防具で重要なのは性能と動きやすさ
翌日。朝ご飯を食べ終えた後、私は鷲衣さんにうちのトレーニングルームを見せに行った。
「こんなところにも部屋が……ある……んだ……」
部屋に入った鷲衣さんが段々と唖然としていくのが分かった。気持ちは分かる。家にこんなところがある家庭なんて極希だろうし。
「お、お父さんが……だ、ダイエットと体型維持のために買った物を集めた場所なの……」
「へぇ~……」
「だ、だから……わ、鷲衣さんも……つ、使って良いよ……」
今日はこれを伝えたいと思って、ここを紹介した。この家にいるのだから、使ってはいけないという事はないし。
「え? 大丈夫なの?」
「う、うん……い、一緒に住んでるから……」
「そっか。ありがとう。私も体型は維持しないといけないから嬉しいよ」
モデルである鷲衣さんは、その体型を維持する必要がある。身長の伸びとかは仕方ないにしても、身体のウェストとかは維持出来る。そうじゃないと、服の大きさとかが変わって、モデルで着る服が変わってきちゃうから。
ここで運動していなくても鷲衣さんの体型は綺麗だけど。学校での体育の時間の着替えとかで少し見えたりするし、家では薄着でいる事が多いから、それがよく分かる。
「琴坂さんも使ってるの?」
「う、うん……う、運動不足にならないように……」
「ああ、なるほど。だから、琴坂さんの身体って綺麗なんだね」
「ふえっ!?」
鷲衣さんの褒め言葉は、私にとって毒ではないけど、刺激が強い。その理由は真っ直ぐ正直な言葉だから、ダイレクトに心に来る。
「琴坂さんは、今日使うの?」
「あ、うん……ご、午前中の一時間は運動しようかなって……」
「じゃあ、私も一緒にやらせて貰おうかな」
運動着に着替えた後、二人で一緒に運動をする。いつもは一人で黙々と音楽を聴きながらやるのだけど、今日は鷲衣さんとお話ししながらやっていった。誰かと一緒にやるのも、これはこれで楽しかった。
運動を終えた後は、それぞれでお風呂に入って汗を流し、早めの昼食を済ませてから、パラユニにログインする。
今日は四人揃う日なので、その時間までユートゼータで防具を買うお店選びをする事になっている。
フォルティさんと一緒にユートゼータに来たところで、フォルティさんに付いて歩く。
「まずはここかな。お手頃な値段でそこそこの性能。見た目は普通」
紹介されたお店に入って、フォルティさんと中の防具を見ていく。確かに胴体、腰、脚、靴の最低限一式装備が、30万マニーで性能的には、初期装備よりも遙かに強い。見た目も普通の服っぽいから、動きやすさもあるけど、装備で上昇するパラメーターが防御と器用だけの初期装備と同じものばかりだった。
「ま、魔力が上がる装備はないかな……」
「魔力? あ、そっか。魔法楽器は魔力参照だったっけ。それじゃあ、ここじゃないや」
私が欲しい装備は、防御と魔力が上がる装備。魔力が上がれば、その分魔法楽器の攻撃力が上昇する。バフ効果は倍率だから、あまり増える事はないと思うけど、攻撃力が上昇するのは助かるから、そのパラメーター上昇系の防具が欲しい。
「そうだった。そうだった。つい私と似たような防具って考えちゃったけど、リラさんは魔法職と同じだもんね。それだと確か、ここら辺の店がおすすめになったかな。魔法職に合わせた装備なんだけど……ここはローブだから動きにくいし……ここは……ちょっと露出多すぎ……あっ、ここかな」
ショーウィンドウに飾られた防具の見本を見て、その防具屋が作る防具の特徴を見ていたフォルティさんは、しっかりと選別して防具屋を選んでくれた。実際ローブは動きにくそうだし、露出が激しいのは好きじゃないので、有り難い。フォルティさんはそんな私の好みを知っているわけじゃないはずだけど、何を基準にしてくれたのかな。
「防御力は落ちるけど、頭防具はない方が良い?」
「ぼ、帽子とかだったら……な、ない方が演奏しやすいかも……」
「そうだよね。あっ、え? すみませ~ん。これも頭防具ですか?」
フォルティさんがメニューを見て調べてくれる。すると、何か気になったものを発見したみたい。私もフォルティさんが見ているメニューを見させてもらうと、そこには髪飾り系の防具が書いてあった。
それでなんでびっくりしたのかは私には分からない。
フォルティさんの確認に答えるために、カウンターの奥から店主さんが出て来る。女性の店主さんで、紫の髪のお姉さんだった。店の防具と違って、少し露出の多い服を着ている。プレイヤーの方みたい。
「は~い。ああ、それですね。髪飾りはアクセサリーにあるものだけど、それは頭防具で間違いないですよ。バレッタとかよりも大きくて、髪飾りというよりも鉢金に近いものなんです。金属としては軽い部類のものを使っているので、頭が重くなりにくくなっています。まぁ
あまり人気はないですね」
魔法職なら、これよりも普通に帽子にした方が全体的なおしゃれ感が出ると思う。そこを優先する人が多いのかもしれない。
「これなら邪魔にならないんじゃない?」
「う、うん……い、良いかも……あ、あの……そ、その……こ、これも使って……ぼ、防具作れませんか……?」
フォルティさんに少し隠れるようにしながら、クローパンゴリンの素材とユートガンマ前のボスであるアングリーボアの素材をカウンターに乗せる。
「鋭鱗爪鎧に、切削爪、怒貫鋭牙……なるほど。どういった防具かの注文はありますか?」
「あ……え、えっと……ま、魔力と防御を……」
「魔法職装備ですね」
「あっ、でも、腕とかが動きやすいようにしてください。ヴァイオリンが弾けるくらいには」
「ヴァイオリンが? なるほど……分かりました。頭、胴体、腰、靴の四種で宜しいですか?」
「は、はい……」
「他にも素材はありますか?」
「あ、は、はい……」
私はこれまで倒したモンスターの素材をカウンターに出す。その素材を見た店主さんが頷く。
「これであれば、大体の見積もりですが、七十万マニーになりますね。防具が出来上がった時に支払ってください。フレンド登録もお願いします。防具が出来上がった時に連絡しますので」
「は、はい……」
店主さんはスピカという名前らしい。フレンド登録をして、後は防具が出来上がるのを待つだけとなった。せっかく素材を手に入れたから作って貰おうと思ったけど、思っていたよりも高くなってしまった。
その分良いものが出来ると信じよう。




