突破するために必要なのはやっぱりこれ
唐突に現れたドローンを蹴り飛ばして、浮いた足場に着地しつつ、怒轟の振動波でガーディアンタンクに少しずつダメージを与えていく。
まだシェリアさん達の拘束は解けていない。
「このっ! しつこい拘束ね!!」
「何か特殊な条件があるのかもね。リラちゃん! 何か変わったものない!?」
「変わったもの……さ、探してみます……!」
ドローンと小型ミサイルに気を遣いながら、浮遊する足場を渡り歩きつつ周囲を見回す。しかも、【付加歌唱術】も併用しながらだから、色々と割くべきものが多い。それでもやらないといけないから頑張る。
でも、ガーディアンタンクの近くには何もない。という事は、ガーディアンタンクは関係ない。そもそもドローンからやられているのだから、ドローンの排出口が怪しくなる。
天井に眼を向けると、ドローンが出て来る場所が常に開いているという事に気付いた。
(もしかして、あそこをどうにかしろって話なのかな……足場を利用すれば、行けなくはないけど……)
振動波で爆発しなかったドローンを蹴り飛ばしながら、最短ルートを確認する。後ろから追ってくる小型ミサイルもあるので、常に移動を強いられているから、最短ルートは都度変わる。
でも、ある程度絞る事は出来た。私は止まる事なくその道を進んでいき、正面をドローンが邪魔してきたら、振動粉砕で砕く。
ドローンの排出口に向かっているので、ドローンの数は必然的に増えていく。振動粉砕で倒せる数を超えた場合、正面を邪魔するドローンは残ってしまう。
だから、そのドローンを蹴り飛ばしながら進む。確認は出来ていないけど、【格闘術】のスキルが手に入っていると思う。そのくらい蹴りの一撃が強くなっている。
おかげで、ドローンを蹴散らしやすくなっている。排出口近くに来た私は全力で振動粉砕を続ける。ドローンが排出される端から破壊される。その間に何かを探そうとしたら、背後から小型ミサイルが飛んできていた。
それを見た私は一つの可能性を思い付く。
(多少賭けになるけど……)
振動粉砕をやめた私は怒轟から雷冥に持ち替えて、速度上昇(大)の演奏と【付加歌唱術】での速度上昇のバフを重ねる。そして、ドローンの排出口を掠めるようにして壁に向かって跳躍する。
小型ミサイルは私を追ってくる。そして、私を追いきれなかった小型ミサイルが排出口に命中して内部のドローン達を巻き込み大きく爆発続く小型ミサイルにも連鎖して大爆発となり、私の背中を押す。
ただし、私も速度を上昇させての幅跳びだったので背中を爆風に押されるだけで済んでいる。
「リラ!」
シェリアさんの声が聞こえたけど、返事する余裕はない。猛スピードで迫ってくる壁に対して、私は足を向ける。接着と同時に屈伸して衝撃を流し、思いっきり反発して少し離れた浮いている足場に向かって跳ぶ。
その足場から次の足場へと次々にジャンプしていく事で段々と勢いを削いでいき、拘束が外れたシェリアさんとアルシャさんの傍に着地した。シェリアさんは唖然とした表情と共にジト目を私に向けていた。
「……あんたオリンピック選手にでもなりなさい」
「む、むむむ無理です……」
「ほら、リラちゃんで遊んでないで。ドローンは止まったみたいだけど、まだガーディアンタンクは生きてるでしょ?」
「それもそうね。リラ、あの上に何か弱点はなかったかしら?」
「え、えっと……特には……」
そう言ってから、頭の中に一つだけ心当たりが出て来た。
「わ、私の振動波や振動粉砕の効果対象には……な、ならなかったですけど……じぇ、ジェネレーターの排気口みたいなのが……う、後ろの方にありました……」
「排気口……矢なら攻撃が届くかしら。今なら足場も」
シェリアさんがそう言って浮いている足場を見たのと同時に、またアナウンスのような音声が流れる。
