パラレルユニバース
楽器を仕舞った私達はメインコントロールルームに向かった。
「さてさて、これだけの事をさせたんだから、ここから得られる情報は良いものなんでしょうね」
「まだ何かあるかもしれないから、私の後ろから出ないようにね」
「は~い」
フォルティさんからガーディアンロイドとかいうモンスターがいるという事を聞いた私達は、アルシャさんが先頭になって、私を囲むようにして移動する事になった。
一応、少しは対策を取るためにステータスは更新している。
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リラ Lv34 職業:ストリートシンガー
HP:300/300
MP:265/265
力:85
防御:405
速度:185
器用:5
魔力:800
運:5
SP:0
スキル:【格闘術Lv6】【歌唱Lv100】【付加歌唱術Lv12】【歌唱治癒Lv8】【神聖歌唱Lv65】【演奏Lv100】【神聖奏Lv100】【鼓舞Lv21】【浄化Lv45】【整理整頓Lv18】【暗視Lv21】
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SPは、速度に全部振り分けた。さっきの戦いで速度は重要だと思ったから。それと【格闘術】をしっかりと手に入れている。これのおかげで格闘に補正が入るようになった。戦闘もやりやすくなる。
雷冥を装備して、しっかりと警戒しながらメインコントロールルームに入っていく。
全体的に照明がなく、モニターの明かりだけが部屋を照らしている。中央には大きなホログラムが投影されており、ホログラムは球体……いや、この星の形になっているのかな。
「あら? 誰かと思ったら、あなた達だったのね」
「え……あ、アルタさん……?」
声がした方を見ると、暗闇の中からアルタさんが出て来た。アルシャさんとシェリアさんも驚いている。
「アルタさん、どうしてここに?」
「どうしてと言われると、少し返答に困るわね。星を元に戻すためってところになるかしら」
「星を?」
アルタさんがいる理由を聞いたフォルティさんも、この答えには困惑を見せていた。いや、フォルティさんだけじゃない。私達も全員困惑していた。
「本当はもう少し後に話すつもりだったのだけど、ここまで来たのなら全部話してしまった方が早いわね。正直、ここまで来たのは予想外だわ」
アルタさんはそう言いながら、中央のホログラムを映し出しているテーブルを操作した。すると、ホログラムにオレンジ色の球体が現れる。それはこの星の中心。核となる場所にあった。
「私とベガ……図書館の司書は、この星を救うために行動しているわ。かれこれ何年になるかしらね。百以降は数えもしていないから、少しあやふやだわ。まぁ、それは置いておいて。ここに来たという事は、ある程度この星の事情も知っているわね?」
「か、怪物……」
私の呟きにアルタさんが頷く。
「正解よ。この星には多くの怪物達がいる。地上を闊歩しているモンスターとは別にね。その怪物達は地下に浸透すると、この星の核に入り込んで休眠状態になったの。このオレンジの場所ね。怪物は、この星の命を吸っているの。その理由は、元の居場所に戻るため。そのエネルギーを蓄えるのよ」
「ひ、人を食べていたのは……?」
「そのエネルギー集めの一部でしょうね。でも、より良いエネルギーを見つけた。幸い、この星のエネルギーは一瞬で枯れる程のものじゃなく、何百年と耐えているわ。でも、それ以上にエネルギーになるものが分かったの。それが私達の歌」
「う、歌……?」
このゲームには歌が関わっているという事は分かっていたけど、本当に重要なポジションにあるみたいだ。
「歌のエネルギーは、あの怪物達にとって良いエネルギーになるらしいの。だから、歌のある場所には近づかない。それをこの施設を作った人達は歌が怪物の弱点だと考えて歌による開閉システムとかを作ったみたいなのだけどね」
この施設が歌で開く理由が、これで確定した。でも、作った人の考えと現実は少しズレていたみたいだ。
「そこで私とベガは、一つの計画を建てたの。歌による怪物達の帰郷。私が色々な場所で歌ってエネルギーを送り、星の延命を図りつつ、ベガが歌のエネルギーを作れるような適任者を探す。それがあなた」
アルタさんは私を指差す。
