↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
どうやら異世界転生ってやつ?〜令和の垢抜け研究者(自称)が、社交界をまるごとプロデュースします〜  作者: 天野みんと


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
14/20

第14話 今のあなたが、一番綺麗に見えるもの

セシリアさんの仕事を振り返ったあと。

ロイさんは紙を置いた。

「うん。最初にしては悪くないと思う」

「最初?」

「値段を決めてからの、まともな仕事としては」

「…………」

それはそう。

「時間は想定よりかかってる」

「どこが?」

「服」

確かに。

新しい形を一から考えた。

「でも、今回それでノラさんも見つかったので」

「それは大きいね」

「でしょう?」

「嬉しそうだな」

嬉しい。

チームが増えた。

「それと」

ロイさんが紙を指す。

「君の相談自体には、ちゃんと価値がある」

「…………」

「何?」

「いや」

そう言われると、ちょっと照れる。

自分では好きでやっているだけだから。

「セシリア嬢が新しいドレスを買ったことより、自分の身体に対する見方が変わった方が大きいんじゃない?」

「……はい」

そう。そこ。

「なら、それは服代とは別の価値だよ」

なるほど。

また一つ見えた。

「ところで」

ロイさんが急に話を変えた。

「母に会ってみない?」

「お母様?」

「うん」

アシュフォード侯爵夫人。

何で。

「私が何かするんですか?」

「たぶん」

「たぶん?」

「最近、母上が君の話を聞いたらしくて」

嫌な予感。

いや、楽しそうな予感。

「自分も見てほしいって」

「…………」

なるほど。

「何歳ですか?」

「五十二」

お。

今までで一番上。

「面白そう」

口から出た。

ロイさんが笑う。

「そう言うと思った」

ヴィクトリア・アシュフォード侯爵夫人。

会った瞬間に思った。

強い。

もちろん性格の話ではない。

存在感。

顔立ち。

立ち姿。

年齢を重ねた人特有の。

落ち着き。

迫力。

華やかさ。

髪には。

かなり銀色が混ざっている。

というより、ほとんど銀に近いところもある。

でも服は柔らかなベージュ。

アクセサリーも控えめ。

口紅も薄い。

「あなたがエレナさんね?」

「はい。初めまして」

「まあ。可愛い」

第一声。

勢いある。

「ロイから聞いてるわ」

横を見る。

ロイさんが少し嫌そうな顔。

「何をですか?」

「面白い子がいるって」

「母上」

「本当でしょう?」

面白い、しか言われてない。

まあいい。

まずはいつも通り聞く。

「ヴィクトリア様は、どんなものがお好きですか?」

「昔は、もっと鮮やかな色も着たわね」

「今は?」

「今は年齢もあるでしょう?」

出た。

年齢。

「明るい色や、目立つものは、もう少し若い人の方がいいのかと思って」

「ご自身としてはどうですか?」

「好きか嫌いかなら、好きよ」

なるほど。

「赤い口紅も?」

「好き」

「大きめの宝石は?」

「好きね」

「銀色の髪は?」

ここで少し止まった。

「……昔は、染めようかと思ったこともあるわ」

「今は?」

「面倒になって、そのまま」

面倒。

いい。

分かりやすい。

私はヴィクトリア様を見る。

若く見せる。

それなら方法はいろいろあると思う。

髪を染める。

メイクで隠す。

柔らかい色を使う。

でも、それ必要?

「ヴィクトリア様」

「何?」

「若く見えたいですか?」

聞くと少し考えた。

「若く見られたら、まあ嬉しいでしょうけど」

「それが一番ですか?」

「一番?」

「若く見えることと、今のヴィクトリア様が一番綺麗に見えること。どちらが大事ですか?」

ヴィクトリア様が少し黙る。

隣でロイさんも私を見る。

「それなら」

ヴィクトリア様が言う。

「今、一番綺麗に見える方かしら」

ですよね。

なら話は早い。

「髪」

私はヴィクトリア様の銀色の髪を見る。

綺麗。

すごく。

「これ、使いましょう」

「使う?」

「はい」

隠すのではなく魅せる。

髪が銀色になったことで、若い頃には使えなかったものが使えるかもしれない。

強い赤。

深い色。

存在感のある宝石。

昔は服や宝石が本人に勝っていたかもしれない。

でも今は、本人に負けないだけの存在感がある。

「昔、似合わなかったものってあります?」

「そうねえ」

ヴィクトリア様が考える。

「大きな宝石は、若い頃は少し借り物みたいだったかもしれないわ」

「じゃあ」

私は笑う。

「一個増えましたね」

「何が?」

「今、似合うもの」

年を重ねたから減った。

ではなく。

増えた。

「昔は似合わなかった。それが今は似合うかもしれない。じゃあ、一個増えましたね」

ヴィクトリア様が一瞬ぽかんとする。

それから笑った。

「あなた、面白いわね」

また言われた。

「母上」

帰り道、ロイさんが呟く。

「かなり気に入ったと思う」

「ヴィクトリア様が?」

「うん」

「何で?」

「『一個増えた』が」

私はそんなに特別なことを言ったつもりはない。

年齢が変われば似合うものも変わる。

だったら今に合わせて更新すればいい。

ずっと同じ正解を持つ必要はない。

「エレナ嬢」

「はい?」

「うちに来るとき、覚悟しておいて」

「何を?」

「母上、たぶん全部出してくるよ」

「全部?」

「服と宝石」

「…………」

それは楽しそう。

「顔に出てる」

「何が?」

「楽しみって」

バレた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。