『反重力装置停止』
『超電磁砲の使用を許可』
『モード変更』
浮いていた足場が地面に戻っていき、ガーディアンタンクがその形を変えていく。戦車という形から巨大な砲塔への変形だ。
「今なんて言った?」
「超電磁砲……レールガンかな」
「この狭さでそんなものを使う!?」
「まぁ、衝撃は満遍なく受ける事になるかな」
「ひ、避難する場所は……」
「ないかな。フォルティちゃんの頑張りに期待!」
「フォルティ! 早くしなさい!!」
変形の余波で風圧やら衝撃やらが飛んでくるので、私とシェリアさんはアルシャさんの後ろに隠れて、私は【神聖奏】で回復していく。【神聖歌唱】と【歌唱治癒】が必要ないくらいにはダメージは小さいけど、ノックバックなどが酷すぎて、私達は攻撃範囲に行けないし、シェリアさんも弓を飛ばしたら自分に落ちてくるくらいだ。
逃げ道もないから、本当にフォルティさん頼みになっている。私達はフォルティさんを信じて待つしかなかった。
ガーディアンタンクの変形が完了して、今度は電力が供給される。漏電しているのか周囲に電撃が散っていく。
もう無理かと思ったその瞬間、再びアナウンスのような音声が響く。
『攻撃行動停止』
『新規コード登録待機中』
攻撃は止まったけど、今度はよく分からない状態になったみたい。私達はどうしたものかとなっていると、今度はアナウンスのように拡声されるフォルティさんの声が響いてきた。
『あ~……これ聞こえてるの? こっちじゃ確認出来ないんだけど、届いている事を祈って伝えるね。リラさん! 歌って! 歌は何でも良いよ! それが新規コードになるから! それで止まるよ!』
フォルティさんは繰り返して同じ事を言う。
その言葉を理解した私は即座にアンプとエレキギター、マイク、スピーカーを出す。雷冥でも良いけど、普通の楽器であるこっちの方が音が良い。
私の動きに呼応するかのように、シェリアさんがベースを、アルシャさんがドラムを出した。
「曲は?」
「え、えっと、『The Parallel Universe』で……」
歌う曲は、『The Parallel Universe』。この世界で最初に歌った曲だ。
「分かったわ。フォルティがいないのは不満が残るけれど、やるからには全力でやるわよ」
「は、はい……!」
「それじゃあ、カウント行くよ」
アルシャさんがスティックを鳴らしてカウントし、私達の歌が始まる。そうして一曲歌いきって、私達は変形したガーディアンタンクを見る。
「だ、大丈夫でしょうか……?」
「まぁ、フォルティが言っていたから問題はないと思うけれど」
「アナウンス待ちかな」
アルシャさんがそう言った瞬間に、アナウンスが鳴り響く。
『新規コードを登録』
『防衛機構停止』
『メインコントロールルームへの通行を許可』
床が開いてガーディアンタンクが沈んでいく。そして、その奥にある扉が開いた。
「大丈夫でしたか!?」
フォルティさんが向かった扉も開いたようで、フォルティさんが駆け寄って来た。私の身体を掴んで怪我がないかを確かめてくれるけど、ゲーム内だからダメージエフェクトが飛ぶだけで怪我は残らない。
「大丈夫よ。リラが大活躍だったんだから」
「えっ!? それは見たかったですね……」
「で、でも……フォルティさんも活躍で助かったよ……あ、ありがとうね……」
「どういたしまして」
突発的なボス戦であったガーディアンタンクは、こうして退ける事が出来た。アルシャさんが守ってくれなかったら危なかったし、シェリアさんがミサイルポッドとかを破壊してくれなかったら危なかったし、フォルティさんがガーディアンタンクを止める手段を見つけてくれなかったら、確実に終わっていた。
私一人だったら、絶対に倒せなかった。皆が揃っていたからこその勝利だ。




