第18話「大商いの夜と、三つの甘いご褒美」
村への帰り道、荷車は行きよりもずっしりと重くなっていた。石鹸と引き換えに得た、大量の米や上質な布、そして砂金が積まれているのだ。
「やったわね吉平! これで村のみんなが、冬の間もお腹いっぱいご飯を食べられるわ!」
サチが飛び跳ねて喜ぶ。
その夜、新しくなった吉平の家では、四人だけのささやかな祝勝会が開かれた。
美味しい白米と少しの果実酒に酔い、すっかりリラックスした空気が流れる。湯上がりでほんのりと頬を赤らめた三人の少女たちは、いつも以上に無防備で可愛らしかった。
「今日は一番の功労者である師匠が、最も疲れたはずです。ここは一つ、私たちが師匠の疲れを癒やす『ご褒美』を差し上げましょう!」
桔梗が提案すると、サチが真っ先に手を挙げた。
「ご褒美? いいわね! じゃあ私が肩を揉んであげる! 畑仕事で鍛えた指圧を見せてあげるわ!」
サチが吉平の後ろに回り込み、ガシッと肩を掴んだ。
「おっ、いいなサチ……って、痛い痛い痛い! サチ、お前力強すぎ! 肩甲骨砕ける!」
「ええっ!? ご、ごめん! 手加減したつもりだったんだけど!」
慌てて手を離すサチ。健康優良児のパワーは、吉平の想像を超えていた。
「ふふん、やはり力任せでは駄目ですね。師匠、仰向けに寝てください。私がツボに霊力を流し込みます!」
桔梗が吉平の隣に座り、細い指で吉平の胸元や腕をツンツンと突き始めた。
「……桔梗、それマッサージっていうか、ただつつかれてるだけなんだが。しかもくすぐったい」
「なっ……! わ、私の貴重な霊的接触を……! ええい、ならばもっと強く!」
むきになった桔梗が吉平に覆いかぶさるようにしてポカポカと叩き始め、吉平は笑いを堪えるのに必死になる。
「お二人とも、それでは吉平様が休まりませんわ。……吉平様、こちらへ。私の膝を枕になさってください」
最後に葵が、自分の太ももをぽんぽんと叩いて微笑んだ。膝枕の提案である。
「おっ、葵様それはありがたい……」
吉平が素直に葵の膝に頭を乗せようとした、その瞬間。
葵の膝のすぐ上、つまり彼女の豊満な胸元が、仰向けになる吉平の顔のすぐ真上に迫る形になった。薄い単衣越しでもわかるその暴力的なまでの質量と、葵から香る甘い匂いに、吉平の顔が一気に沸騰する。
「あ、葵様! やっぱり大丈夫! 逆に心拍数が上がりすぎて休まらないから!」
「え? なぜですか? 遠慮なさらず、さあ、もっと深く顔をうずめて……」
「や、やめろーっ! 物理的に息ができない! サチ、桔梗、助けてくれー!」
天然で距離を詰めてくる葵の膝枕(という名の圧殺)から逃げ出そうとする吉平と、それを引き留めようとする三人の美少女たち。
「あーっ! 葵ちゃんずるい! 私も吉平に膝枕するー!」
「わ、私もやります! 霊的な膝枕です!」
「ふふっ、サチさんも桔梗様も、吉平様は私から離れないそうですわよ?」
結局、吉平は三人の少女たちに両腕と頭をホールドされる形でもみくちゃにされ、そのまま全員で雑魚寝をして朝を迎えることになった。
都での大成功の余韻と、少女たちの温もりと少しのお色気に包まれながら、吉平の異世界……もとい平安スローライフは、ますます賑やかで幸せなものへと向かっていくのだった。




