怪物の落ちたクレーターには何がある?
お姉ちゃん達のライブを見に行った翌日。私と鷲衣さんは、ワンオンにログインしていた。天川さんと織原さんは、バイトがあるので今日は一緒にログインはできない。
屋敷から出た私とフォルティさんは、ユートイオータに転移した。ユートイオータは、天幕が多い。ここの土地を研究するために地方から来た人達が多いという設定らしい。
「一応、色々とお店を見て回る?」
「う、うん……な、何があるか分からないから……」
フォルティさんと一緒にお店を見て回る。何かしらの掘り出し物とかがあるかもしれないから。
「何と言うか……普通の品揃えだね」
「う、うん……」
フォルティさんの言う通り、本当に普通の品揃えで特に名産品があるような感じじゃない。回復用の薬とかがいっぱい置かれているけど、それだけだ。
「う~ん……本当に調査拠点ってだけの街みたい。でも、調査拠点だからこそ、何かが分かるかもしれないね」
「こ、この前の研究施設みたいに……?」
「うん。ちょっと調べて回ろうか」
「う、うん……」
フォルティさんと一緒にユートイオータを歩き回って情報を集めに向かう。まぁ、基本的にはフォルティさんが情報を集める事になるのだけど。私、知らない人と話すの無理だし。
NPCから話を聞いていき、判明したのは、この近くにクレーターがあるって事くらいで、他に何かがあるわけじゃなかった。
「クレーターの場所はリラさんが調べてくれた地図でわかってるし、収穫はなかったね」
「う、うん……く、クレーターの場所に……行ってみる……?」
「う~ん……まぁ、クレーターの場所くらいなら大丈夫かな。あの研究施設は、皆がいた方が安心だろうし」
フォルティさんの言う通り、あの研究施設は皆がいた方が安心出来る。フォルティさんがいるだけでもかなり安心感はあるけど、あの空間は正直二人だけでも怖い気がするから、アルシャさんとシェリアさんが一緒にいる時が一番良い。
でも、クレーターの場所なら、まだマシかもしれない。なので、フォルティさんと一緒に向かう事になった。
「リラさんの武器も新しく追加したいね」
フォルティさんは、私が持っている黒帝を見てそう言う。その理由は、黒帝で演奏しながらの歌は難しいからだ。
「お、お金はいっぱいあるから……良い魔法楽器が買えそう……」
「ギターとかが良いよね。でも、打楽器も良さそう。シンバルとかも使えそうだよね」
「こ、攻撃に偏りそうだけど……」
「それで良いと思う。リラさんは色々な楽器を使い分ける戦闘スタイルが、一番良いと思うから。ちょっと大変だけど」
「う、うん……頑張る……」
今度、魔法楽器が売っているお店に行って色々と見てこよう。今の私に足りないものは、サポート能力の種類と攻撃能力。これらを身に着ければ、もっと皆の役に立てる。このゲームで私が出来る事はそれくらいだから。
フォルティさんに速度上昇(中)のバフを付加して、周囲にいるモンスターを次々に倒して貰う。攻撃力は十分だから、殲滅速度を重視するためにそうしているのだけど、フォルティさんの動きは本当に凄かった。
自分の速度に翻弄される事なく、しっかりと制御出来ているので、本当に私のもとにモンスターが来る事はなかった。
「おっ、リラさん、あそこにクレーターがあるよ」
「う、うん……地図と一致するから合ってると思う……」
「モンスターも周囲から消えたみたいだし調べてみよう」
「う、うん……」
フォルティさんと一緒にクレーターの端まで来た。クレーターの端には少し盛り上がっているので、そこに登らないとクレーターの中を見る事は出来ない。幸い断崖絶壁となっている訳では無いので、普通に登る事が出来る。
「リラさんって……本当に運動神経が良いんだね」
「え?」
フォルティさんよりも早くクレーターの端に登っていたからか、そんな事を言われてしまった。何と言って良いか分からなくなったので、ひとまずフォルティさんに手を伸ばして、引き上げてあげる。
「わっ……凄い。こういうの初めて見たよ」
「わ、私も……」
初めて見るクレーターに、私もフォルティさんも圧倒されていた。
「あの中央に怪物が落ちたんだよね?」
「う、うん……」
あのクレーターの中央に怪物が飛来した。でも、その怪物の痕跡はどこにもない。
「怪物って小さい?」
「ど、どうだろう……? こ、ここに落ちたのはどんなのか分からないから……で、でも……多分大きいと思う……」
「なら足跡とかがあっても良い気がするけど……大分時間が経ったからかな?」
「た、多分……?」
「ひとまず降りてみようか。掲示板とか攻略サイトとか調べてみたけど、この辺りは調べても何も出てこなかったんだよね。ただの地形の一つとしてしか扱われていなかったの」
「そ、そうなんだ……」
クレーターだから、何かがあると調べた人がいるとは思うけど、特に特筆する程のものがなかったらしい。だから、調べる意味があるかは分からないけど、私達は他のプレイヤーが知らない事を知っている。
そこから気付く何かがあるかもしれない。なので、私とフォルティさんもクレーターの中に降りる事にした。
縁から中央に滑り落ちるようにして、どんどんと降りていく。
「これ……登れるのかな?」
「えっ? ど、どうだろう……」
今は板無しのスノーボードのように滑り落ちているので、この斜面を普通に登る事が出来るのかは分からない。
「の、登れないとしたら、攻略情報に書いてないかな……?」
「それもそっか」
登って戻れると信じて、私達はクレーターの中央にやって来た。
「何かあれば良いけど……ん? これってガラスかな?」
「た、多分……?」
「おっ、アイテム名がある。隕硝子って事は、隕石の熱で出来たガラスって意味のアイテムかな。普通だね」
「そ、そうだね……」
隕石が飛来して落ちた場所には、その高熱で生じたガラスがあるという話は聞いた事がある。ただ怪物も熱を纏って落ちてきているので、これがあってもおかしくはない。怪物由来の痕跡というには、ちょっと弱い。
目立つものは、そのガラスくらいしかないけど、私とフォルティさんはしっかりと調べてみる事にした。何か見つかると良いな。




