次の街への道程は二人で
翌日。学校が終わり、私と鷲衣さんは揃って帰宅する。夕食の下準備だけしておき、パラユニへとログインした。
私とフォルティさんは、ユートアルパで『レリックシンフォニー』『合わない視線は空虚』『昼つ方シンフォニー』の三曲を披露し、一人30万マニーを稼ぐ事が出来た。
「あ、ありがとうございました!」
観客の皆が解散していく中で、私達も撤収準備をしていく。
「さてと、防具を作りに行く?」
「う、う~ん……こ、これで足りる……?」
「まぁ、初心者用の防具なら足りるかな。もう少し良いものなら、50万マニー欲しいかな。後、布防具なら、ユートゼータまで行った方が良いものを買えるよ。リラさんの武器はヴァイオリンだから、布の方が良いでしょ?」
「う、うん……」
さすがに金属鎧でヴァイオリンを弾くのは難しい。軽鎧でも邪魔になりそうだし、布装備が一番やりやすいのは事実だった。
「で、でも……な、何でユートゼータ……?」
「そっちに工房が多いんだ。理由は、ユートゼータ自体が裁縫の街なんだ。布が多くて、良いものが入りやすいんだって。まぁ、布の質の話で、高ランクの素材ってわけじゃないんだけど。おしゃれ用の装備って感じだけど、実用品も多いんだ。ここから中盤までは使えるって話。中盤がどのくらいか分からないけど。私の装備もユートゼータで新調したの」
確かにフォルティさんの装備は髪と同じ紺色の布装備に変わっている。綺麗な色で、ただでさえ綺麗なフォルティさんが更に綺麗に見える。ただ膝丈くらいのスカートになっているのが気になった。
「す、スカート……?」
「タイツ穿いてるから大丈夫だよ。そもそもスカートの中は他人は見えないしね」
「そ、そうなんだ……」
スカートの中は見えないようにされているというのは、色々な対策のためなのだと思うけど、それで一安心出来るかどうかは人によるかな。激しい運動をするかもしれないから、私は若干気になってしまう。
「それじゃあ、ユートゼータに行く? ユートエーを経由するから、今日中には着かないけど」
「え、えっと……で、でも……」
「迷惑じゃないよ。私がリラさんと遊びたいんだから」
「そ、そっか……あ、ありがとう……」
一緒にユートデルタに転移して、ユートエーへと向かう。ユートデルタからユートエーへの道は少し荒れ地が多くなるオレウエストランドというエリアになる。
「道が分かりづらいから気を付けてね」
フォルティさんの言う通り、道は分かりにくい。森の中や草原の中にある道なら、草が生えていなかったり踏み固められていたりして分かり易かったけど、荒れ地で植物が少なくなっているここだと道の境目が分かりにくい。
辛うじて踏み固められている事が分かるような気がする感じだ。
「ここのモンスターは毒を持ってるのもいるから気を付けてね。夜のレイブンウッドにもいたと思うけど、数はこっちの方が多いから」
「れ、レイブンウッドにもいるんだ……」
「あれ? あ、そっか。ギリギリ夜になったくらいだもんね。毒対策のための薬は持って来てるから安心してね。ここら辺は先輩の私に任せて」
私よりも先にプレイしているので、パラユニに関してはフォルティさんの方が先輩で間違いはない。
「まぁ、道の真ん中を歩くから戦闘はないんだけど」
「そ、そうだよね……」
道を逸れなければ、安全に移動出来る。そして、今日は案内をしてくれるフォルティさんがいる。戦闘になる可能性はかなり低い。わざと戦闘にならない限りはね。
「そうだ。土曜日にちょっと仕事入っちゃったから、朝から出掛けるね」
「あ、そ、そうなんだ……お、お弁当用意するね……」
「え? 良いよ。せっかくの休みなのに早起きしないといけないし」「そ、そう……?」
良かれと思って言ってみたのだけど、フォルティさんには遠慮されてしまった。余計なお世話だったかな。
「あ、でも、やっぱりお願いしようかな。仕事先でもリラさんのご飯を食べられると幸せだから」
「あ、う、うん……が、頑張るね……」
「うん。よろしくね」
フォルティさんが気を利かせてくれたみたい。私がしょんぼりしているように見えちゃったのかな。実際、しょんぼりはしていたけど。お弁当が作れないというよりもフォルティさんにお節介をしてしまったと思っていただけなのだけど。
「そういえば、リラさんが技能結晶を見つけたのって、木の洞だったよね?」
「あ、う、うん……ひ、光って見えたよ……い、一瞬だったけど……」
「それって一回だけ?」
「う、うん……」
「それを見逃さないようにしないと手に入らないって事かな。割とバランスは良いかもね。周りに集中すれば、道を見失って戦闘になるし、道を辿っていたら、周りに集中しきれないし」
確かにフォルティさんの言う通りだ。技能結晶を得ようと周りに集中すれば、道から逸れて戦闘になり、結局周囲を見回す事は出来ない。本当に偶然光ったのを見逃さなければレアアイテムゲットとなるので、ゲームのバランス的には良いとなるのかな。
「木の洞か……洞の高さってどのくらい?」
「こ、このくらい……」
「私の身長とほぼ同じくらいか……私の目線じゃ見つからないかも……逆にこの目線じゃないと見つけられないとかあるのかな?」
「ど、どうだろう……? で、でも……み、皆に機会を与えるならあるかも……」
「確かに。リラさんも女性では高身長だけど、男性の平均くらいだもんね」
「う、うん……」
フォルティさんも女性にしては身長が高い方だけど、私は多分抜きん出る身長をしている。それこそ成人男性の平均身長くらいはある。だから、ゲーム内でも大体平均的な身長と言っても良いはず。
そんな私の目線から見えるものだから、基本的にはこのくらいの高さに生成されると考えても良い。でも、それだと全プレイヤーに平等で公平な機会とは言い難いので、フォルティさんの身長でも見つけられる何かがある可能性も十分にあった。
「それに荒れ地だと洞はないから……寧ろ地面に落ちてるとかありそう。後はああいう大きな石の下とか。ありそうじゃない?」
「も、持ち上げられるの……?」
「さぁ? そこまでやったって話は聞かないかな。やってみる?」
「い、良いよ……」
私とフォルティさんは、道を逸れて荒れ地に落ちている大きめの石を二人で持ち上げる。ペットボトルが入った段ボールくらいの大きさがある石なので、大分重い。
そうして持ち上げた下には何もなかった。
「何もない……まぁ、そう都合よくポンポン見つかる訳もないか。ユートエーに行きたいから、今日はそこまでやらなくて良いかな。今度いっぱいひっくり返してみよ」
「う、うん……」
もしかしたら何か見つかるかもしれないけど、今日は今日の目的を果たすために、再び道に戻って進んでいく事にした。歩いている間は、フォルティさんとお話しているので、退屈するという事は全くなかった。
逆に退屈させていないか心配なくらいだ。




