ライブ前の顔合わせ
それから皆に集まれはするけど、平日なので探索をするような時間はなく、基本的に夜にライブをするという日々が続いた。
そして、次の土曜日。私はこの前の買い物で買った服を着て、鷲衣さんにお化粧をして貰う。学校に行く時にもお化粧はして貰っていたので、違和感はそこまでない。そんなに濃いお化粧じゃないからっていうのもあるかな。
髪型も鷲衣さんが調整してくれて、普段の私じゃないように思える。いや、確実に普段の私ではないのだけど。
「あら、大人っぽいじゃない。七美によろしくね」
「は~い」
鞄も持って準備を万端にし、鷲衣さんと一緒に家を出る。鷲衣さんは、今日もバッチリと決めている。自分の魅せ方が上手い。ライブだから少し動きやすい格好でスキニーパンツになっている。
私達は電車を乗り継いでライブ会場まで向かう。会場が開くのは大分先の時間だけど、その前に中に入る事が出来るので、問題はない。会場前で鷲衣さんと話しながら待っていると、正面から青い髪のちょっとパンクチックな女性とシックな感じでちょっとお嬢様感が漂う女性が歩いてきていた。
その姿は、前に写真で見せて貰ったアルシャさんとシェリアさんそのものだった。という事は、あの二人は天川鷲利さんと織原琴乃さんという事になる。
「伊織と天花ね? というか、伊織のイメージが写真と違うじゃない。そんな格好も出来るのね」
「あ、え、えっと……ご、ごめんなさい……」
「綺麗だって褒めてんのよ。背筋伸ばしなさい。その格好ならその方が映えるわよ」
「は、はい……」
言われた通り背筋を伸ばす。一番背が高いので、皆を見下ろす形になる。織原さんは結構小さい方みたいで、私とは二十センチくらいの差があった。
「…………やっぱり猫背で良いわ」
「え、え?」
さっきと全く違う話になっているので、困惑していると天川さんが笑っていた。
「琴乃は、年下の伊織ちゃんよりもあらゆる身体的特徴が劣っているから、それが若干強調される立ち姿をされてショックを受けてるだけだよ」
「ちょっと鷲利!!」
いつも通りの二人のやり取りを見て、ちょっとだけ安心する。ちゃんとアルシャさんとシェリアさんと合流できたって気がするから。
「全く……それにしても天花は想像通りね。もう少しギャルっぽいかとは思ったけど」
「いやいや、化粧好きなだけで、ギャルではないですから。私としては実際に鷲利さんを見ると、思ったよりもパンクで驚きましたけど」
「そうかな? 耳くらいにしかピアスは開けてないし、そこまでじゃないと思うけど」
「服装がパンクっぽいでしょ。革ジャンだし」
革ジャンで軽くおへそがチラリとする天川さんのファッションはパンクっぽい感じはする。シックでお嬢様っぽい織原さんと並ぶと全然趣味が違うなと思うくらいには違う。
「あ、あの……そ、そろそろ移動を……」
「ああ、そうね。これからサマトラの楽屋に行くんだものね……緊張するわ……」
サマトラのファンの鷲衣さんと織原さんがかなり緊張していた。
(すぐに緊張じゃなくて唖然になるんだろうけど……イメージと違うからって幻滅したりしないかな)
若干心配になりながら、お姉ちゃんに電話を掛ける。
「お姉ちゃん。うん。もう着いたよ。皆、揃ってるよ。うん。分かった」
「この子、家族相手だと普通に喋るのよね」
「家族相手だからじゃない?」
「まぁ、そうだけど。何と言うか普段のゲームでの伊織を見ていると違和感が強いのよね」
「家族同然の付き合いをしていたら普通に喋ってくれるかもよ?」
「天花を見てみなさいよ。それも時間掛かるでしょう」
「だから時間を掛ければ良いって事」
「まぁ、そうね」
私が電話をしている間に、天川さんと織原さんが私の喋り方に関して指摘していた。前から少しは知っていたと思うけど、改めて家族との会話がスムーズに行われているのを見たら、そんな風に思うのも無理はないのかな。
私が先導していく形で、お姉ちゃんとの合流場所に向かう。真っ直ぐ歩いて行くと、お姉ちゃんが待っていた。
「お姉ちゃん」
「久しぶり、伊織。それと初めまして。琴坂七美です。いつも妹がお世話になっています。今日は楽しんでいってください」
外行きスマイルでお姉ちゃんが自己紹介していた。
「鷲衣天花です。お部屋を使わせて貰っています。その節はお世話になりました」
「お、織原琴乃です。こちらの方こそ妹さんの歌に助けられてます。今日はご招待いただき、ありがとうございます」
「天川鷲利です。この度はご招待いただき、ありがとうございます。会場では、私達も一緒にいますのでご安心ください」
鷲衣さんは部屋を使わせて貰っている事に感謝して、織原さんは若干緊張しながら挨拶し、天川さんは会場で私と鷲衣さんの傍にいるからお姉ちゃんは心配せずにライブをして欲しいと伝えていた。
さすがにお姉ちゃんもそこまで心配はしていないと思うけど。
「良い人達ね。というか、伊織、化粧してる? 服装もいつもの母さんセレクトじゃないみたいだし……」
お姉ちゃんは私の顔をジロジロと見てから、全身をしっかりと見てそう言った。さすがに私やお母さんが選んだものではないと分かるらしい。
「うん。鷲衣さんがやってくれたの。凄いでしょ?」
「うん……いつもの伊織じゃないみたい。ありがとうね」
「あ、いえ、私も楽しくてやっているので」
お姉ちゃんは私を綺麗にしてくれた鷲衣さんにお礼を言う。お礼を言われた鷲衣さんの方は少し照れながら笑っていた。
「ただ綺麗になっただけに心配ね。予め言っておくけど、これから会うサマトラのメンバーはテレビとかそういうので見るのとは全く違うから、それだけは承知していてね」
「まぁ、ある意味プライベートな時間ですから、特に気にしません」
織原さんが自信満々にそう言う。テレビとかとプライベートが全然違うという事はあり得る事なので、織原さんも想定済みなのだと思う。
「まぁ、そうだと良いけど」




