アルタのお願い
ゲームタイトルと同じ言葉が出て来た事で、この話が本当に主軸に関わるのだという事がよく分かる。
「私の歌とあなたの歌。この二つを掛け合わせて、核に溶け込んでいる怪物達を元の宇宙に帰す。これが私達の作戦よ。怪物達がこの星からいなくなる事で、星の生命に何かしら影響が出てくるかもしれないけど、星が終わるよりも良いでしょう? 改めて、協力して欲しいの。お願い出来ないかしら?」
アルタさんがそう言うと、私達の目の前にウィンドウが出て来た。
『クエスト『怪物帰郷の宴』を開始しますか? YES/NO』
つまり、このクエストを受けるかどうかを選ばせてくれるらしい。ゲーマーなら、ここでNOを押す人はいない。それは私達も同じだった。
YESを押してから、シェリアさんに背中を叩かれる。その理由がしっかりと口頭でも返事をしろという事だとすぐに理解する。
「わ、わわ、分かりました……」
「ありがとう。それじゃあ、作戦を共有するわね」
アルタさんはそう言って、ホログラムを出しているテーブルを操作していく。
「私達はユートアルパにあるこの施設でライブを行うわ。収容人数は二万人。ただ、これだけじゃなくて、街中の広場でライブ映像を投影するわ。そうして、全ての街で歌を響かせられるわ。私達のエネルギーは全ての街で循環していき、街に設置した増幅装置で世界中に広がるわ。それらが怪物達のエネルギーになるのよ」
「一つ質問があるんだけど、観客有りでライブする必要はあるのかしら? 歌のエネルギーなら普通に歌っていれば良いと思うのだけど」
「ライブをする事でそれを見るために人が集まるでしょう? 歌のエネルギーが溢れている以上、怪物はそこを壊さないように移動するわ。つまり、人々の安全が確保出来るという事なのよ」
「なるほど。そういう事ね」
シェリアさんの疑問は当然のものだったけど、アルタさんの返答がこの世界で生きる人の考えだったので、私達もすぐに納得出来た。
「色々な街で歌っていたのは、こういう時の集客にも繋がるからだったの。私とあなた達の名前で集めれば、十分に集められると思うわ。ただ、あなた達の歌のエネルギーは、まだ強く出来るわ。ライブは一ヶ月後にするわ。それまでにバンドとしての練度を上げておきなさい。私は会場の準備をしておくわ」
「あ、は、はい……」
私が返事をすると、アルタさんは私の頬に手を添えてきた。
「あなた達が来てくれたこの時を無駄にはしないわ。この奇跡の時代でケリをつける。あなたと出会えて幸運だったわ。これからよろしくね」
「あ、は、はい……」
アルタさんは面布の裏で微笑むと、私達の視界から消えていった。いつも通り神出鬼没だ。そして、私はアルタさんの一つの台詞が胸に引っ掛かっていた。
「出会えて幸運……」
これはアルタさんが発したから引っ掛かっているのではなく、もっと別の事に引っ掛かっていた。
そんな私の腕をフォルティさんが取って腕を組んでくる。何かムッとしているみたいだけど、一体どうしたんだろうか。
「それにしても、一気にストーリーが進むわね。あの話だと怪物達を元の宇宙に帰した後も大きな変化が起きそうだから、終わりじゃないみたいだけど」
「まぁ、そこまでのストーリーだったら、さすがにもっと多くの人が関わるようになるだろうしね。さてと、私達の演奏も大きく関わってくるみたいだし、曲の練習はしないとね。一ヶ月後って話だから、まだ時間はあるし皆で頑張ろう!」
「お~!!」
フォルティさんが片手を突き上げて応えていた。私も小さく片手を上げてみる。
「それと幹原さんにバンドとしてデビューするって話も伝えようか。このライブに向けての練習で大分仕上がると思うから」
「確かに……夏休みから活動するって話になりそうだし、それも良いかもしれないですね」
「そうね。その方が練習にもより身が入りそうだわ」
「あ、わ、私も……で、でも……れ、連絡を任せて良いんですか……?」
「勿論。ある程度都合が良くなるように調整して貰うからね。現実での活動よりもバーチャル的な活動を中心にやらせて貰おうかなってシェリアと話していたの」
「ば、バーチャル……?」
バーチャルでの活動と言えば、お兄ちゃんがやっているという話を聞いている。だから、活動自体に疑問はないけど、その形式で活動をするのは何故かというのは疑問に思う。
「うん。そっちの方が集客出来るかなって。ステラミルクとしての活動はパラユニから始めたからね。こういう形の方が最初はウケが良いと思う。そこから現実にも出て行く。そういう方針かな。リラちゃんはどう思う?」
「あ、え、えっと……そ、それで良いと思います……い、いきなり現実よりも……き、緊張しないと思うので……」
「あっ! アバターの衣装とか担当したいです」
「そこら辺もまとめられそうならしておくね。取り敢えず、ちゃんと活動出来るような形にしようと思うから、何か要望があったら言ってね」
「は、はい……」
「はい!」
「それじゃあ、街に戻るわよ。リラの黒帝ももう強化が終わってるでしょ。取りに行っちゃいなさい」
「あ、は、はい……」
色々な事が決まってきたけど、ひとまずは街に戻って黒帝を受け取る事にする。黒帝分の費用は稼いでいるので普通に受け取れる。強化された黒帝は、大分性能が良くなっていた。
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黒帝:ノイズ攻撃 攻防上昇(中)速度上昇(中)攻撃低下(中)防御低下(大)速度低下(中)行動停止(弱) 魔力+50
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デバフ大きく追加されたから、そっち方面での使い勝手が良いかな。攻撃手段にもなるしね。
ここからの私達の行動は単純だった。現実での勉強とかはしっかりとしながらも、ライブのために練習をしていく。加えて、天川さんが幹原さんとの話し合いをしてくれて、ステラミルクとして事務所に所属する事が決まる。
そのための顔合わせなどもしていて、お母さんも賛成してくれたから、大きく前進した。鷲衣さんのお母さんも許可してくれたから、本格的に活動も視野に入った。
一応、最初はバーチャルでの活動という事に決まって、私達がオリジナルで作詞作曲している曲のMVの作成などをしていきながら知名度を上げるという事になった。MVに関しては、織原さんが作ってくれるそう。そういうのを作る事も出来るみたい。私も出来なくはないと思うのだけど、まずは織原さんがという話なった。
そんな感じにはなっているけど、学業優先という方針を天川さんが出してくれたので、学業の妨げにならない程度の活動から入るという事になっていた。
鷲衣さんは、しっかりと衣装担当になれたので、鷲衣さんのお母さんに頼んでバーチャルでの衣装の作り方なども学んでいる。そんな鷲衣さんを見守りながら、私は作曲と作詞に勤しんだ。




