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パラレルユニバースオンライン~コミュ障女子高校生のリア充への道~  作者: 月輪林檎
自らの心を自覚し向き合う時間

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何事も確認が大事

 ログアウト後に鷲衣さんにメッセージを送って、夕飯を食べ、お風呂に入る。湯船で音楽を聴いていたところで鷲衣さんから電話が来たので、防水イヤホンで通話する事にした。


『もしもし、琴坂さん?』

「う、うん……」

『あれ? もしかしてお風呂だった? 掛け直す?』

「う、ううん……だ、大丈夫だよ……」

『私が大丈夫か……』


 鷲衣さんは小さな声で呟いていた。向こうも何かやっている途中だったりしたのかな。でも、それだと鷲衣さんから連絡はしてこないか。


『いや、何でもない。それでバンドに入りたいって人達の話だよね』

「う、うん……シェリアさんとアルシャさん。え、えっと、ド、ドラムとベースだよ……リ、リアルでもバンドしててね……え、えっと……そ、そのリアルにも……か、勧誘受けたの……」

『リアルでも? 琴坂さんやるの?』

「う、ううん……さ、さすがに、し、知らない人だったから……」

『いきなりリアルでバンドするは難しいよね。まぁ、そこは追々考えれば良いと思う。リアルでもやってるなら、楽器の扱いも上手いだろうし、足りないピースでもあるから、私が良いと思う。最終判断は琴坂さんに任せるよ。琴坂さんがこの人達となら一緒に出来るって思ったなら一緒にやろう』


 鷲衣さんは私がコミュ障だという事を知っているので、私に任せてくれるみたい。


「そ、それなら……い、一緒にやる……」

『うん。分かった。屋敷には招待する?』

「う、うん……れ、練習はしたい……から……わ、鷲衣さんは大丈夫……?」

『ん? うん。琴坂さんが家主だし、琴坂さんの選択に従うけど』

「あ、で、でも……わ、鷲衣さんも……い、一緒に住んでるから……」

『ぶふぉっ……!?』

「あ、え? わ、鷲衣さん……?」


 凄い大きな空気が漏れる音が聞こえて、私はかなり戸惑った。


『ご、ごめん……咽せちゃった。大丈夫だよ。外で練習しようとすると、野外ライブ判定を受けちゃうしね。地下室での練習が一番良いと思う』

「う、うん……じゃ、じゃあ……しょ、招待するね」

『うん。私、明日はログイン出来ないけど、琴坂さん大丈夫?』

「う、うん……が、頑張る……」

『分かった。無理はしないでね。それじゃあ、また明日』

「う、うん……ま、また明日」


 通話が切れる。十分に温まったので、お風呂から上がって寝間着に着替える。そのまま部屋に戻ろうとしたけど、まだ少しだけ時間があるので防音室に入る。

 そこで手に取ったのはヴァイオリンだ。随分使ってないけど、手入れだけはされている。黒帝を弾いていたから、ちょっとだけ弾きたくなった。


「リアルの方だと感覚鈍ってるかも……ヴァイオリン……鷲衣さんの曲はヴァイオリンとピアノで進めるのが良いかも……そうするとしたら……」


 私はピアノの方に向かって、鷲衣さんの曲を弾きつつアレンジを加えて楽譜を整えていく。前提をヴァイオリンと合わせるための伴奏として、ヴァイオリンの音を想像しながら作っていると、頭に軽い衝撃が来た。


