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第6話「美少女たちの水浴びと、新たな訳あり令嬢の影」

石鹸が完成した翌日。

吉平は村の裏手にある綺麗な小川のほとりに、簡単な目隠しの囲いを作った。即席の水浴び場である。

完成したばかりの無骨な石鹸の効果を、まずはサチと桔梗の二人に試してもらうことにしたのだ。


「いいか、その石鹸を少し水に濡らして、両手でよくこするんだ。絶対に目に入れないようにな」

吉平は囲いの外から声をかけた。


「わ、わかったわ! ……うわっ、なにこれ! 吉平、変な泡が出てきた!」

「し、師匠! これはいかなる妖術ですか!? 手の中で白い雲が無限に増殖していきます!」


中からは、キャッキャと騒ぐ少女たちの高い声が聞こえてくる。

平安時代の人間にとって、泡立つ石鹸など魔法以外の何物でもないだろう。


「その泡で、顔や体を優しく撫でるように洗うんだ。ゴシゴシこすりすぎないようにな」


しばらくすると、水浴びを終えた二人が囲いから出てきた。

吉平は思わず息を呑んだ。

もともと可愛らしかったサチは、泥や煤が完全に落ちたことで、ゆで卵のようにつるんとした白い肌を輝かせている。

桔梗に至っては、高貴な顔立ちがさらに磨き上げられ、濡れた黒髪から微かに石鹸の香りを漂わせる様は、まるで水浴びをする天女のようだった。


「吉平、これすごい! 肌がキュッキュってするのに、なんだかしっとりしてる!」

サチが自分の頬をツンツンと突きながら、満面の笑みで駆け寄ってくる。


「師匠……私は己の無知を恥じます。陰陽の術などなくとも、人はこれほどまでに美しく、清らかになれるのですね。この『しゃぼん』という霊具、まさに国宝級です!」

桔梗も目を輝かせ、すっかり石鹸の虜になってしまったようだ。

サチと桔梗は「私の方が綺麗に洗えた」「私の方が泡立てるのが上手い」などと言い合いながらも、どこか楽しそうに笑い合っている。


衛生環境の改善。それは単に命を救うだけでなく、こうして人々に笑顔と活気をもたらすのだ。

吉平が自分のチートの成果に満足していた、その時だった。


「……吉平様、吉平様はおいででしょうか」


村の入り口から、ひどく弱々しい、鈴を転がすような声が響いた。

見れば、見すぼらしい身なりだが、隠しきれない気品を漂わせた一人の少女が、従者らしき老婆に支えられながら立っていた。

彼女は激しく咳き込み、その顔色は透き通るように白い。


「京の都で、『どんな呪いもたちどころに祓う、泡の魔法を使う奇跡の癒し手』がいらっしゃると噂を聞き……すがる思いで参りました……けほっ」


どうやら、吉平が「ただの衛生管理」をしているだけだという事実は、都に向かうにつれて尾ひれがつきまくり、とんでもないファンタジーの噂となって広まっているらしい。

また一人、訳ありの没落令嬢が、吉平の「手洗いうがい」の噂を聞きつけてやってきたのだった。

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