新しい防具は奇跡の象徴?
鷲衣さんへの恋心を自覚した私は、家に帰った後、特に取り乱す事もなくいつも通りに過ごす事が出来た。何故なら、恋心という感情の名前が分かったというだけで、元々持っていた感情だったから。
その日の夜。私はパラユニ内の私のアバターに届いたメッセージを見て、パラユニにログインした。フォルティさんが付き添いで来てくれる。付き添いが必要になるもの。つまり、防具が完成したから取りに行くという事だ。
「こ、ここ、こんばんわ……」
「いらっしゃいませ。リラさんの防具ですが、こちらです」
スピカさんから防具を受け取り金額を支払う。しっかりと既定の金額を支払ったところで、私は防具を着替える。私の防具は、まるで演奏会のドレスのようだった。でも、動きやすさを重視してくれている。
腰はパンツタイプのもの。少しぴっちりとしているけど、足の動きに支障はない。
靴はブーツタイプ。ヒールもチャンキーヒールだからバランスも良い。爪先周辺には鋭く尖ったスパイクのようなものがある。でもブーツに馴染んでいて、あまり目立たない。
胴体の装備は、燕尾服のように後ろ側だけ伸びている。スカートの用にも見えるからドレスっぽい。前の方は短いから足を上げるのにじゃまにならない。肩周りはゆとりがあり動かしやすい。
頭部は、後頭部に着けるタイプの髪飾り。青い宝石が付いた銀色の髪飾りだ。分かりにくいけど、牙のようなものも付いている。
私が渡した素材は、思ったよりも大胆に使われているけど、それがそれだと分からないように工夫されている。
全体の色は白と水色で統一されていて、意匠には薔薇が選ばれていて、全体的に細かい宝石が付いている。それがキラキラと光を反射する。
ヴァイオリンを出して、音を鳴らさないようにして弓を動かし問題がないことを確認する。。
「おぉ……本当にヴァイオリンを持っているんですね。ちょっと驚きました。売っているとは思いませんでした」
「意外と売っているものですよ。リラさん、どう?」
「う、うん……い、良いよ……」
演奏に支障はなく、普通に歩きやすい。現実で外を歩いていたら目立つけど、ゲーム内だから特に珍しい服装でもない。
「これ……ライブにも使えるね。クラシックのだけど」
「う、うん……」
装備の名前は水薔薇の披露服。
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水薔薇の披露服:水で構築される薔薇は、通常ではあり得ない存在。あり得ないを可能とするは奇跡の力。布全体に馴染んだ骨の粉末は魔力を伝達する力となる。
一部位辺り:MP+30 力+20 防御+100 魔力+120
特殊効果:バフ効果アップ(中) 魔法攻撃力アップ(小)
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リラ Lv24 職業:ストリートシンガー
HP:170/170
MP:200/200
力:85
防御:405
速度:65
器用:5
魔力:635
運:5
SP:100
スキル:【歌唱Lv66】【神聖歌唱Lv12】【演奏Lv89】【神聖奏Lv14】【浄化Lv34】【整理整頓Lv18】
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レベルが上昇したのと防具のステータス上昇による効果もあって、少しは見られるステータスになってきた。問題は、器用がなくなったのと運が相変わらずないという事くらい。
SPを割り振ってバランスを整えようかとも考えたけど、正直そこまでしてバランスを取る必要があるのかは謎なので、SPは割り振っていない。
この私のステータスと装備の効果をフォルティさんにも共有する。
「おお……値段に対して効果が良い。素材持ち込みは大きいね」
「う、うん……」
「SPは割り振らないの? こう言うのもなんだけど、大分方向性が固まってきたから、割り振らないと勿体ないよ?」
「そ、そうなんだけど……そ、装備で増やせるパラメーターが大きいから……ど、どこまで割り振ろうかなって……」
「ああ……リラさんは魔力参照攻撃とバフ、デバフを使うから、魔力一択ではあるんだけど、固定パーティーで行動しているわけでもないし、速度でも良いかな」
魔力を上げて攻撃やサポートの能力を向上させるか、速度を上げて回避性能を上げるか。この二択は私の考えと同じだ。
ただフォルティさんの言う通り、私は固定パーティーで行動しているわけじゃない。パーティーの所属者を固定して連携をしやすくしたりしてレベル上げなどを行うのがオンラインゲームでは、有りがちなことだという。これはキューちゃんも言っていた。
ステラミルクが固定になるのではとも思うけど、そもそもライブばかりでレベル上げなどはそれぞれでやっているし、一緒に進めている訳でもない。
時々一緒に冒険しようという話にはなっているけど、それでは固定と言えないだろう。
そうなると、私が優先するべきは移動速度と回避性能に関わる速度のパラメーターかなとも思う。少なくとも私にとって、比重はこっちの方が上になる。
「も、もうちょっと考えてみる……」
「そうだね。リラさんが必要だと思うものを上げるのが一番だもん」
そうしてステータスの画面を閉じると、スピカさんが手を鳴らした。いきなりだったので、肩が跳ね上がる。
「あ、ごめんなさい。意識を向けて欲しかっただけです。初めて装備を購入していただいたという事で、ちょっと説明させてください」
「は、はい……」
「まず防具の修繕に関してです。防具にも耐久値があります。装備欄などから確認出来ますが、基本的に装備しているだけでは減らず、攻撃を受ける事で削られていきます。耐久値がゼロになった場合は破損という状態になります。こちらは装備出来なくなり、自動で初期装備になります。因みに初期装備には破損状態はありません」
道理でずっと使えると思った。まぁ、そもそもダメージ自体全然受けていないのだけど。黒帝は演奏がそのまま耐久値減少に繋がる。ノイズ攻撃の場合はバフよりも耐久値が減少する。
だから、防具よりも黒帝の耐久値の方ばかり気にしていた。
「破損状態になれば、こちらでも直すのに費用が多く掛かります。通常の修繕が100マニーだと仮定したら10万マニーは掛かると思って下さい。そのくらい時間と修繕用の素材が必要になりますので。結果的に定期メンテナンスの方が安く済むと思います」
完全な破損でも一応修繕する事はできるらしい。でも、そのための素材費と時間で千倍の違いが生まれるとの事。破損状態からとなると、本当に大変なのだろうと予想出来る。
「なので、これからは防具の耐久値も気にしていてくださいね」
「は、は、はい……あ、ありがとうございました……」
「はい。またのお越しをお待ちしております」
こうして防具の新調が終わった。防具も新しくなった事だし、また次の街へと向かうのも有りかも。