「うぇ?」

「『うぇ?』じゃないわよ。そろそろ寝なさい」


 いつの間にか寝間着に着替えているお母さんがいた。お母さんに言われて、時間を見たら日付が既に変わっていた。ちょっとだけと思っていたら、がっつりやってしまっていた。


「あっ、いつの間に……」

「新しい曲作り? ピアノでやるなんて珍しいじゃない」

「うん。鷲衣さんが作った曲を私が整えてるの。本当はバンドでインストにしようと思ったんだけど、ちょっとヴァイオリンと合わせたら良いかなって」

「ふ~ん……まぁ、バンドよりはクラシック寄りね。元々ピアノを習っていたから、そっちの意識が強いのかもしれないわね。ところで、ピアノなんて持ち歩けるの?」

「インベントリがあるから大丈夫だとは思うよ」

「それなら良いわね。取り敢えず、今日はこれくらいにして寝なさい」

「は~い」


 身体を伸ばしてから防音室を出て自分の部屋に戻る。そのままベッドに入ると、すぐに意識が暗闇の中に落ちていき眠りに就いた。


────────────────────


 伊織が作曲作業に夢中になっている間に、天花はパラレルユニバースオンラインにログインしていた。

 屋敷に現れたフォルティは、メニューからフレンド欄を見て、リラがログインしていない事を確認する。


(琴坂さんは寝ちゃったかな。それならちょっと確認したい事を確認して寝るかな)


 リラとの練習が出来ないという事を確認したフォルティは、昨日から気になっていた事を確認するために図書館へと足を運んだ。

 図書館内に入ったフォルティは、真っ直ぐカウンターへと向かう。


(クエストを受けてないけど、私の事を認識してくれるかどうか。まぁ、このゲームだから問題はないと思うけど……)


 リラほど図書館を訪れていないため、フォルティは司書が自分を認識するのかどうか心配になっていた。だが、司書がフォルティを見て手を振ったのを見て、ひとまずその心配が杞憂であった事に安堵する。


「こんばんは」

「こんばんは。今日は一人?」

「はい。司書さんに少しお話を聞きたくて来ました」

「話?」

「はい。司書さんとアルタさんの関係についてです」


 フォルティが図書館を訪れた理由。それはこの前明らかになった歌姫であるアルタと司書の関係をしっかりと確認するためだった。アルタが残した意味深な言葉。そこに絡むストーリーを調べる事で、少しでもリラがアルタに期待されている事を明らかに出来ればと考えたからだ。

 フォルティから質問を受けた司書は、長い前髪の奥で目を細める。


「あの子から接触したって事ね。私とアルタに関係があるっていうのはどこから?」

「アルタさんが司書さんに楽譜を渡したという点とリラさんがそこを目撃しているという点からです」

「まぁ、それもそっか。関係というか、普通に友人同士というだけ。私に楽譜を渡したのは、自分が直接渡すよりも受け取りやすいだろうからってだけ。まぁ、目的は聞いていたから、色々と打算込みでね」

「打算というのは?」


 フォルティは、少しだけ警戒心を出しながら問う。その警戒心を感じ取りながら、司書は優しく微笑んでいた。


「アルタの目的を達成する事が、結果的に私にも都合が良いの。ただし、私達は必要以上に干渉出来ない。だから、あの子に自主的にやって貰うしかない。言えるのはそこまで」

「やらなかったらどうなるかは……」

「私達にとっては都合が悪いけれど、あなた達じゃないといけないって事はないから、また都合良くやってくれそうな人を探すだけ。別に強制的にやらせようと思ってはないから、気が乗ったらやってくれれば良い。あの子にも気負いすぎないように言っておいて」

「分かりました。教えてくれてありがとうございます」

「どういたしまして。暇になったら、また整理を手伝って頂戴」

「はい。失礼します」


 フォルティは、司書に頭を下げてから図書館を後にする。


(ひとまず悪の片棒って感じはしないかな。私達が音楽をしながら進んで行く事が何かしらに繋がるのは確かだけど、進まないと分からないか。バンドメンバーが二人増えるけど、その演奏をアルタさんが満足してくれるかどうか。それも大事そう……ちゃんと練習はしておかないと)


 フォルティは身体を伸ばしてから屋敷に戻り、ベッドに寝転がる。そして、そのままログアウトした。

 練習はしたいが、それはそれとして明日も学校はある。見た目は派手だが、割と真面目な面も持ち合わせている天花は、すぐにベッドに入る。


(明日は、もう少し琴坂さんと話せるかな……)


 天花の頭に、先程電話した時の伊織の声がリフレインする。風呂場特有の響きのある音。伊織が入浴している姿を妄想した天花は、自分の頬を叩く。


(駄目駄目。変な想像しちゃ駄目。でも……少しくらいなら……いや、駄目!)


 自制心を総動員して、変な妄想を抑え込んだ天花はそのまま眠りに就いた。

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