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むっつめ(出会い①)

今回は主役たちが小学生の頃のお話です。


色々学び中でございます。

 そいつは俺から見ても一回り小さな拳をぐっと握りしめ必死に堪えていた。


ーーー小学4年生の初夏のことだ。


最初は下校中のやつらが騒いでいるだけだと思っていた。


そう、放課後によくある、極々当たり前のいつもの光景だ。


でも…。


「おい、おとこおんな!!」


ーーーはっとして振り返った。


横を通り過ぎた瞬間、そんな聞き慣れない言葉が耳に入ってきたからだ。

見れば3人で1人を取り囲んでいる。


いじめなのか?あれ…こいつら見覚えあるぞ?

俺達の小学校は春先に合併っていうのがあって、急にすごく人数が増えた。増えたんだけど、近いクラスの男子は多少の交流があるから全く知らないことも無い。


そしてもう1人は…あれ?誰だろう。

余り見覚えの無い顔の子が俯いて悔しそうに涙を滲ませている。


「ああー?なんだオメー?」


しまった!囲んでいる主犯格っぽい奴と目が合ってしまった。

面倒だけど、このままあっさり逃げるのも何か負けた気がして嫌だよな…。


「あ、あのさ…な、なにしてんのさ3対1でさ。」


「ハァ?よけいなお世話だっての!」


怖くて言い返す言葉が出て来ない。

このまま黙っていては仕方が無いので、俺は何となく気になった事を突っ込んでみた。


「あとさ、さっきのおとこおんなってどういう意味?」


そう、いじめられていた子は短髪で服装も地味なシャツに短パン。ランドセルも紺色なら何処にも女の子っぽさが感じられないからだ。


「そういう意味だっての!」


どういう意味なんだぜ…。


「いや、そもそも俺は俺だしお前はお前、この子はこの子でしょ?男とか女とかどうでも良くないかな?」


「は…あ…?」


奴の顔は完熟トマトみたいに真っ赤っか。

もしかして殴られるのでは…でも何故か俺の口も止まらなかった。


「えっ?じゃあさ、お前この子の事どう思ってそう言ったの?」


「ああああ?フザケンナっての!!」


いきなりの怒声そして目から大粒の涙、涙、涙…。

うわぁと叫びながら明後日の方向へ猛ダッシュを始め、仲間の2人も慌てて後を追って行ってしまった。


 一体何だったんだろう?これじゃあ俺の方がいじめてるみたいじゃないか?

でも何とかいじめを止められて良かった…。


「ふぅ…。」


 いつの間にか額に湧き出していた汗を手で拭っているとすぐ近くから視線を感じた。


「えへへ…ありがとう。」


さっきのイジメられていたやつだ。

改めて見ると、小柄でほっそりした手足は確かに女の子っぽくも見える。

でもだからって「おとこおんな」は無いだろう。


しかし人間の表情ってこんなにころころ変わるものだろうか?さっきまであんなに悔しそうな顔をしていた子が今ではすっかり満面の笑み。

こんなアンパンマンみたいな顔をして笑う奴は生まれてこのかた見たことが無い。


「ま、まあね。見過ごせなかったからな。」


「じゃ正義の味方だ。」


本当は成り行きでこうなっただけに過ぎない。

でも正義の味方だって?なんて心がくすぐられる言葉なんだろう。


「そ、そうかな?あはは。でもおれ、正義の味方じゃなくってひろいけんたって言うんだ。君は?」


「いがらしまことって言います。けんたくん。」


ーーーなんだ、まことってやっぱり男の名前じゃないか。


「あーそうだな、ケンちゃんで良いよ?みんなからもそう呼ばれてるし。」


「じゃあ正義の味方ケンちゃんで。」


なんだそれ!?と、思わず吹き出してしまった。


「正義の味方ケンちゃんかぁ…それ良いね!」


この『◯◯ケンちゃん』という自称はこれからずっと、俺の一発ネタとして定着するのであった。

「お前が始めた物語だろ」と自分に言い聞かせながら夜とか仕事の合間とかに書いております。(こらっ!)


ありがとうございます。

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