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パラレルユニバースオンライン~コミュ障女子高校生のリア充への道~  作者: 月輪林檎
自らの心を自覚し向き合う時間

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持つべきものは愛される妹

 アルシャさんと屋敷に帰ると、シェリアさんの手を握って跪いているフォルティさんと踏ん反り返っているシェリアさんがいた。

 私に気づいたフォルティさんは輝かんばかりの顔で私を見る。


「リラさん! 聞いて! 聞いて! シェリアさんとアルシャさんがサマトラのライブチケットを当てたんだって! しかも、二人ともペアチケットなの!」


 フォルティさんは大興奮で私に説明してくれた。つまり、二人が私達を連れて行ってくれるということだ。人気バンドのライブに行けるというのは、確かに私にとっても嬉しいことだし、アルシャさんが訳知り顔だった意味もわかる。

 バンドがお姉ちゃんのバンドでなければ。


「そ、そうなんだ……」

「テンション低いわね。今をときめく大人気バンドよ? あんたも知ってるでしょ?」

「そ、それは……も、勿論……」

「こういうライブを体感して学ぶのも重要なことじゃない。しかもサマトラよ! 私達も人気バンドになったら楽屋に挨拶とか出来ないかしらね」


 シェリアさんはそう言いながらうっとりとしていた。


「シェリアは、サマトラの大ファンなの」


 アルシャさんがその訳を教えてくれた。さすがお姉ちゃん達。老若男女関わらず惹きつける魅力があるみたい。まぁ、ここにはほぼ同年代同性しかいないけど。


「……」


 シェリアさん達には、バンドに入ってもらったりお世話になる事も増えていく気がする。それなら少しのお節介はしても良いかな。

 メールの機能を立ち上げてお姉ちゃんにメールを送る。その間、フォルティさんとシェリアさんはサマトラの話題で盛り上がっていた。二人とも本当に大ファンらしい。

 話の内容からインディーズの時から好きだったっぽい。

 そんな中でお姉ちゃんからの返信が来る。


「あ、あの……」


 私がか細い声を出すと、さっきまで大きな声で語り合っていたフォルティさんとシェリアさんが途端に閉口してこちらを見る。あの声のやり取りでも私の声は聞こえたらしい。


「あ、そ、その……チ、チケット……キャンセルで……」

「は? 何で?」


 唐突過ぎたからか、シェリアさんはかなり困惑した様子でそう言った。まぁ、楽しみにしているものをキャンセルでって言ったら当然か。


「あ、そ、その……び、VIP席が用意……さ、されるので……」

「……」

「……」

「……」


 全員が全員ぽかんとした顔で静まり返ってしまった。

 お姉ちゃんに皆を楽屋に入れたり出来ないか確認のメールを送ったら、『VIP席用意できたから、チケットはキャンセルするように言っておいて。楽屋というか、何ならこっちからそっちに行くかも。我慢できないだろうから。楽しみにしてる』という返信が来たので、こうなった。


「はぁ!? な、何で!?」


 さっきとは比べ物にならないくらいの声量でシェリアさんが吠え、私の胸ぐらを掴んで前後にシェイクしてくる。シェイク中は私も返事ができない。舌噛みそうだし……


「シェリア。リラちゃんがスムージーになるから」

「あ、ごめん。それでどうしてそんなことが出来るのよ。何かヤバい繋がりとかないでしょうね?」


 シェリアさんは、さっきとは一転、私を心配するかのような表情になっている。


「あ、え、えっと……あ、姉がサマトラのベースなので……」

『はぁ!?』


 フォルティさんとシェリアさんは異口同音にそう言った。アルシャさんも驚いた表情をしている。サマトラのメンバーは、全員名字を公開していない。下の名前だけで活動している。なので、琴坂という名字から繋がりを探ることはできない。