「でも、リラさんの他にも適任者はいたんじゃ?」
そこにフォルティさんが疑問をぶつけた。私が選ばれたというのは事実だとして、私以外の適任者がいたはずという考えは当然だ。だって、サービス開始から大分経っているから。
「適任者の選定には、図書館に置いてあるとある物が使われているのよ」
「あ、ハープ……」
「正解よ」
あの図書館にある異質なものと言えば、最上階にあるハープだ。でも、もう一つ気になる事があった。
「あ、あの……あ、あそこにあった絵は……な、何かあるんですか……?」
私の目を引いたあの絵の存在が気になっていた。目を引くという事は、それだけ何か意味があると思うから。
「あれは私を描いたものね。多少特殊な素材で作ったみたいだから、少し気を引く物にはなったかもしれないわね」
「そ、そうなんですね……」
ただ私の好みに近いものだったという感じかな。特殊なもので作ったと言っているから、これも選定の一つになっていたという可能性は十分にあるけど。
「あのハープが適任者を選定するのに使われているのだけど、あれを気にする人はそうそういないのよね。そもそも最上階に上がっても本に意識が向くから。ただの飾りにしか思わないのよ。そういう人は音楽に傾倒していないと判断しているのよね。その点あなたは、ずっとハープを気にしていたってベガから聞いているわ。それが選定された理由ね」
確かにハープは何であるんだろうとかどんな音色なんだろうとか思っていたから、ずっと気にしてはいた。音楽に興味のない人は、そもそもハープそのものを気にしないというのも分かる。
「そこで楽譜を渡してどうするかによって、勧誘するかどうかを決めるわ。あなたはすぐにライブをした。そして、その歌声から発せられるエネルギーは相当なものだった。完璧に歌えていなかったら、あそこまでのエネルギーは生まれていないし、あなた達の音楽はそのエネルギーを増幅している。今、この時しかないのよ」
アルタさんの声には少しの焦りのようなものも感じた。歌の力で延命していると言っても、やっぱり星の命にも限界が近づいているという感じなのかもしれない。
アルタさんが勧誘しに来た時、私はフォルティさんと活動を始めていた。そこの演奏を見て、エネルギーの高まりを確認した事で、本格的に勧誘を決めたという感じなのかな。
「それで、怪物達の帰郷ってどういう事なのか教えてもらってもいいかしら? 私達はあの怪物を詳しくは知らないし、討ち倒す方向かと思っていたのだけど」
シェリアさんが話を本題に引き戻す。確かに、帰郷という方針になっている理由は知りたい。それが怪物達の行動原理という事もあるみたいだけど、それなら倒す方向の方がもっと安全を確保出来るのではとも考えてしまう。
「無理よ。ここの情報も廃れているから、その勘違いも無理はないわね。怪物は基本不死身。こちらの攻撃を受けても、即座に再生するわ。つまり、怪物を殺すには、再生よりも遙かに早く攻撃する必要があるの。それに怪物から放たれる匂いは、私達の精神を強く蝕むわ。私達ユートモノで生まれたユートルナの住人は、その辺りに耐性を強く持つように改造されているけれど、あなた達、別宇宙の住人はそうでもないでしょう? この場所だって、複数人で精神的な安定を持たなければ、そのうち狂うわ」
アルタさんの話は、すぐに納得出来た。何故なら、私が実際にそういう目に遭っているからだ。そこがすぐに納得出来たから、私達は別の事が気になった。
「別宇宙ですか?」
アルシャさんが私達の内心を代弁してくれる。
「ええ。この宇宙はいくつもの宇宙が重なり合って出来ているのよ。層構造というよりも綱を作る感じに近いかしら。複雑に重なって編み込まれた宇宙の中の一つがここね。あなた達は他宇宙からこちらに来ている別宇宙の住人。そっちはそういう認識はなかったみたいね。恐らく、同じ宇宙を渡っていると思い込んでいるのだと思うけど、実際には全く別の宇宙なのよ」
若干複雑な話のようにも感じるけど、単純に異世界とか並行世界とかの話かな。
「宇宙から飛来してきたと思われているあの怪物もその別宇宙からこちらに来た存在よ。だから、宇宙を越えるためのエネルギーが必要なのよ。私達はこの別宇宙の束を事をこう呼んでいるわ」
そう言われた時、私はアルタさんの言葉と同時に脳裏に同じ名前が浮かんだ。
「パラレルユニバースと」




