第19話 友達とお茶をしたら、仕事が増えました
Instagramで漫画投稿を始めました!
エレナの垢抜け前→後を描いたり、
顔タイプ・パーソナルカラー・骨格まで本気で分析してみたり、
小説とはまた少し違った形で作品の世界を遊んでいます。
小説を読んでくださっている方には
「このシーン、こんな感じなんだ!」と楽しんでもらえたら嬉しいです。
Instagram:天野みんと|AI漫画 @amano_mint
久しぶりに会ったアシュリーさんは、何だか前よりさらに可愛くなっていた。
私がプロデュースしたから。
ではない。
自分で選べるようになっていたからだ。
「そのドレス、素敵ですね」
「本当?」
「はい。すごく似合ってます」
柔らかな色。
軽い素材。
髪は以前ほど盛っていない。
でも、アクセサリーにはアシュリーさんらしい華やかさがある。
「自分で選んだんです」
「分かります」
笑う。
「何となく、前より分かるようになってきて」
それが嬉しい。
私のところへ来ないと何も選べない。
ではなく。
一度知ったあと自分で楽しめる。
その方が絶対いい。
◇
「それで」
アシュリーさんが小さな紙を出した。
「今度、新しいドレスを作ろうと思ってるんですけど」
「はい」
簡単な図。
色の候補。
装飾。
「ここだけ迷っていて」
見せてもらう。
なるほど。
「この形なら、こっちの方がよさそうです」
「やっぱり?」
「でも、もう一つの方を使いたいなら、ここを変えればいけると思います」
話しながらふと思う。
あれ。
これ前みたいに最初から全部を見る必要ない。
アシュリーさんはもう自分のことをかなり分かっている。
必要なのは。
少し。
迷ったところだけ。
◇
「アシュリーさん」
「はい?」
「こういう相談だけでも、また来たいですか?」
「もちろん」
即答。
「最初みたいに全部じゃなくても?」
「むしろ、その方が助かります」
なるほど。
これサービスにできる。
最初はしっかり見る。
好きなもの。
似合うもの。
なりたい印象。
全部整理する。
そのあと。
新しいドレス。
季節。
髪を切りたいとき。
特別な予定。
気分を変えたいとき。
必要なところだけ。
また相談する。
「…………」
いい。
「エレナさん」
「はい?」
「今、お仕事の顔になってます」
「え」
いけない。今日は友達としてお茶だった。
「ごめんなさい」
「いいですよ。楽しそうだから」
笑われた。
◇
「そういえば」
アシュリーさんが、今度は少し声を落とした。
「服の相談をしたかったの、もう一つ理由があって」
「何ですか?」
「今度の集まりに、ちょっと気になる方が来るんです」
「…………」
気になる方。
なるほど。
恋愛。
久しぶりに聞いた言葉な気がする。
いや、この世界に来てから初めてかも。
「可愛く見られたい?」
「……少し」
可愛い。
「じゃあ、いつもと少し変えましょう」
「変える?」
「全部変えるんじゃなくて」
アシュリーさんは普段から可愛い。
華やか。
その人が少しだけ違う。
だから目に入る。
「可愛いものって、ずっと見せてるより、時々見せた方が効くんです」
「…………」
アシュリーさんがじっと私を見る。
何。
「エレナさん」
「はい?」
「恋愛経験、豊富なんですか?」
「…………」
現世では二十五年生きて来た。
だからって普通。
特別豊富ではない。
「別に?」
「今の言い方、すごく慣れてる人みたいでした」
「魅せ方の話です」
「本当に?」
本当。
◇
「じゃあ」
アシュリーさんが楽しそうに聞く。
「エレナさんは?」
「私?」
「気になる方、いないんですか?」
「…………」
考える。
この世界へ来て。
自分を整えて。
お兄様を整えて。
人をプロデュースして。
仕事にして。
人が増えて。
忙しくなって。
「考えたことなかった」
「本当に?」
「うん」
自分でもちょっと驚く。
現世では普通に恋愛もしたし、素敵な人がいたらいいなと思うこともあった。
でもこの世界に来てからそんなことを考える隙が普通になかった。
◇
「素敵だと思う方も?」
聞かれて。
なぜか顔が一人浮かんだ。
ロイさん。
「…………」
何で。
アシュリーさんが私の顔を見る。
「いる?」
「いや」
何で。
最初に。
ロイさん?
仕事で一番よく話すから?
「分かりません」
「分からない?」
「まだ材料が足りないので」
「材料?」
アシュリーさんが笑う。
何。
だってまだ分からない。
◇
帰りの馬車で考える。
ロイさん。
仕事ができる。
話が早い。
私の頭の中を整理してくれる。
ちゃんとしてる。
でも意外とよく笑う。
ちょっとからかってくる。
ヴィクトリア様にはああいう感じ。
「…………」
好き?
いや分からない。
材料不足。
でも、アシュリーさんに聞かれて最初に顔が浮かんだ。
それは一応、情報として記録しておこう。
「まあいい」
好きならそのうち分かる。
今、結論を出さなきゃいけないことでもない。
今度会ったときもう少し観察してみよう。
分からないことは調べればいい。
◇
その日の午後、早速ロイさんのところへ行った。
もちろんお茶で思いついた仕事の話をするため。本当です。
「継続相談?」
「はい」
最初に全部を見る相談はそのまま。
その後は必要なところだけ。
「いいと思う」
ロイさんが頷く。
「一度来た人が、自分で選べるようになったあとも、困ったときだけ戻ってこられる」
「そうなんです」
「依存させないのも、君らしいね」
依存。
そう。
それは嫌。
私がいないと何も決められない。
ではなく。
自分で選べる。
でも迷ったときに一緒に考える人がいる。
そのくらいがいい。
◇
「じゃあ、料金も分けた方がいいね」
「はい」
今度は言われる前に考えた。
成長。
「初回はしっかり見るので、今まで通り。二回目以降の軽い相談は、内容に合わせて」
「うん」
話が進む。
やっぱり。
この人と話すと早い。
そこで私は急に気づいた。
「…………」
「何?」
「ロイさん」
「うん」
「私」
嫌な予感。
今度は自分でする。
「ロイさんに、顧問料払わないといけないレベルでお世話になってません?」
ロイさんが止まった。
そして笑った。
「今さら?」
「今さら!?」
やっぱり!?
◇
料金。
契約。
予約。
事業の整理。
利益。
仕事量。
何度相談した?
しかも定期的にベルフォード家に来てる。
普通にかなり働いてる。
「何で言わなかったんですか?」
「最初は面白くて口出しただけだから」
「今は?」
「今も面白いよ」
そうじゃない。
いや、それも大事だけど。
「時間も知識も使ってるでしょう?」
「まあね」
「じゃあ駄目です」
「何が?」
「ちゃんとします」
第十二話。私は学んだのだ。
一緒にやる人にもやってよかったと思ってほしい。
ちゃんと対価を払う。
ロイさんだけ例外にしてる場合じゃない。
◇
「一回、お兄様に相談します」
「ダミアンに?」
「はい。第三者」
「なるほど」
ロイさんが笑う。
何。
「成長したなと思って」
「でしょう?」
今度はちゃんと先に決める。
「じゃあ、相談しておいで」
「はい」
帰りながらふと思う。
アシュリーさんに聞かれた。
気になる人。
そしてロイさんの顔が浮かんだ。
今日本人に会った。
観察。
……するの忘れた。
普通に仕事の話に夢中になった。
まあいい。
また会うし。




