190 襲われる守護獣と精霊
ダムから村に向かって、あたしはレオナルドに乗って駆けていく。
レオナルドは並の馬よりずっと速い。
障害物のない平地を駆けるかのように、山道をものすごい勢いで駆けていく。
「ハッハッハッ」
ダーウもレオナルドに負けず速かった。
あたしは後ろを振り返る。
「サンダーとスレインもがんばってるな?」
サンダーとスレインは、かなりレオナルドから遅れている。
サラを乗せたサンダーと、スイを乗せたスレインもなかなか速い。
サンダーもスレインも、やはり名馬だ。
だが、守護獣である巨大なレオナルドについて行くのは難しい。
普通の馬と守護獣の馬では、脚力も心肺能力も違うのだから。
「だけど、まってるよゆうはないな?」
『向こうにはスイとトマス、キャロとコルコががいるからだいじょうぶなのだ!』
「そだな!」
別行動になることは想定内だ。
だからこそ、キャロとコルコに向こうに行ってもらったのだ。
『それにビトもなかなか強い守護獣なのだ!』
「でも、ビトはやみあがりだからな~」
ビトを戦力として数える訳にはいかない。
「あたしたちだけでなんとかしないとな?」
「がうがう!」「ぶるる~」「りゃ~」
ダーウ、レオナルド、ロアがまかせろと鳴いた。
レオナルドが、村までもう少しというところまで来たとき、
「む! やばいけはいがする」
あたしは異様な気配に気がついた。
大きな呪術が使われつつあるような気配。
それだけでなく、精霊達と守護獣達が苦しんで泣いている。そんな気配だ。
「サラちゃんたちは……」
後ろを振り返ると、サラ達はもう見えなかった。
「クロ! サラちゃんとスイちゃんに、先にむらにいくようにつたえて!」
『わかったのだ!』
「レオナルド! あっち!」
「ぶるる~」
あたしはクロに伝言を頼んで、レオナルドには怪しい気配に向かって走ってもらう。
「あれだな!」
前方に大量の小さな呪者が怪しげな図形を描いているのが見えた。
図形の下には、精霊達と鳥の守護獣達がいて、苦しんでいる。
「めちゃくちゃこいな?」
図形からは、見たことがないほど濃密な呪力が漂っている。
「しかも、なんだあれ? なにかしてるな?」
目をこらすと、精霊達と守護獣達に呪力が浸透し始めていた。
まるで呪力を使って、精霊達と守護獣達を悪い物に作り替えようとしているかのようだ。
「時間がない! レオナルド、ダーウこのままつっこむ!」
「ぶるる」「がう!」
レオナルドはそのままの勢いで、精霊達と守護獣達のいる場所へと突っ込んでいく。
「きえれえええええええええ!」
あたしは叫びながら、かっこいい棒と木剣を大きく振ると同時に精霊力を放つ。
狙うのは空を飛ぶ沢山の呪者だ。
ロアを助けたときに、呪者を消し飛ばしたのと同じ方法を棒と木剣を通してやったのだ。
「よしっ」
一撃で、上空の呪者をまとめて滅することに成功する。
ロアを助けたときより、威力が上がっている気がする。
やはりかっこいい棒と木剣を通すと、精霊力を操りやすい。
それに、棒と木剣の効果だけでなく、
「せいれいたち、ありがとな?」
さっき体のなかに入ってきた精霊達が力を貸してくれたおかげだ。
かわりと言うわけはないが、思う存分あたしのなかで体を癒やしていってほしい。
あたしが上空の呪者を退治している間、ダーウは
「ガウガウガウ」
そのまま駆け抜けながら、地上の呪者を倒していく。
ダーウは速い。かっこいい棒と爪で、一秒辺りニ、三匹の呪者を退治していった。
レオナルドも駆けながら、蹄で呪者を踏み潰し跳ね飛ばしている。
「ダーウ、レオナルド、ありがと! きえれええええ!」
そして、残った呪者をあたしが精霊力をぶつけて退治した。
「みんな、すぐたすける!」
あたしは守護獣達を解呪して治癒魔法をかけた。
回復した守護獣の鳥達があたしに向かって訴える。
「ぴぴい」
「わかった。村がおそわれているんだな? すぐにいく! おっ?」
幼い精霊達があたしの体の中に飛び込んできた。
おかげで体内の精霊力の量がものすごいことになっている。
クロがいうには、あたしの中に入ると、精霊達は傷を癒やすことができるらしい。
「うん。ゆっくりやすむといい」
「ぴぃ!」
「ありがと、でもむりはするな!」
鳥の守護獣が、近道を教えてくれるというので、言葉に甘える。
「ダーウ、レオナルド! いくよ」
「がうがうがう」「ぶるる!」
そして十羽の守護獣の鳥と一緒に、村に向かって全力で走ったのだ。




