191 村を救うルリア
あたしを案内しながら、鳥達が教えてくれる。
「ぴぃぴぃ!」
「そっか、村がおそわれて、ヤギたちがたたかってるんだな!」
「ぴい~」
「レオナルド! ダーウ! いそご!」
「ぶるるる!」「わふ」「りゃあ~」
あたしの頭の上に乗るロアが興奮気味に尻尾を振っている。
「ロアは、ルリアにぎゅっと抱きついていてな?」
「りゃむ~」
呪われて弱っているというのに、鳥達はやはり速い。
その後ろをレオナルドとダーウは難なくついて行く。
一分ほど走って、村が見えてきた。
「まずいな?」
ヤギ達守護獣と呪者が、村の中で戦っていた。
ヤギ達は強いが、呪者の数が多すぎる。
それにヤギ達は村人達を守りながら、呪者と戦わないといけないのだ。
「ダーウ、思いっきりあばれてな!」
「ガウッ!」
次の瞬間、ダーウは矢のような速さで駆けだした。
鳥達を追い抜いて、そのまま呪者の群れに突っ込んでいく。
「ガウガウガウガウガウ!」
駆け抜けながら、呪者をかっこいい棒と爪で斬り裂く。
それでいて、速さがほとんど落ちていない。
ヤギ達に襲いかかろうとしていた呪者をどんどん倒していった。
「……す、すごいな?」
「……ぶるる」「……りゃ」
あまりのすごさにレオナルドとロアが少し引いているほどだ。
「ルリアもまけてられないな! レオナルド!」
「ぶる!」
ダーウから少し遅れてレオナルドも呪者の群れに突っ込んだ。
ここまで近づけば、充分だ。
あたしはかっこいい棒と木剣に精霊力をおもいっきり込める。
「きえれえええええええええええええええ!」
勢いよく振りながら、棒と木剣から精霊力を発散させた。
「ふう。これでよし」
呪者は全部消えた。
「みんな、けがはないか?」
あたしは、レオナルドに乗ったまま、村人達と守護獣達に尋ねる。
「は、はい、……私達は無事です」
「ならよかった。ヤギたちは、怪我しているな?」
「めええ」
ヤギはこの程度の怪我は何でもないと言っているが、そんなことはない。
皆、致命傷を負っているわけではないが、軽い怪我でもない。
「なおれー!」
あたしはヤギ達をまとめて治療した。
「ふう、これでよし」
あたしはキョロキョロと周囲を見回した。
まだサラ達は到着していない。
「クロがいたら、おこられるところだったな? レオナルド、ありがと」
そういいながら、頑張ったレオナルドの首筋を撫でていると、
「わふわふ~」
ダーウがレオナルドの胴体に前足をかけて顔をあたしに近づける。
「ダーウもえらかったな? だいかつやくだ」
ダーウの頭を撫でると、鳥達がレオナルドの背中に集まってくる。
レオナルドの背は広いが、フクロウや鷹は大きいし鳥達は二十羽もいる。
さすがに乗り切らない。
乗れなかった鳥達は、大きな鳥の上に乗ったりあたしの肩に乗ったりする。
「鳥達もありがとな?」
あたしは羽毛まみれになりながら、順番に撫でていった。
ダーウのもふもふもいいが、羽毛のふわふわ感も素晴らしい。
「めえ~」「ぶぼぼ」「もお~」
ヤギ、猪、牛も撫でもらおうと集まってきて、
「りゃむ~」
ロアも肩まで降りてきて、頬ずりしてくる。
「みんながんばったな! えらいえらい!」
あたしがみんなを撫でまくっていると、
「せ、聖女様……聖女様だ」
「……聖女様が、我が村をお救いくださった」
村人がざわざわしている。
「…………まずいな?」
あたしがぼそっとつぶやくと、ロアが「りゃむ?」と首をかしげた。
聖女だと思われるのはよくない。
「ルリアは、せいじょじゃないからな?」
「聖女様、地上への降臨を感謝いたします」
「……この感動を、なんと言ってあらわせば良いのか」
村人達はあたしの言葉を聞いていなかった。
「こ、こまった」
あたしは、どうやったら話しを聞いてもらえるか少し考える。
「あ、そうだ! ダーウにすこし吠えてもらえば……」
ダーウの声で注目を集めてから、あたしは聖女じゃないと説明すればいい。
直訴に来た領民にダーウが吠えたときは驚かせすぎたので、少しだけ吠えてもらえばいい。
「ぁぅ? ……ガウッ!」
ダーウの大きな吠え声が周囲に響き渡る。注目を充分浴びたことだろう。
「よいか? ルリアは聖女じゃない」
だが、村人はあたしの話を全く聞いていなかった。
「ありがたいありがたい。聖なるお犬様の吠え声が邪気を払っていく……」
「さすがは聖女様の従者たる聖犬様……」
「ぁぅ!」
ダーウは「はい、僕が聖犬です」とばかりに胸を張っている。
「吠え声がりりしい」
「なんというありがたい吠え声……知性を感じる」
「わふ~ぁぅ~」
あまりにも褒められてダーウは照れて、前足で猫が顔洗うときのような仕草をする。
「まあ、たしかにダーウはかしこくてかわいいからな?」
それはそれとして、聖女じゃないとなんといえば納得してもらえるだろうか。
「むむ~、あ! やっときた!」
遅れていたサラ達がやっと村に到着したのだ。
「ルリアちゃん、どんなかんじ?」
「えっとね――」
あたしはサラとスイ、トマス、クロ、狩人親子に起こったことを説明した。
「きゅ~」「ここ」『……』
もちろん、あたしの近くに来たキャロとコルコ、クロを撫でながらだ。
「ルリアはすごいであるからな! まさに聖女!」
「なるほど、聖女だと思われて困っていると」
「そう。トマス、どしよ?」
『だから、ルリア様は力を使いすぎなのだ!』
「……すまぬな?」
クロはあたしに撫でられながらも小言を言ってくれる。
そんななか、トマスは真剣な表情で考えてくれていた。
「そうですね。とりあえず口止めをしましょう、それで――」
トマスの言葉の途中で、
「しねえええええ! 悪女!」
物陰から男が二人、飛び出してきた。




