工房と娯楽施設と黒薔薇と
護は工房で縫い機の使い方をクレアから教えてもらい……。
食事を終え護は工房をみせてもらっていた。
片やルカメイシェルとモンガは追加のデザートを食べている。
工房には縫い機というミシンのような物やアイロンのような熱伸機などが置かれていた。
使い方をクレアから教えてもらい護は布を縫い合わせている。
「やっぱり、ミシンみたいだ」
「初めてとは思えないわ……器用なのね」
「似たような機械を操作したことがあるので」
護は自分が縫い合わせた布を持ち笑みを浮かべた。
「出身地は何処なのかしら?」
「あー……えっと…………」
「クスッ……別に言わなくてもいいわ。冒険者には訳アリが多いから」
優しく微笑みクレアは護をみる。
「何をつくったのニャ?」
「どんなゴミができた?」
「ゴミって……まあ布を縫い合わせただけだから間違ってないけど」
不機嫌になるも護は縫いあわせた布をルカメイシェルとモンガにみせた。
「コリャ凄い!」
「綺麗に縫えてるのニャ!?」
「こんなに綺麗に縫えるなんて縫物の才能があるのかも」
それを聞き護は何度も首を横に振る。
「布を縫い合わせただけだし……才能なんてない」
縫物にハマリそうだったので護は椅子から立ち上がった。
「そろそろ行かないか?」
「もう少しみたかったニャ」
「ああ、そろそろスラムの監視をしないとな」
それを聞いたクレアは残念と思いガッカリする。
「スラムの仕事をしてるのね」
「ああ……まあ、あそこはリバルが仕切ってるから他よりも安心だ」
「スラムが安心って……他は危険なのか?」
そう聞かれてルカメイシェルとモンガとクレアの表情は暗くなった。
「表面と裏面。人と地域。表では良いことしてたって裏じゃ悪ってこともある」
「表面だけじゃ分からないから、よく見極めて関わった方がいいってことだよな」
「そういう事よ。だけど……それが中々難しいのよね」
そう言いクレアは苦笑する。
その後、護とルカメイシェルとモンガはクレアに挨拶をし外へ出てスラムへと向かった。
✦✧✦✧✦
ここライクスチアの町の北東側には豪華な娯楽施設が立っている。
その建物は、ファンシィカンパニーと云う名前だ。
建物内には酒場、カジノ、舞台、闘技場、オークション会場などがある。
そう、かなり大きな建物だ。
酒場ならスラムにもあるが、ここは会員でなければ入れない。要は金持ちのための娯楽施設である。
ここは金さえ出せば誰でも会員になれるので富豪じゃなくても大丈夫なのだ。
地下にはカジノがある。多種なスロット、ポ―カー、ルーレット、その他にも色々設置されていた。
これらは異世界の者たちがもたらした物だ。
このカジノのスロットの所には響鈴音が居て顔を歪めている。
(この機械、全然当たらないじゃないのよ。ハア―……今日は何食べよう。
そうだ! 何か劇やってないかしら? 確か舞台のある部屋は一階の中央だったはず)
スロットから離れて一階へ向かった。
✦✧✦✧✦
ここはスラムの酒場の二階にあるリバルの部屋だ。
部屋に入るなり護は青ざめる。
「黒薔薇だらけだ……」
次いでモンガが部屋に入ってきた。
「相変わらず黒が好きだな」
その後ろからルカメイシェルが入って来て周囲をみる。
「黒薔薇なんて……何処で仕入れたのニャ!? まさか……黒薔薇の兎を倒して来たのかニャ?」
三人の反応が予想と反していたためリバルは不機嫌になっていた。
「なんだよ……その反応! 折角、黒薔薇を大量に飾ったんだぜ」
そう言いリバルは護へ歩み寄る。手には黒薔薇の花束を持っていた。
「この花束を受け取ってくれ!!」
「俺にか?」
「勿論マモルに渡したくて部下を使って取ってこさせたんだぜ」
そう言いリバルは頬を赤らめ照れている。
「訳の分からない物は受け取れない」
「これは……オレの気持ちだ。だから受け取ってくれないか!」
その様子をみてルカメイシェルとモンガは、みたことのないリバルを目の当たりにして顔が青ざめた。
「まるで告白の場面みたいだ」
「そうだったら、どうする?」
それを聞いた瞬間、護は身の危険を察知し(《移動スキル 光速!!》)と心の中で言い放った。すると一瞬の内に光となり姿が消える。
そのまま開いている扉から何処かに飛んで行ってしまった。
「扉を……なんで開けっぱなしにしてやがる!」
そう言いリバルは、ルカメイシェルに詰め寄る。
「知らないのニャ。でも、あの様子じゃ諦めた方がいいニャ。ボクは諦めないから追いかけるのニャー!」
そう叫びルカメイシェルは猛ダッシュで護を追いかける。
「あー……クソッオォォォー!!」
リバルは黒薔薇の花束をモンガへ思いっきり投げつけた。
黒薔薇の花束を投げつけられるもモンガは、ジト目でリバルをみているだけだ。
ツラさのあまりリバルは項垂れ跪き顔を床につける。目からは、ポタリと一滴の涙が落ちた。
それをみても何も言えずモンガは途方に暮れる。
(どうすんだ? こんなリバル……みたことないぞ。そもそもマモルが逃げなきゃよかったんだ。てかオレだけ残すなよな)
そう思いモンガは泣きたくなってきた。
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