仲良しになるため
髪の色と爪の色をフォルティさんに調整して貰って、お揃いになったところで、大分良い時間になっていた。そろそろ夕飯を作らないといけないので、二人揃ってログアウトする。
そして、二人夕飯にラーメンと炒飯を作って食べる。そして二人で洗い物をしていると、玄関の方で音が聞こえた。
「ただいま~」
その声でお母さんが帰ってきたのだと分かる。帰ってくるなら、一言連絡してくれれば良いのに。洗い物がちょうど終わったので、鷲衣さんと一緒に玄関の方に向かう。
「お母さん、帰ってくるから連絡してよ」
「抜き打ち調査よ。抜き打ち調査。ちゃんと二人でやっているかは、いきなり来た方が分かるでしょう? はい。お土産。お祖母ちゃんが伊織にっていうのもあるから」
お母さんからお土産の袋を預かると、お母さんが怪訝な表情で私の手を見てくる。
「マニキュア? 随分と綺麗に塗ったわね?」
「え? あ、うん。鷲衣さんが塗ってくれたの」
「へぇ~、この子おしゃれに疎いレベルじゃないから、色々と教えてあげて」
「あ、はい。もっと可愛くしてあげようと思います!」
「頼もしいわね。何も問題はなかった?」
「はい。こと……伊織さんがいましたから」
「それなら良かったわ」
鷲衣さんがちゃんとやれているかどうか確認出来たお母さんは、満足げに頷いていた。玄関で話し続けるのも何なので、私達はリビングに移動する。お母さんは洗面所で手を洗ってから、リビングに来てキッチンを確認していた。
「毎日お弁当も作っていたの?」
「うん」
「少しくらい楽してコンビニで買っても良かったのに。まぁ、そこら辺伊織らしいわね。お風呂は?」
「今からだよ。わ、鷲衣さん、お先にどうぞ」
「うん。そうするね」
既にお風呂の準備は出来ているので、鷲衣さんはそのまま浴室へと向かって行った。
「まだ緊張するわけ?」
「そ、そんなすぐに普通に喋られるなら、今頃友達天国だよ……」
「天国なのかわからないものね」
お母さんの呆れの目は京花ちゃんと同じものだ。大分慣れて来たけど、話し方が完全に京花ちゃんに対するものと同じになるには、まだ時間が掛かる。
「まぁ、打ち解けているのは、そのマニキュアを見れば分かるわ。スタイリストに興味を持っているっていうのも納得の腕ね」
お母さんは、私の爪を見て感心している。それが何故か自分の事のように嬉しく感じる。
そんな中でお土産を確認すると、基本的に有名なお菓子が詰まっていた。しばらくおやつには困らなさそうだ。冷蔵しておいた方が良いものは、冷蔵庫に入れていく。
その中でお祖母ちゃんからのプレゼントも見つけた。
「これ……ぬいぐるみ?」
袋いっぱいに詰まっていたのは、小さな熊のぬいぐるみ。
「そう。熊のぬいぐるみ。伊織が好きだからって、色々と集めていたらしいわよ。私か伊織が来たら渡そうとって思っていたみたいね」
「へぇ~、お祖母ちゃんらしいね。上に置いてくる」
「いってらっしゃい」
お祖母ちゃんからのプレゼントを持って、二階の自分の部屋に入り、棚にぬいぐるみを並べていく。本当にいっぱい買ったみたいだ。お祖母ちゃんは、私達の好きなものを覚えているから、こういう風に時々まとめてくれる事がある。
「好きなものか……鷲衣さんの好きなもの……化粧品だよね。でも、私化粧品に詳しくないし……熊のぬいぐるみと違って、どんなものでも良い訳でもないし……プレゼントって難しそう……京花ちゃんみたいにあまり好きなものじゃなかったら、はっきり言ってくれるわけでもないだろうし……」
京花ちゃんは私に遠慮がないので、駄目出しは即座にしてくる。私も京花ちゃんに対してなら、これはあまり好きじゃないかもとかは言えるのだけど、私と鷲衣さんの関係だとこの辺りは気を遣ってありがとうと言ってしまう。
お礼を言うのは当たり前ではあるのだけど、相手の好きなものを探ろうと考えている私には痛手だった。
「化粧品……着飾るって意味なら、香水はどうなんだろう? いや、それこそ自分の好きな匂いを買うから、分からないか。そもそも香水ってどこで買うか分からないし」
「香水欲しいの?」
「わぁああっ!?」
突然背後から鷲衣さんの声がしたので、驚いて跳び上がってしまった。鷲衣さんはタオルで髪を拭きながらこっちを見ていた。お風呂から上がったから、私を呼びに来てくれたみたい。
「お風呂空いたよ」
「う、うん……あ、ありがとう……」
私はそそくさと浴室に行ってお風呂を済ませていく。ドライヤーで髪を乾かしてリビングにいるお母さんに声を掛けておく。
「出たよ」
「分かったわ。ありがとう。明日のお弁当とかは私がやるから、部屋に戻って良いわよ」
「うん。ありがとう」
明日からはお母さんがいるので、夜ご飯とかを作る必要がなく楽になる。
そのまま部屋に戻ると、既に鷲衣さんがいた。自室でのスキンケアとかも終わったみたいだ。いつもスキンケアをしっかりとしているからか、鷲衣さんの肌などはもちもちしているような見た目をしている。私も化粧水とかは付けているけど、ここまでしっかりとしたのはしていない。
私が部屋に入ると、手にクリームを付けた鷲衣さんが私の頬とかにクリームを塗ってくれる。これも一緒に暮らし始めてから始まった事だけど、スキンケアの一部を私に使ってくれる。そうしてクリームを塗りながら、鷲衣さんは私を見ていた。
「琴坂さん、香水欲しいの?」
「ふえっ!? あ、い、いや……う、うん……」
馬鹿正直に鷲衣さんにプレゼントしたいとか言ったら、何か気を遣わせちゃうかもしれないので、私が欲しいという風にして情報を得る事にする。
「それなら私が使ってる香水の匂い嗅いでみる? 何かのヒントになるかも」
「え? い、良いの……?」
鷲衣さんが使っている香水の種類が分かれば、鷲衣さんが好きな香りの傾向が分かるかもしれない。何かプレゼントしたい時に役に立つ情報だ。
「うん。気に入ったら一緒に使っても良いしね。そうしたら香りもお揃いだね」
「お、お揃い……う、うん。そ、そうだね……」
香りとお揃いという事に、ちょっと魅力を覚える。鷲衣さんとのお揃いが増える事に私自身喜びを感じている証拠だ。そこから寝るまでの時間、鷲衣さんの香水を嗅ぎながら、どんな匂いが好きかなどを話していった。
これでまた鷲衣さんとの仲が深まったかな。




