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特訓の成果

「いや、どっちも! どっちにも大きいんだって! やめて! 今はまだ責めないで!」


 少しだけ顔を逸らしつつ、思わず俺は叫んだ。

 ツッコんだ。

 ハッとして口を手で覆う。

 さすがに、今のは言葉のチョイスがきつかったか?

 しかし、俺の言葉を受けた二人は顔を見合わせて同じタイミングで笑顔になる。


「蓮、今のいいよ。新鮮だけど、なんだかそれが蓮の素なんだって思うとたまんない」

「だね。皆から一歩引いてた蓮君も素敵だけど、今みたいにグイっと来てくれるとすごく嬉しい」

「そ、そうか? それならよかった」


 やっぱり、これでよかったんだ。

 俺は自身の決断が間違っていないことを理解し、安堵する。

 この旅行をきっかけに、きちんと距離を詰めていければ……。


「よっし、じゃあ、蓮、あそこ行ってみようよ」


 麗奈の豊満なことがわかったアレが、俺の腕にむにゅりと押し当てられる。


「えー、私はこっちがいいと思うな。ね、蓮君もそう思うでしょ?」


 麗奈とは反対側の腕には美里が引っ付く。

 麗奈よりもやや控えめだが、それでいて確かな反発力を有したアレが俺に押し付けられる。

 いや、全然いつも通りじゃない! 

 むしろ、距離感マイナスになる勢い! 

 そして、俺の理性など無視するように、エロスは全身を駆け巡り、あっという間に残りの肌着、そして、その上に来ていたポロシャツを吹き飛ばす。


―――だが、俺は慌てない

 

 光をも置き去りにするスピードで、手に持ったボストンバッグから新しい肌着とポロシャツを取り出し着込んでいく。

 その間、たぶんコンマ一秒。


「蓮、速い!」

「すごいよ蓮君!」


 俺の一連の動きを見た二人は目を丸くする。


「二人と向き合う間、警察に捕まるわけにはいかないからな。七瀬先生に服の着方を学び、徹底的に鍛えてきた」


 そう、俺が爆散しつつ、しかし、それでいて楔帷子を着ず、二人との旅行で二人と全力で向き合うためにたどり着いたのが、七瀬先生との特訓だった。

 これまでも幾度か、爆散した瞬間に着込むということはしてきたが、それはあくまでも乱発はできない対処法。

 普段の俺ならば、一日に一回が限界だった、

 しかし、七瀬先生はそうではない。

 俺の爆散を当たり前のように日に何度もカバーしてくれていた。

 俺はこの旅行で確実な成果を得るために、先生に弟子入りしたのだ。

 過酷だった。

 筋線維一本にまで意識を張り巡らせることによる、効率的かつ省エネルギーな着衣。

 それを実現するための、人間の理をも軽く超えてしまいそうなトレーニング。

 先生が先生たる所以がわかるような苛烈だった。

 しかし、そのおかげで俺は瞬時に着衣できる肉体を手に入れることができた。

 これなら、二人の想いと二人との関係を服爆散に気を取られることなく受け止めることができる。

 我ながら、完璧な作戦だと感じる。

 しかし、長く持つわけじゃない。 

 今の爆散からの着衣ではっきりとわかった。あまりにも体への負荷が大きいこの対処法は、あくまでもこの一泊二日の旅行中限定の荒業だということが。

 一回やっただけで、体の筋肉が震えている。

 ふふ、なかなかじゃないか。

 俺は自身の前に立ちはだかる壁に、思わず身震いする。

 これまで、病気ゆえに様々なことに本気で取り組んできた俺は、新しいチャレンジに意外とワクワクしていた。

 恋とは戦いなのかもしれない。

 いや、多分違うけど、そう感じる。

 ていうか、七瀬先生すごいな。

 これ、ほぼ毎日やってくれていたんだもんな。

 改めて、先生に対する畏敬の念が募る。

 特訓の時は本当に怖かったけど。

 先生とは、生徒と先生という関係性がベストなのかもしれない。


「ふーん、さすが蓮。じゃあ、遠慮なく行くね」

「だね。私も蓮君のその自信満々の顔が歪んでいくまで追い詰めるね」

「望むところだ」


 三人の間の空気、そこに含まれる緊張感が増していく。

 というわけで、旅行がいよいよ本格的にスタートした。

 時刻は午前十時。

 心地よく抜けた青空が俺たちを見下ろしている。

 三人で訪れているのは、とある温泉郷。

 地元から特急列車を乗り継いで二時間ほど揺られ先にあるそこは、全国的にも知名度の高い場所だ。

 駅の左手を見ると、しっとりとした温泉地らしい雰囲気のある街並みが道路沿いに広がっている。


「ていうか、なんで温泉?」


 麗奈は駅から今日泊まる旅館までの道中、俺の腕を掴んだまま首を傾げる。


「いや、それは俺にもわからない。坂崎先生に『旅と言えば温泉だろう?』って言われただけだしな」

「なんか、話聞いてるとずいぶん濃い先生みたいだね」

「話すとちゃんとしてるんだけど、たまにこういう突拍子もない提案をするんだよな。ほら、小学生の時に俺が……」

「……あー、そんなこともあったね」

 

 口に手を当て軽やかに笑う麗奈。

 服装や髪型は変わったけど、笑い方は変わらない。

 俺はそれに安堵する。


「あー、二人だけで盛り上がってズルい! 私だけ置いてけぼりなのは寂しいな」


 美里のこちらを掴む力が強くなる。

 もはや、乳という乳が俺の腕に接している感覚を覚える。

 減るって。

 着込んだ肌着減るから。

 さすがに、初撃ほどの威力はないものの、それでも二人の乳は俺の肌着を減らしていく。

 宿まで持ってくれよ。

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