第24話「生姜湯の罠と、こたつの中の薄着天国」
完全にこたつの虜となった三人は、それからというもの、隙あらば吉平の部屋に集まり、布の下に潜り込むようになってしまった。
外はついに初雪が舞い散る本格的な冬。
だが、吉平の部屋の中央だけは、ぽかぽかと幸せな空気に包まれていた。
「……あのさ、お前たち。足元が温かいのはいいけど、上半身は寒い空気に晒されてるんだぞ。そのまま寝てたら、逆に風邪を引くぞ」
吉平が呆れたように言うと、こたつから顔だけを出していたサチが「へっくしゅん!」と見事なくしゃみをした。
「ほら見ろ。仕方ない、俺が中から体を温める『風邪予防の薬湯』を作ってきてやるから、少し待ってろ」
「薬湯……? 苦いのは嫌ですよ、吉平様」
葵が布に埋もれたまま、とろんとした目で抗議する。
「苦くないよ。むしろ甘くて美味しいやつだ」
吉平は土間へ向かい、商人から仕入れていた貴重な生姜を取り出した。これをすり鉢で細かくすりおろし、お湯を注ぐ。そこに、甘葛のシロップをたっぷりと加え、吉平特製の「特濃・生姜湯」を完成させた。
「はい、冷めないうちに飲んでみろ」
吉平がお盆に乗せて持ってきた椀からは、生姜のツンとした爽やかな香りと、甘い匂いが湯気となって立ち上っている。
「ふうふう……あむっ。あ、甘くてピリッとする! なんだか胸の奥がカッと熱くなるみたい!」
サチが目を丸くして、ぐびぐびと飲み干す。
「ふむ、この刺激……強力な『陽の気』を感じます。体の芯から霊力が燃え上がるようです!」
桔梗もふうふうと息を吹きかけながら、満足げに喉を鳴らした。
「本当ですわね……。口当たりは甘いのに、お腹の底から不思議な熱が……ふうっ」
葵も両手で椀を包み込み、ゆっくりと飲み干していく。
「よしよし。生姜の成分で血の巡りがよくなるから、これで風邪の予防になるはずだ」
吉平が自分の分の生姜湯を飲み終え、満足げに頷いた、その直後だった。
「……あれ? なんだか、すっごく……暑くない?」
サチがパタパタと手で顔を仰ぎ始めた。
ただでさえ、下半身はこたつの熱気で蒸されている状態だ。そこに特濃の生姜湯による血行促進効果が合わさり、彼女たちの体内は今、真夏のような猛烈な熱を発し始めていたのである。
「あ、暑いです! 陽の気が……火の霊力が暴走していますぅ! このままでは体が発火してしまいます!」
桔梗が額にじっとりと汗をかき悶える。
「サ、サチさん、桔梗様……私、もうだめですわ。息が……ふぁっ、暑い……っ」
葵に至っては、もともと代謝が上がっていたところに追い討ちをかけられ、茹でダコのように顔を真っ赤にして荒い息を吐いている。
「ちょ、お前ら大丈夫か!? 暑いなら一旦こたつから出ろ!」
吉平が慌てて声をかけるが、三人は首を横に振った。
「で、出たら外の空気が寒くて死んじゃう! でも暑い!」
サチはそう叫ぶと、なんと自分が着込んでいた一番上の単衣をバサリと脱ぎ捨てた。さらにその下の薄い肌着の胸元を大きくはだけさせ、手でパタパタと仰ぎ始める。
健康的な鎖骨と、汗で肌に張り付いた布地から透ける柔らかな膨らみが、吉平の目の前に露わになった。
「なっ……サチ! お前、いくらなんでも薄着すぎ……っ!」
「師匠! 私も限界です! 霊装解除!」
吉平がサチを止めようとした瞬間、今度は桔梗が幾重にも重ねていた美しい装束を次々と脱ぎ捨て、ほとんど白い下着一枚の姿になってしまった。
「ふう、ふうっ……少しは涼しくなりましたが、まだ熱が……っ。師匠、私を団扇で仰いでください!」
汗ばんだスレンダーな体をよじらせ、涙目で訴えてくるエリート陰陽師。
「き、桔梗まで! っていうか葵様、息が荒いぞ! 無理するな!」
吉平が向かいの葵を見ると、葵の瞳は完全に熱で潤みきっていた。
「吉平様……私、暑くて、溶けちゃいそうですぅ……っ」
葵はとろけたような笑顔を浮かべながら、ゆったりとした着物の帯を自らすると解き、両肩から布を滑り落とした。
その瞬間、布の拘束から解放された暴力的なまでの「質量」が、ぽるんと弾け出る。薄い布一枚隔てただけの、あまりにも豊満な谷間が、荒い呼吸に合わせて大きく上下に揺れていた。
「あ、あ、葵様ぁーっ! ストップ! それ以上脱いだら犯罪だから!」
外は凍えるような雪景色。
しかし吉平の目の前には、こたつから一歩も出ようとしないまま、汗ばんだ肌と豊かな胸元を惜しげもなく晒して熱にあえぐ、三人の薄着の美少女たち。
「ねえ吉平、私も仰いでよ〜。胸の谷間に風を入れて〜」
「抜け駆けはずるいです! 師匠、まずは私の熱を冷ましてください!」
「吉平様……冷たいおててで、触ってくださいませ……ふぁっ」
「だからお前ら、一旦こたつから出ろぉぉぉーっ!!」
良かれと思って作った特製生姜湯は、思わぬお色気ハプニングを引き起こし、吉平は目のやり場に困りながら、一人で真っ赤になって叫び続ける羽目になったのだった。平安の冬は、想像以上に熱く、そして騒がしい。




