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どうやら異世界転生ってやつ?〜令和の垢抜け研究者(自称)が、社交界をまるごとプロデュースします〜  作者: 天野みんと


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10/20

第10話 私が売るのは、「魅せ方」です

数日間私は考えた。

服ではない。

髪でもない。

メイクでもない。

全部使うけれど。

どれも、それ自体が目的ではない。

アシュリーさんを思い出す。

好きな赤。

花。

リボン。

何も捨てなかった。

ただ使い方を変えた。

お兄様も。

顔を変えたわけではない。

体型が変わったわけでもない。

元々あったものをちゃんと見えるようにしただけ。

クララさんも。

ミレイユさんも。

きっと同じ。

変える、というより見つける。

そして使う。

「ローラ」

「はい」

「分かったかも」

「何がでしょう?」

「私が売るもの」

ローラが手を止める。

私は紙に書いた。

『魅せ方』

見る。

うん。

これだ。

ただ「見せる」ではない。

その人の魅力を見つけて。

どうしたら、一番素敵に伝わるか。

その人自身が好きなものも使って。

その人らしく魅力を表に出す。

だから魅せ方。

「自分を好きになれる、魅せ方」

声に出してみる。

ちょっといい。

「素敵ですね」

ローラが言った。

「本当?」

「はい。お嬢様らしいと思います」

それ、かなり嬉しい。

次に会ったロイさんへ、そのまま伝えた。

「私が売るのは、魅せ方です」

「魅せ方?」

「はい」

私は紙を広げる。

「服だけを選ぶんじゃなくて、まずその人が何を好きなのか、どう見られたいのかを聞きます」

「うん」

「それから、顔や身体のバランス、色、雰囲気を見て、その人に合う形を考える」

「うん」

「必要なら仕立屋さんに相談する。髪はルカに相談する。メイクも考える。アクセサリーも。場合によっては、姿勢や話し方も」

言葉にしていくほどはっきりしてくる。

「私が全部作るわけじゃないんです」

「そうだね」

「でも、全部を見て、その人が一番素敵に見える形を考える」

ロイさんが笑う。

「前にも言ったけど」

「はい」

「君は全部作る人じゃなくて、全部を繋ぐ人になればいい」

あ。

やっぱり。

それだ。

私は服を縫えない。

髪も、ルカほど綺麗には作れない。

アクセサリーだって作れない。

でも、この人のここが素敵。

だから、

この色。

この形。

この髪。

この見せ方。

それを考えて必要な人に繋ぐ。

「それなら、できそうです」

「できそうというか、もうやってるけどね」

「……確かに」

仕事にしていなかっただけで、やっていること自体はもう同じだ。

「それで」

ロイさんが紙を見る。

「誰に売る?」

また来た。

でも今度は答えられる。

「垢抜け迷子の人」

「……何?」

あ。

「えっと」

現世用語。

「綺麗になりたい気持ちはあるけれど、自分に何が似合うのか分からない人です」

「なるほど」

「好きなものもある。でも、それを自分にどう使えばいいのか分からない」

アシュリーさんみたいに。

好きなものが、似合わないと言われた人もいる。

ミレイユさんみたいに。

なりたい印象へ行く方法が分からない人もいる。

「そういう人が、自分を見て」

私は少し考える。

「『今日の私、素敵』って思えるようになる」

派手ではない。

でも、私はそれがいい。

「そのための魅せ方を、一緒に考えたいです」

ロイさんが少し黙る。

「いいんじゃない?」

「本当?」

「うん。前よりずっと分かりやすい」

よし。

「じゃあ、次は値段と、実際の流れだね」

「…………」

現実。

戻ってきた。

「嫌そうな顔した」

「してません」

「したよ」

笑われた。

その帰り、私はそのままルカのところへ向かおうとした。

「今から?」

ロイさんに聞かれる。

「はい」

「連絡は?」

「…………」

また。

「します」

少しずつ学習している。

後日。

予定を合わせて、ルカのところへ行った。

「あら、エレナ」

「お願いがあるの」

「何?」

「一緒に仕事してほしい」

「いいじゃない!」

「まだ何も説明してない」

早い。

私より早い。

「だって面白そうだもの」

ルカは全然気にしていない。

「でも、ちゃんと聞いて」

「はいはい」

私は今まで考えたことを説明した。

人に似合うものを一緒に考える。

ただし、好きなものを捨てさせるのではない。

髪、服、メイク、アクセサリー。

必要な専門家と繋ぐ。

「髪は、私よりルカの方が分かるでしょう?」

「もちろん」

「だから、一緒にやってほしい」

ルカは少し考えた。

「仕事として?」

「うん」

「なら、条件があるわ」

「何?」

「私の意見をちゃんと聞くこと」

前にも言われた。

「聞くよ」

「エレナは似合う方向を見つけるのが上手い。でも、髪で実際に何ができるかは私の方が詳しい」

「うん」

「だから、『これにして』じゃなくて、『こう見せたいけど、どうしたらできる?』って聞いて」

「分かった」

むしろその方がいい。

私は専門家を従わせたいわけじゃない。

一緒に考えたい。

「あと」

ルカが続ける。

「仕事なら、仕事として扱って」

「もちろん」

「今までみたいに、知り合いだからって曖昧にしないでよ」

報酬。

ロイさんにも言われた。

「ちゃんと考える」

「よろしい」

そしてルカが手を出した。

「じゃあ、やりましょう」

私はその手を見る。

初めて、明確に、私の仕事を一緒にやってくれる人。

「よろしくお願いします」

手を握るとルカが笑った。

「あら、急に真面目」

「だって仕事でしょう?」

「そうね」

その言葉がなんだか嬉しい。

ロイさんに報告すると。

「早いね」

第一声がそれだった。

「ちゃんと予定は聞きました」

「そこじゃなくて」

「何ですか?」

「もう仲間を増やしたんだなと思って」

仲間。

そうか。

ルカは仲間になったんだ。

「……嬉しいかも」

「よかったね」

「はい」

また一つ形になった。

私一人ではできないことが。

誰かと一緒ならできる。

ルカは髪。

仕立屋さんは服。

私はその人を見て全部を繋ぐ。

これ、かなり面白い仕事になるんじゃない?

帰る前に私はロイさんを見る。

「ロイさん」

「何?」

「ロイさんと話すと、整理しやすいです」

「そう?」

「はい。私、一人だと『これやりたい』『あれもやりたい』って増えていくので」

「それは何となく分かる」

「何で」

笑われる。

でも本当にそうだ。

私が広げる。

この人が形を見つける。

「また分からないことがあったら、聞いてもいいですか?」

「もちろん」

あっさり。

「面白いからね」

やっぱりそこなんだ。

でもいい。

私も面白い。

「じゃあ、またお願いします」

「うん」

部屋を出ながら少しだけ思う。

この人と話すの、結構好きかもしれない。

――もちろん。

今のところ。

仕事の話がという意味だけど。

私がやりたいことが少しずつ分かってきた。

可愛いものを選ぶだけではない。

綺麗な人を、もっと綺麗にするだけでもない。

本人もまだ気づいていない魅力を見つけて。

好きなものと繋げて。

その人自身が、鏡を見るのを少し楽しみにできるようにする。

私が売るのは「魅せ方」。

自分を好きになれる、魅せ方。

これならやってみたい。

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