幼馴染みは幼馴染みの扱い方を心得ている
キューちゃんと一緒にハングリーハイエナ、毒を持つ蠍のポイズンスコーピオン、荒野を転がるタンブルウィードのようなスクイーズウィード、毒を持つ蜥蜴のポイズンリザード、針を伸ばして貫こうとしてくるヤマアラシのペネトレートポーキュパインというモンスターを倒しながら、荒れ地の石を持ち上げて下を確認しながら、ユートゼータへと向かっていた。
「毒持ちのモンスターも毒攻撃に注意すればどうにかなりそうだね」
「ソロゲーの毒よりも強力だったりするから、毒消しくらい買っておきなよ?」
「うん。後は、あのタンブルウィードが厄介だね」
「ああ、スクイーズウィードね」
スクイーズウィードは、本当にタンブルウィードのような形で、背景に溶け込むかのように転がっている。見てもモンスターなどとは思わない。
そんなスクイーズウィードは、私達プレイヤーに近づくと、身体に絡みついてきて、首を絞めてくる。その窒息ダメージで倒すというモンスターらしい。
何も知らずに近づいちゃって首を絞められそうになった時に、キューちゃんが短剣で次々に切ってくれたから助かったけど、本当に危なかった。私は斬撃系の武器を持っていないから、どうやっても捕まったら終わりだ。
「あれ対策にナイフがあるのは良いけど、それだけのために買うのもね。後は火を使うか、自分の手で引き千切るかくらいだよ」
「え? 引き千切れるの?」
素手でもどうにか出来るという事実に、ちょっと驚かされる。素手で引き千切れるような強度だと思わなかったからだ。
「うん。力のステータスがあればね。今どのくらい?」
「初期値」
「無理だね。てか、なんで初期値?」
「魔法楽器って、魔力参照の攻撃なんだ」
「ああ、魔法職と変わらないって事ね。まぁ、名前的に考えても普通そうか。なら、魔法楽器で火を扱えるようになれば対策にはなるか。魔法楽器って、他に種類ないの?」
「あると思うけど……」
「なら、お金貯めて買うべきだね。その類いの武器なら、種類を揃えるのが前提だろうから」
これは私もずっと考えていた事だ。黒帝だけで戦い続けるのは無理があるし、【聖歌唱】もあるからギターが欲しい。あの魔法楽器店に行って品揃えを確認しておこうかな。フォルティさんと一緒に。
「攻撃力は中々のものだから、首を絞められながらノイズを出し続ければどうにかなると思うけど、しばらくは気を付けなよ」
「うん」
「さてと、次はこの岩か。持ち上げるよ」
「うん」
力に比重を置いたステータスをしているキューちゃんは一人でも大きな岩を持ち上げられる。そう。岩としか言えないような大きさでも、普通に持ち上げて移動させていた。長くは持てないみたいだけど。
「どう?」
「見当たらない」
「こういうのは動かせるけど、技能結晶が手に入るものじゃないって事なのかね。でも、鉱石はいくつかあるから、持ち上げて調べる事自体は運営も想定しているみたいだね」
「でも、鉱石も偏りがあるよね?」
「レアなものもあるけど、数は少ないし、ランダムなのかもね。多分、木の洞も同じようにランダムにアイテムが入っているのかも。そこまで細かいところに着目してなかったけど、そういう点からも強くなれるようにしてあるのかもね」
ランダムでアイテムがゲット出来るかもしれない採取ポイントの用意。その中にはレアアイテムがあるかもしれないという可能性も眠っている。私の技能結晶のように。
「他のエリアにも同じような場所はありそうかな。多分、誰も着目してないし、意識もしていないから、見逃されているだけだと思う」
「じゃあ、ここを探り続ける事は割と意味がある事なのかな?」
「いや……この割合だとソシャゲのガチャよりも確率は低いんじゃない? 普通にレベル上げしたり、クエスト受けたり、採掘した方が効率は良いし。そもそもここを調べられる時点で戦闘は出来るわけだし」
「まぁ、それもそうか」
戦闘するエリア内にあるところを調べないといけないので、結局戦闘が出来る人用に用意されている事は間違いない。そうなると、普通に戦闘したり、この先にある採掘ポイントと呼ばれる場所で採掘していた方が鉱石も多く採れる。
ここに来られるプレイヤーが、この採取ポイントを調べる理由がない。
「ここだけの限定アイテムでもあればね」
「技能結晶?」
「まぁ、それも含めてかな。技能結晶が出る確率は、確実に一桁未満」
「小数点以下?」
「うん。下手すれば第二とかじゃない?」
「そんなに?」
「分からないけど、これまで見つかっていない事も考えると、そのくらいの確率でもおかしくないと思う。リラが手に入れた経緯も考えると、技能結晶確定演出とかもあり得るかな
私が見た光がその確定演出だったとキューちゃんは考えているらしい。
「さてと、そろそろユートゼータだから、道に戻ろうか。ボスは? 挑む?」
「ううん。足手纏いだろうから」
「素材持ち込みでオーダーメイドの方が強いのを作って貰えるよ。普通に売っている防具はそこそこの性能だから」
「じゃあ、ユートゼータまで行ったら、素材集めをした方が良い?」
「それか大金を積むか。素材が向こう持ちだと、滅茶苦茶お金掛かる感じ。ボス戦に意味があるのは、そういう点かな。ボス素材って本当に良い素材ばかりだから」
フォルティさんも、ユートゼータまで行ってから素材集めをしようって提案してくれるつもりだったのかな。どのみち私が足手纏いになりそうだけど。
「経験のためにボス行くか」
「さっきの話は!?」
「うるさい。どうせ、リラの事だから、拒否すると思ってたし。最初から無理矢理連れていくつもりだったんだよね」
「えぇ……」
キューちゃんの強引なところが、こんなところで出て来た。
でも、キューちゃんも意地悪だけでこう言っているわけじゃない。さっきの話にもあった通り、ボス戦で得られる素材の利点が大きいから、それを私に取らせてあげようと思ってくれている。そのはず……
「ほら、せっかく一緒にゲームするんだから、楽しもう。負けたって良い戦いなんだから、気楽でしょ」
「わ、私、力になれるか分からないよ……?」
「バフもデバフもあるんだから、力にはなるでしょ。リラの自信にも繋げるために、ちゃんとボス戦をするよ。私も前に立つから安心でしょ」
「まぁ……」
「今度は今一緒に住んでいる友達ともボス戦をするかもしれないんだし、その予行練習と思いな」
確かにフォルティさんとボス戦を挑む可能性は、十分にある。フォルティさん以外にもシェリアさんやアルシャさんが一緒かもしれない。二人とは一緒に挑んだけど、フォルティさんが加わった時にしくじらないためにも、ここでキューちゃんと練習するのは有りだ。
キューちゃんとなら、そのくらい気楽に行けるような気もするし。
「う、うん! 分かった!」
「んじゃ行くよ」
キューちゃんに誘導される形になったけど、ここでユートゼータ前のボス戦に挑む事になった。頑張って迷惑にならないようにしないと。




