全力ではなく、弱く、そして徐々に力を込めて。
ボフッ!!
そしてとうとう全力で殴ってみても何ともないことが確認できた。
おお、少し地面に穴が開いてるよ。
ちょっと感動する。これであの鮪を吹き飛ばした力が、十全に発揮できるのだ。
しかし、調子に乗ってはいけない。
昨日の夜に見かけた漆黒の狼については、正直、勝てる気がしない。戦いを挑む気にもならない。
どんなに強い力も簡単に手に入れることができるとはいえ、上には上がいると自重しておかないといけないだろう。
そして考えてみるとこれもRESの対策になっていることに気が付く。
DEFが上がったという事は、怪我をしづらいという事。
消極的にではあるが、十分にRES対策になっている。良かった。
心配事がひとまず解決したので一休みしようと伸びをする。
気分がよくなった俺は、散歩がてら周囲をひとっ走りしてみようと思い駆け出した。
俺は忘れていた。
AGI(敏捷)も上げていたという事に。
走り出したとたん、スピードに目が付いていけずに木に激突。
鼻を骨折して、再びHPが激減し始め、大慌てで生命の水をすする事となる。
再考の上、FSEの上昇が必要と判断することになるのだった。
FSE(五感) 1 → 20
経験値 24 → 5
どうやら、ラノベのようにはいかないようだ。
次回はもう少し他の能力値についても掘り下げていきます。
妹もそろそろしゃべらせたいところですが、もう少しお待ちください。




