第23話「魔の結界『こたつ』と、堕落する美少女たち」
その日の夕方。吉平の部屋の中央に、奇妙な空間が完成していた。
床を四角くくり抜き、底に灰を敷き詰めて安全な火鉢を置く。その上に木枠を組み、都で仕入れた分厚くて大きな綿入れの布をすっぽりと被せたのだ。
「さあ、みんな。この布をめぐって、足を下に入れて座ってみてくれ」
吉平に促され、三人の少女たちは怪訝な顔をしながらも、言われた通りに布をめぐり、くり抜かれた床に足を下ろした。
「なによこれ、床に穴が……あっ」
一番に足を入れたサチの動きが、ピタッと止まった。
「……えっ?」
次に足を入れた桔梗の目が見開かれた。
「ふあ……っ」
最後に足を入れた葵の口から、艶っぽい感嘆の吐息が漏れた。
火鉢の柔らかな熱が、分厚い布によって密閉された空間に充満している。
足元からじわじわと伝わる、優しくも圧倒的な温もり。隙間風に凍えていた彼女たちの体中を、春の陽だまりのような暖かさが一気に駆け巡ったのだ。
「な、なにこれぇ……! 足の先から、お日様が入り込んできたみたい……っ」
サチが布を胸元まで引き上げ、とろけたような顔で机に突っ伏した。
「ああ……もう駄目……。今日の畑仕事、お休みしていいかなぁ……」
「し、師匠! これはいけません! あまりにも心地よすぎて、陰陽師としての闘争心がみるみる奪われていきます! これは確実に人を堕落させる魔の結界……っ、でも、出られないぃ……!」
桔梗は口では警戒しながらも、布の中にすっぽりと潜り込み、蓑虫のように丸くなって幸せそうに目を閉じている。
「吉平様……極楽とは、ここにあったのですね……」
葵に至っては、机の上に木簡を並べたまま、完全に夢の世界へと旅立とうとしていた。
「よしよし、大成功だな」
吉平も空いている席に座り、こたつの中に足を入れた。
その瞬間、布の下で、吉平の足に何かが触れた。
「んっ……」
向かいに座る葵の、柔らかな足先だった。
こたつの中は思いのほか狭い。吉平が足を少し動かすと、今度は右側に座るサチの温かいふくらはぎに触れ、左側からは桔梗の冷たいが滑らかな足先が、無意識に吉平の足にすり寄ってくる。
(や、やばい……物理的な温かさより、別の意味で体温が上がってきた……!)
密閉された暗い空間の中で、四人の足が複雑に絡み合う。
少女たちの無防備な足の感触と、こたつの熱気、そして彼女たちの甘い香りが入り混じり、吉平は一人で顔を真っ赤にして焦熱地獄(天国)を味わう羽目になった。




