びゃあああああああああああああああああああああああ!
けれど、俺が諦めたと同時に、教室内に叫び声が響いた。
「びゃあああああああああああああああああああああああ!」
そのあまりの声量と甲高さに、周囲の視線はそちらへと一気に集まっていった。
「み、美里ちゃん⁈」
麗奈が驚きのあまり目をひん剥いて俺の隣を見る。
発生源は美里だった。
それはもう天を穿つほどの勢いで、叫んだ。
体内のエロスに気を取られていた俺はあまりの驚きに跳ねた。
「なんでお姉ちゃん来ちゃってんおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
「美里ちゃん一人だと心配だから来ちゃった」
「来ちゃったじゃないよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
美里は絶叫した後、頭を抱える。
そのまま下を向き、ブツブツと何かを呟き始めた。
「どゆこと?」
麗奈は俺を見て首を傾げる。
「どゆことだろ?」
俺も首を傾げた。
そして、いそいそと服を着た。
助かった。
いや、助かってない気もするけど助かった。
「ちょっと、来て!」
「え、ちょっ、まだ挨拶終わってないよ?」
「いいから!」
美里は席を立って七瀬先生の元へ行き、乱暴に手を掴んで教室の外へと出て行った。
「んー、なんだか複雑そうだからそっとしておきましょう。七瀬先生は来週からなので、とりあえずこちらはこちらで産休に入る前に済ませるべきことを済ませていきましょう」
既に産休モードな先生はさらりと先ほどの混乱を受け流す。
「えーっと、心配なので、見てきますね」
俺は手を挙げて、先生に提案をした。
さすがに、このまま進行というのもあれだし、可能であれば美里を連れ帰ってこよう。
そう考えた。
「あ、じゃあ、お願いしちゃおうかな」
「それなら私も」
麗奈も声を上げてくれた。
俺たちは視線を合わせた後、教室を出て行った。
そのまま廊下を進んで行くと、突き当りの丁字路の先から美里の声が聞こえてきた。
俺たちはゆっくりと歩を進め、麗奈は角から様子を覗いた。
俺は爆散の可能性を考慮し、声だけを聞く。
「お姉ちゃん、なんで来たの? ていうか、何でここにいるのがわかったの?」
「わかったのって、美里ちゃん、急に転校しちゃったからビックリしてお母さんに聞いたの。そしたらこの学校に転校したって教えてくれたから……」
「聞いたから何? 何で来るの? 私、お姉ちゃんにそんなこと頼んでないんだけど」
矢継ぎ早に言葉を繰り出していく美里。
その声と言葉選びは、これまで俺たちが見てきた美里とは大きく異なっていた。
ていうか、美里、たしか親の転勤でって言っていたような……。
「それはそうだけど、やっぱり妹だから心配で……」
「もう高校生だから大丈夫なの! いくら姉妹だからって勝手に来るのは違くない?」
「もう高校生って……。美里ちゃんはまだ(・・)高校生なんだよ? お父さんとお母さんはきちんと納得して送り出したって言ってるけど、高校生で一人暮らしなんて……。ちゃんと食べてる? ちゃんと寝れてる? 学校にはちゃんと通えてるの?」
「全部ちゃんとできてる!」
「それに美里ちゃん、引っ込み思案だったから余計に心配で。見た目も……」
たじたじになる先生。
「あー、もう! いいから放っておいて! せっかく私は私だけの世界で生きていこうとしているのに、蓮君に会いに来たのに、お姉ちゃん来るとおおおおおおおおおおおおおおおおおお……!」
「あ、やばっ!」
俺とは違い、そっと覗いていた麗奈がどうやら美里と視線が合ったようだ。
顔を引っ込めるが時すでに遅し。
叫びがこちらまで突き抜け、廊下を走り去って行った。
そして、その後すぐにとととっという軽やかな音が聞こえたかと思うと、至近距離から声が飛んできた。
「え? もしかして、もしかしてなんだけれど、麗奈ちゃんと蓮君?」
どうやら、こちらに顔を覗かせたのは、七瀬先生のようだ。
「あ、は、はい! 麗奈です。ご無沙汰してます」
麗奈は体育会系よろしく、シャキッと挨拶をする。
俺はどうするか悩んでいる間に、すっと先生が目の前に回り込んできた。
キラキラと光を過分に溜め込んだ瞳に、あっという間に捉えられてしまう。
あ、まずい……。
「見ちゃだめええええええええええええええええええええええええええええええ!」
美里は思い切り俺に抱き着いて来た。
もちろん、瞬間、爆散する。
先生よりも何よりも、お胸様が顔を包み込めばそれはもう無理だ。
久しぶりに再会した先生の前で爆散。
なんとも言えない懐かしさと諦めが去来する。
虚しくも全裸になった俺に、先生の声が届く。
「やっぱり蓮君だ。その爆散具合、蓮君だね」
同時に、暖かなモノが俺を包み込む。
美里のお胸様から少しだけ顔を動かし自身を見ると、そこには服があった。
「まだ、病気は治ってないんだね。でも、大丈夫。私もあれから修行を積んできたの。いつか君と再会できたのなら、せめて、私にできることをしてあげたいって思って」
言って、先生は美里の胸の下からそっと手を伸ばし、俺の両手を包み込んでくれた。
じんわりと暖かい、そして、懐かしい温度が俺の中に染み込んでくる。
「先生……」
俺は先生の想いに感動を覚える。
数年前、教育実習で出会っただけの子どものことを、こんなにも考え続けていてくれていたなんて。
そう感動しつつも、俺の顔を未だ覆う美里のお胸様に未だ爆散の気配は止まない。
はたから見たらすごい状況だろうな。
うん、もっと普通の環境下で感動したかったな。




