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私は、自分の中に残る雫さんへの想いと、後悔を消すために、雫さんを憎もうと決めた。
長い長い時の中で、考える時間はたくさんあった。
冷静になるには充分すぎた。
あの時、ちゃんと話し合えていたら。
あの時、信じられたら。
あの時、目を逸らさなければ。
あの時、廃ビルの中で朝まで待っていれば。
雫さんは、私を助けてくれたのではないだろうか。
最期の最後まで、思い浮かべてしまうのは雫さんだった。
怖かった。
それでも、思い出すのは憎んだはずの人の笑顔だった。
それ以上に、好きになっていたことに、気づくのが遅すぎた。
だから……
私は、雫さんは悪い人だったと思うことにした。
そう思い込まないと、私は生き続けることが辛かった。
押し込めていた感情が、また蘇ってしまった。
何度、逃げなかった私と雫さんとの未来を想像しただろう。
二人で過ごせたはずの未来を。
涙が次々と溢れてくる。
やり場のない想い。
私は嗚咽をあげて泣いた。
助けて……
私を助けて……
もう、逃げないから。
この世界へ来て、こんなに泣いたのは初めてだった。
顔をあげると、窓から柔らかな陽が差し込んでいた。
私は顔を袖で拭った。
部屋を出て、水場へ向かう。
廊下の途中で、セイトに会った。
彼は私の方を複雑そうな顔で見ていた。
「泣いていたの?」
何故か辛そうな声だった。
「泣いて……ない」
私は顔を背けて、強がる。
会って数日しか経っていない彼に、知られたくはなかった。
知れば、きっと慰めてくれる。
雫さんのことを思い出して余計辛くなるのが分かっているから。
そんな私に彼はゆっくり近づき、頬に流れた涙をその長い指で拭う。
「朝食、用意しておくから、顔を洗ったらおいで」
優しくそう言い残し、去って行った。
胸の中が苦しい。
別人なのに、雫さんを重ねてしまう。
セイトの足音が廊下の奥に消えていく。
私はその場に立ち尽くし、触られた頬を手で覆った。
まだ、指先の温もりが残っているように感じた。
雫さんも、私が話し出すまで無理には聞かなかった。
……本当に、似ている。
首を振り、頬を叩く。
セイトはセイトで、雫さんではない。
分かっている。
どんなに思い出そうが、後悔しようが、望もうが、元の世界にも、あの時間にも戻れない。
昔、レンギョウに尋ねたことがあった。
『貴女が召喚したんでしょう?私を元の世界に帰せないの?』
無理だと言われて終わった。
私はため息を吐き、水場へ向かった。
冷たい水は泣き腫らした目に染みた。
何度も、何度も水で流す。
涙がまた勝手に溢れだす。
落ち着くまでに時間がかかった。
水面に映る私は、目の周りが赤く腫れていた。
鼻の頭も頬も赤かった。
(ああ……これでは「泣いていた」と、言っているようなものだ)
それでも良い。
今だけは、誰かの優しさに少しだけ甘えたかった。
私は、小さく息を吐くと、食堂へ続く薄暗い廊下を歩き出した。
最終まで大まかな流れ決まったんですけど、自分で考えたのに受け止めきれなくて少し泣いた。
ここ数日、互いに和解できた世界線作りまくって二人幸せにしてる。