「何であんたも驚いてるのよ。この子と暮らしてんでしょ?」

「確かにそうですけど、お姉さん事情を詳しく聞こうとは思いませんよ!?」

「それは確かにそうよね……」

「それより……そんな簡単に決められる事なの?」


 私がメールを送ってから五分から十分くらいしか経っていない。そんなすぐにVIP席を用意できると言えるものなのかとアルシャさんは思ったみたい。


「あ、え、えっと……わ、私が言ったから……さ、サマトラの人達は……わ、私に甘いので……あ、後は打算もあると……」

「打算? ああ、リラさん自身を勧誘しているってこと?」


 アルシャさんは、すぐに私が言った言葉の意味を理解してくれた。この察しの良さは年齢によるものだろうか。


「は、はい……」

「さ、サマトラに!?」


 シェリアさんが少し焦りを覚えているような表情で詰め寄ってきた。その心境はわからない。今更サマトラに新メンバーが入るのが嫌なのかな。

 でも、実はそれは関係ない。


「あ、あ、い、いえ、こ、個人で……じ、事務所に……」


 お姉ちゃんが事務所に入ってすぐの頃、お姉ちゃんが家にマネージャーを呼んで、お母さんと話し合うという状況が生まれた。まぁ、まだ高校生くらいの時のスカウトだったから、親とも話し合う必要があったみたい。

 その時、私は防音室に篭ってひたすらギターを弾きながら歌っていた。京花ちゃんが、旅行に行っていたからやる事がなかったときなので、暇つぶしだった。

 そんな暇つぶしをマネージャーさんに見られることになり、スカウトされた。私は小学生だったので、お母さんとお姉ちゃん経由で断ったのだけど、お姉ちゃんのライブに行って楽屋に顔を出しに行くと、軽い勧誘を受けるようになった。

 今すぐの話ではなく、これから先音楽をやりたくなったら、ぜひうちにという感じだ。

 だから、こういうVIP席もライブを間近に観てもらって、興味を引き出すみたいな事も考えているのではと私は考えている。回りくどいかもしれないけど、効果的ではありそう。


「た、確かにリラの実力ならスカウトが来てもおかしくない……ん〜〜!」


 シェリアさんが頭を掻きむしり始める。それと同時にアルシャさんが耳打ちしてくる。


「シェリアは、未だに二人を勧誘することを諦めていないの。だから、リラちゃん一人でデビューとかになったら、勧誘も何もないでしょ? どうにかして、現実の方でもバンドをしてもらえるように毎日模索してるの。あっ、でも、無理矢理っていうのは考えてないから。リラちゃん達の事を尊重しつつ勧誘するって息巻いてる感じかな。だから、勝手にタイムリミットができたと思って焦ってるんだと思う」


 やっぱり、シェリアさんはこのメンバーでのバンドを諦めていなかった。その節は感じさせられていたからわかる。ただ、大分キツイ条件を自分で課しているみたい。

 私達が嫌がらないように少しずつって感じだったのかな。

 さっきのサマトラに入るのかって時に焦りを覚えているようだったのとそれが原因かな。


「と、取り敢えずわかったわ。お言葉に甘えさせて貰うわね」

「あ、は、はい……と、当日……」


 ライブの日にちは六月四日の土曜日。夏目前。梅雨の陰気を吹き飛ばす大夏祭りというテーマで行われるライブだ。ここは良い。問題はペア同士でしかリアルの姿を知らない事。合流するのが若干難しくなる。


「ああ、合流するのに姿がわからないとどうしようもないわよね。はい。これ私達の写真ね」


 そう言われて、グループメッセージで送られてきたのは、ピアスとかをしているイケイケな紺色の髪の女性とシックな服装をした黒髪の美人さんだった。


「青いのがアルシャね」


 イケイケな方がアルシャさんだった。でも、シックな方からシェリアさんっぽさを感じ取れたので、なんか納得だ。


「あんた達の写真はないの?」

「友達になって、一、二週間ですから!」

「……それで同じ家に住むようになるって、どんな距離の詰め方してんのよ……まぁ、良いわ。後で撮って写真送りなさい。これなら問題ないでしょ?」

「あ、は、はい……」


 まさかあっさりとリアルの写真を送られるとは思わなかった。こういうところは、まだ抵抗感のある人の方が多いと思う。でも、合流の必要がある以上、これは必要不可欠なものだった。

 問題は私が陰キャすぎて、自撮り写真など一枚も持っていない事だ。頑張って撮らないと。鷲衣さんが家にいるから撮って貰うのもありかな。

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