第5話 おめでとう。
ぼくは今、ハコの中から出ていた。
べつに、宙にハコを壊されて、死んでしまった訳ではない。第一、死んでしまったら、『ぼくは今、ハコの中から出ていた』なんて考えられるわけがない。
宙は、ぼくを生かせてくれた。
ぼくが死んでもいいから、なんで調査しているのか話して欲しいといったから。
生かせてくれた。
それに、
ぼくの夢まで叶えさせてくれる。
うれしい。
ぼくは、手首についているブレスレットを見た。
なにもかも、この藍色ブレスレットのおかげだな……。
──数時間前
「おめでとう。君──瀬戸虹は、宇宙界規定の調査により、『「空宙石」見つけちゃうぜ隊』に任命された」宙が、にっこり笑って、ぼくの手にブレスレットをつけた。
まったく話が読めないんですけど。そう言おうとしたとき、手が光った。
いや、確実に言うと手じゃない、ぼくがつけているブレスレットだ。
眩しい。
いや、眩しいってもんじゃない、目の前が真っ白になるような輝きだ。
ぼくは思わず目を閉じた。「きみは今から、空宙石が無くなった過程をみせてあげよう」という宙の声を聞きながら………。
ぼくは目を開けた。
まだ、光の衝撃から解き放れていないのか、目がチカチカする。
何度か瞬きを繰り返すと、目が正常に戻ってきた。
辺りを見回すと、さっきの風景となんら変わりないが、人が多かった。今までは、ぼくと宙の二人だったけど、いきなり人口密度が、増えたって感じかな。百人……いや、千人、一万人ぐらい、いるのではないだろうか。
ふと前を見ると、ぼくに向かって小さい子女の子が走ってきた。
……なんかすっごい速い……。
三、四歳とは思えないくらいの足の速さ。ぼくは足が速いほうだけど、この子には負けそうだ。などと考えているうちに、その子は、ぼくにぶつかりそうになった……。ぶつかった。
……あれ?
ぶつかったはず。確かにぶつかったはずだ。なのに、何事もなかったかのように、女の子は、お母さんらしき人のところへ行った。
……女の子が、一瞬にしてぼくを避けた?
そんな訳がない。ぼくは、ぶつかったところをちゃんと見た。(ぼくの視力は、2・0)
まさか…。
ぼくは考える。まさかとは思うけど、これしか考えられない。
女の子はぼくをすり抜けた。
つまりぼくは、透明なんだ。分かりやすく言うと幽霊ってこと……。
なんだよ宙、おめでとうとか言ってたくせに、ぼくを殺したんじゃないか。しかも、なんで調査してんのか、まだ教えてもらってないし。
「宙、そんなに速く走ちゃいけませんよ、誰かに当たったらどうするの?」後ろから声が聞こえた。振り返ると、さっきぼくに、ぶつかった子がお母さんに怒られている。
あの子、宙って言うんだ……。どっかで聞いた名前だよな……。
…………。
……思い出した。ぼくを殺したあいつじゃないか!
よく見ると、宙と呼ばれた子は、赤い髪をしていて、目が鋭かった。
とても宙に似ている。という事は、この子は宙、本人で、ここは過去の世界……。って事?




