幼馴染みとの久しぶりの遊び
翌日。私は早起きをして、鷲衣さんのお弁当を作る。モデルの仕事がどんな感じか分からないので、一口で食べやすいものを揃える事にする。
そのお弁当は一口サイズのおにぎりの詰め合わせと卵焼きとたこさんウインナーという遠足でも使えそうなお弁当だ。
ただ塩おにぎりだけだとつまらないので、中身の具材でバライティ色を出す。鮭、たらこ、梅、おかか、ツナマヨ、焼きの六種類の手毬おにぎりを作り、丁寧に詰めていった。
ちょうど詰め終えたところで、出掛ける準備を終えた鷲衣さんが降りて来た。本当に朝早くから行くらしい。
「おはよう、琴坂さん」
「あ、お、おはよう……お、お弁当……」
最近は五月でも暑くなる時があるので保冷剤も一緒にいれたお弁当袋を鷲衣さんに渡す。受け取ってくれた鷲衣さんは、とても嬉しそうな笑顔を向けてくれた。
「ありがとう! お昼楽しみにしてるね。それじゃあ、行ってきます」
「い、いってらっしゃい」
玄関まで鷲衣さんを見送っていく。普段のお母さんみたいな感じで送り出した後は、私も朝ご飯にする。朝ご飯は、鷲衣さんのお弁当に詰められなかった残り物だ。
自分で食べても美味しく感じるから、多分問題はないはず。
その後普通に家事を終わらせて、戸締まりの確認をした後に軽く運動していく。
「そういえば、ここの紹介してなかったかも……明日教えてあげよう」
トレーニングルームの案内をしていなかった事を思い出しつつ軽く運動した後は、シャワーを浴びてから昼食を軽く済ませて、パラユニにログインした。
今日は時間がたっぷりあるため、ユートゼータまでは行こうかなと思っている。ユートゼータまで行ったら、ユートゼータとユートエーの間にあるオレウエストランドでレベル上げとモンスター討伐のクエストをやってみるつもり。それが終わった後は、図書館のお手伝いをしてログアウトし、お風呂と夕食の準備をしながら鷲衣さんの帰りを待つというプランだ。
このプランに綻びはないと思っていたら、キューちゃんからメッセージが届いた。
『今日、暇なら一緒に冒険しない?』
私は即答で了承の返事をする。久しぶりにキューちゃんと遊べるという喜びがそこまでの行動を高速化させていた。
待ち合わせは、ユートアルパの広場となる。そこが一番分かり易い。
「キューちゃん!」
「久しぶり……って、まだ初期装備なの?」
「あ、うん……ユートゼータで買うのが良いって」
「まぁ、ここまで来られる力があるならそうなるか。ユートゼータなら、布装備が多いし。でも、布装備で良いの?」
「うん。私の武器、これだから」
私はキューちゃんに黒帝を見せる。黒帝を初めて見たキューちゃんは目を丸くして驚いていた。
「え? 本当に楽器で戦うの?」
「うん。結構強いよ。サポートと攻撃が出来るんだけど、攻撃はノイズを出す攻撃だから、聞く人によっては不快かも。私は不快」
「まぁ、ノイズなんて大体の人が不快でしょ。まぁ、いいや。道中モンスターと戦いながら行って、レベル上げとお金稼ぎも同時にやろうか。どうせ、そこまでレベルも高くないんでしょ?」
「えっと、21だよ」
私が自分のレベルを言うと、キューちゃんはまた驚いていた。私が道の真ん中だけを通ってきていると思って、レベル上げはそこまでやっていないと考えていたみたい。
「路上ライブも経験値が溜まるの。だから、レベルは上がるんだ」
「ほ~ん……お金以外にも意味はあるんだ。それなら戦闘経験を積むって意味合いが強くなるね。ほら、クエストカウンター行くよ」
「うん」
キューちゃんがユートエーからユートゼータまでの間に出て来るモンスターの討伐クエストを受けていく。パーティーを組んだ私達は、ユートエーに転移した。
「ここからもオレウエストランドなんだよね?」
「そう。ユートデルタ、ユートエーは、鍛冶が盛んなんだけど、オレウエストランドには、沢山の採掘ポイントがあるの。そこから鉱石が採れるから盛んってわけ」
「へぇ~……じゃあ、大きな石を持ち上げたりする?」
「いやしないけど採掘ポイントでもないし。てか、持ち上げられるの?」
「え、うん……」
昨日フォルティさんと一緒に石を持ち上げたので、持ち上げられるのは間違いない。でも、それが何か意味があるのかという謎は残っている。キューちゃんも知らないみたいだし。
「あ、あのね。私、技能結晶を見つけたの」
「へぇ~……え? どこ……っと待った」
私が答えようとした瞬間に、キューちゃんが口を塞いでくる。ここで喋るなって事だと気付いて、私も黙った。
「エリアに移動するよ」
キューちゃんに手を引かれて、ユートエーに転移した後、そのままユートゼータまでの道に入り、そのまま道を逸れた。人がいない場所に来ると、小さな犬みたいなモンスターが集団で現れる。名前はハングリーハイエナというみたいだから、飢えたハイエナ達って感じかな。
キューちゃんは大鎚を出して、すぐにハングリーハイエナに向かって行った。私も黒帝を出して、ノイズを出し攻撃する。ハングリーハイエナは、全身からダメージエフェクトを散らして、一瞬怯む。
そこにキューちゃんの大振りの一撃が横から襲い掛かる。
「『バーンスイング』!!」
キューちゃんの大鎚が炎を纏い、ハングリーハイエナに命中すると、炎が命中した面から放出されて、ハングリーハイエナの群れを飲み込んだ。その一撃で、ハングリーハイエナが全滅する。
「わぁ……キューちゃん、凄い」
「これでも最前線近くにいるから、このくらいは何てことないよ。それで、どこで技能結晶を手に入れたの?」
「レイブンウッドの木の洞」
「はぁ? 木の洞ぉ?」
この答えも予想していなかったからなのか、キューちゃんの素っ頓狂な声が響く。
「うん。木の洞で一度キラっと光ったのを見つけたの。でも、一回しか光らなかったから、探すのは手間取ったよ」
「木の洞……まぁ、技能結晶って、変な場所で見つかる事が多いって言うし」
「そうなの?」
「前線プレイヤーの間ではね。突発クエストの報酬だったり、ダンジョンになっている場所から見つかったり、色々だけど、分かり易い場所にはないって感じかな。なるほど、さっきの石の話の理由が分かった。木の洞にあったから、そういう分かりにくい場所にあるかもって話ね」
「うん……ないかな?」
「いや、知らないけど。私が聞いた内容に石の下はなかったかな。ちょっと探してみる? 私も気になってきた」
「いいの?」
「いいよ。調べてみよう」
キューちゃんも興味を抱いたようで、周辺の石を持ち上げてその下を調べてみる事になった。予定とは大きく狂うけど、調べたいのは事実なので、これに反対はしなかった。




