図書館清掃の報酬は図書館ならでは
歌で図書館全体を浄化したけど、一応図書館全体が綺麗になった事を私も確認していく事にした。細かい部分で汚れが残っている可能性があるから。これにはフォルティさんも賛成してくれて、フォルティさんと手分けして隅々まで調べる事になった。
「ここも大丈夫……埃っぽくなる場所も何もなくなってる……ここら辺の本は大分黄ばんでいたりしたけど、それもなくなった……本の劣化も防いだのかな。図書館の利用者には、何故か祈りを捧げられたりしたりしたし……【聖歌唱】って意外と変なスキルなのかな……」
【聖歌唱】の効果が思ったよりも強大だった事に驚きを隠せない。外で使った時には、こんな感じじゃなかったけど、外はそこまで大きな汚れがないし、気付けないのも当たり前だったりするのかな。
十階に上がり、そこも調べていると、一瞬視線がハープに囚われた。理由は分からない。見た感じハープに変化はない。少し綺麗になったような気がするけど、元々綺麗なハープだったので、変化があっても本当に微細な変化なのだと思う。
それなのに、一瞬視線が固定されたのは、ハープに魅力に感じたからなのかな。
「う~ん……やっぱりいつもと変わらないや」
見た目での変化がないので、問題ないと判断して十階全体の調査をしていく。十階も問題なく全て綺麗になっていた。全てが綺麗になっている事を確認した後、一階に降りると先に確認ヶ所を全て確認し終えていたフォルティさんが待っていた。
「あっ、どうだった? 漏れはなかった?」
「う、うん……み、見た感じは……」
私達が見られる場所のみ綺麗になっているというのが、現実だ。私達が入る事の出来ない図書館の裏側までは分からない。
「見える範囲が綺麗になっていたらクエストはクリアだろうし良いと思う」
そもそも調べようがない時点で、クエストに必要な掃除箇所ではない。それなら掃除が行き届いていなくてもクエストはクリアとなるから問題はない。
本音を言えば、ちゃんと全部綺麗にしたいけど、私達が入れる場所はゲームシステム的にも図書館の職員ではないという点からも限られているので仕方ない。
「それじゃあ、報告に行こう。ここでお金貰えたら、防具の費用払っても余裕が出るよ」
「う、うん……」
防具代を出したら、また貧乏になるところだったけど、このクエストをクリアすれば、まとまったお金が入る。これをまた楽器につぎ込んだら意味がないので、頑張って貯金するつもりだ。
フォルティさんと一緒に司書さんがいるカウンターに行く。カウンターで、とても良い笑顔をしている司書さんが立っていた。
「こんなに綺麗にしてくれてありがとう。予想以上の綺麗さだね。これは依頼の報酬金ね」
そう言われて100万マニーが入ってくる。
(100万マニー……これだけあれば新しい楽器が買え……って駄目駄目! 貯金するって決めたばかりでしょ!?)
一瞬で貯金の意思が揺らぎかけたけど、何とか持ち直した。大金は人を狂わせる。それがゲーム内であっても。それがよく分かる。
「こんなに綺麗にして貰ったから、特別な報酬もあげる。まぁ、特別って言っても、図書館ならではのこういうものなんだけどね」
そう言って司書さんが渡してきたのは、煌びやかな装飾がされた本だった。題名を『聖唱聖奏』というらしい。フォルティさんには、普通の本の見た目で『染色大全』という題名のものが渡された。
「何かの役に立つかもね。それじゃあ、これからもよろしく」
「あ、は、はい……」
「よろしくお願いします」
ひとまずクエストは完全にクリアしたので、私とフォルティさんは屋敷の方に戻っていく。そして、屋敷の部屋で互いに本を取り出した。
「私の『染色大全』は……まぁ、名前の通り染色の仕方が……あれ?」
フォルティさんは本のページを開いた瞬間、本とは別の虚空を見つめた。何かしらのメッセージが流れたのかもしれない。
「ど、どうしたの……?」
「いや、本を開いた瞬間スキルを手に入れてさ。【万能染色】【万能彩色】【万能化粧】の三種類のスキルが手に入ったの。これ生産織用のスキルなんじゃ……いや……化粧は生産織ってわけでもないか……えぇ……これを手に入れてどうしろと……」
どうやらフォルティさんは、色を付けたりお化粧をしたりするスキルが手に入ったらしい。直後、フォルティさんの本が燃えた。
「うわっ!?」
燃えた本を思わず床に落としてしまっていたけど、火が燃え移る事はなかった。
「はぁ……良かった……でも、なんで燃え……いや、一人しか読めないようにかな。特別報酬が他の人にも使えると、読み回しが発生するし」
「じゃ、じゃあ……わ、私のも……」
「うん。燃えると思う」
私は少し覚悟をしてから、『聖唱聖奏』を開く。すると、本とは別の場所にメッセージウィンドウが表示される。
『『聖唱聖奏』を閲覧します。スキル【聖歌唱】が【神聖歌唱】へと進化します。スキル【神聖奏】を獲得』
そのウィンドウが出た数秒後、『聖唱聖奏』が燃え上がった。燃えると分かっていてもいきなりの発火に驚いてしまい、『聖唱聖奏』を落としてしまう。『聖唱聖奏』はそのまま燃え尽きていった。
「何のスキルだった?」
「え、えっと……せ、【聖歌唱】が【神聖歌唱】になって……し、【神聖奏】ってスキルも手に入ったよ……」
「音楽関係だね。リラさんは、音楽関連でクエストをクリアしたし、最初から音楽関連で進めていたから理解出来るけど、何で私は色関係を貰ったんだろう……ランダム?」
こればかりは私も何も言えない。正直、なんでなのだろうというのは、私も共通の疑問だったから。ただ一つだけ思う事があった。
「わ、鷲衣さんがお化粧好きだから……?」
「ええ? あっ……そっか。本体のプロフィールに好きなものの登録欄があったっけ。あそこに登録すると、それ関連のゲームをおすすめしてくれるからメイクって書いたような……それを参照された?」
「あ、あり得るかも……わ、私は空欄だけど……」
「空欄の場合はゲーム内の行動が反映されるのかもね。ああ……私も空欄にしておけば良かった……そうしたら音楽関係のスキルが手に入るかもしれなかったのに……」
フォルティさんとしても、今欲しいのは音楽関係のスキルだったらしい。まぁ、バンドをしている以上、それに対して効果的なスキルがあった方が嬉しいから当たり前かな。
「まぁ、いいや。せっかく手に入れたし、少し遊んでみるかな」
「わ、私も……し、下で色々やって来る……」
「うん。分かった」
ここからはそれぞれのスキルの検証に移る。




