第6話 『雪屋』
過去。
ぼくは、このようなところに来た事ははじめてだ。いや、来られる人はめったにいないと思う。
ぼくは、幸運なんだろうか。もしくは不運か。
帰れなくなってしまったら、どうしようとか、いろいろと怖い事を考えてしまう。その反面、過去と言う物に、少なからず興味を持っていることは、自分の好奇心なので、わくわくしてしまう。
『きみは今から、空宙石が無くなった過程をみせてあげよう』と宙は言った。これは、なんで調査しているのかという、ぼくの疑問に答えてくれると解釈してのもいいのだろうか。
分からない。
今は、分からない。どう考えても、答えは出てこないだろう。今は、目の前でお母さんらしき人と楽しそうに話している宙を、追いかけるべきだろう。
宙は、調査をした。そして、自己判断でぼくを『「空宙石」見つけちゃうぜ隊』に任命した。ということは、空宙石が無くなったことについて、宙はなんらかの形で関係しているという事だ。
過去の人には、ぼくが見えないらしい。好都合だ。
ついでに言うと、この三、四歳の宙が、ぼくの人間違えという事は考えないで置く。
「だめでしょ、お稽古さぼって」
「だって〜。あの先生怖いんだもん」
「だめ。ちゃんとした神になるには、それくらいの事は我慢しなくてはね」
「私、神になんか、なりたくない。冒険家になるんだ!」
「はいはい、分かりましたよ、それじゃあ、お母さんのホットケーキは、いらないのね」
「え〜、やだやだ。食べる〜」
「それじゃ、お稽古しなさい」
「はぁ〜い」
この聞こえてくる会話から考えると、この子は宙に間違えないようだ。
宙とお母さんが手をつないで歩き出した。
おっと、はやく追いかけなくては。
ここは、商店街みたいで、道の両端に店が並んでいる。ほとんどが料理屋で、魚や肉の焼ける匂いや、飴やお菓子の甘ったるい匂いが入り混じっている。それに加えて、その食べ物を売る人たちの声か聞こえてくる。
ぐぅ〜。
お腹がすいてきた。そういえば、さっきから何時間になるのだろう。
宇宙空間は、地球と時間が同じなんだろうか。
二人は歩くのがはやかった。見た目は普通に歩いているようなんだけど、ついていくのがやっとだ。
ここら辺にいる人は、みんなそうなんだろうか。と、思ったけど、どうやら違うようだ。この二人だけだ。
神の力なんだろうか。
宙たちは、一軒のお店に入っていった。
『雪屋』と店の前に書かれてあった。
雪を売っているお店なんだろうか。
宙がきょろきょろとお店を見渡す。
ぼくも見渡して見る。
「…………。」
ぼくがイメージしていたものは、全体的に白で、小さくて、きれいで、雪だるまでもいそうな、かわいいものだった。
ぜんぜん違った。
油臭くって、馬鹿みたいに広い。隅っこには、クモがせっせと巣を作っているし、鼠が、客が落としたような食べ物を食べていた。
……なんか、騙された感じだ。
だけど、不思議な事に、客はたくさんいて、わいわいと食事を楽しんでいるようだ。よっぽど、食事がおいしいのかな。
いつの間にか、宙たちは中央のこの店で一番綺麗な机に座っていた。
ぼくも、いそいそとそのテーブルに近づく。
「あんた、誰?」宙が、こっちに向かって話している。ぼくは後ろを振り返った。誰もいないじゃないか。
「何、後ろ振り向いていんの?あんただよ」
「へ?ぼく?」
「そうだよ。さっきから付いてきて、神の私になんか用?」
「………。」




