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バクサン!~服が爆散する俺と爆散させたい彼女たち~  作者: りつりん
向き合うことを決めた幼馴染による爆散カーニバル
20/47

宣戦布告

 そして、迎えた放課後。

 ホームルームが終わると、麗奈はすぐに部活へと向かう。

 美里と俺はその後姿を見送った。

 こちらを向くことなく去って行く麗奈の姿。

 俺の心では後悔と懺悔が膨れ上がり、息ができなくなりそうになる。


「ほら、そんな顔したら駄目だよ」


 俺の横に来た美里が背中をポンと叩く。

 俺はその優しくも、しかしそれでいて確かな芯をもった感触に心が救われる。


「じゃあ、予定通りこのまま部活終わりまで近くのカフェで待と」

「そうだな」


 それから二時間弱。

 俺たちは学校傍のカフェで時間を潰した。

 そして、いよいよ麗奈の部活が終わる時間帯となり、二人で麗奈が通るのを今か今か待っていた。

 その間に美里に詳しい作戦を聞こうとしたが「大丈夫大丈夫。私に任せて」の一点張りだった。

 なぜに?

 

「あ、来た! 来たよ! 行こ!」


 麗奈を見つけたらしい美里は急いで荷物をまとめ、外へと飛び出した。

 俺も後に続く。

 さっと会計も済ませる。

 外に出ると、既に美里が麗奈を確保していた。

 カフェから出てきた俺を麗奈が見やる。


「なに? 早速、美里ちゃんとデート? とことん私を馬鹿にしたいんだね」


 彼女の瞳に浮かぶは敵意。

 俺の喉がぎゅっと締まる。

 これまで聞いたことのない声の温度に胸を締め付けられる。

 言葉がうまく出ない。


「違うよ」


 しかし、そんな俺を庇うように、美里が一歩前に出る。


「麗奈ちゃんは誤解してるよ。蓮君が麗奈ちゃんのことを雑に扱うわけない。そんなに長くない付き合いだけど、それはわかるよ」

「美里ちゃんはこいつのこと、知らないからそう言えるんだよ。私は、私の心は蓮に弄ばれたんだよ?」

「だから、違うよ。蓮君がこうなったのは私じゃなくて、私のお姉ちゃんのせいなの」

「美里ちゃんのお姉ちゃんのせい? どういう……こと?」


 美里は未だと言わんばかりにこちらを見て頷く。

 なるほど。

 そういうことか。

 即座に意図を理解した俺は、美里に話したときと同様、麗奈に病気発症の経緯と美里との関連を話し始める。

 最初は聞く耳を持ちたくないといった雰囲気の麗奈だったが、徐々に俺と美里、そして病気と七瀬先生との関係がわかってくると、その顔から敵意が抜けていくのがわかった。


「そういうことだったんだ」

「ああ、だから麗奈にもうまく説明できなかったんだ。本当にすまない」


 俺は麗奈に深く頭を下げた。


「いや、ちょ、謝んないでよ。私も病気のことは知ってたけど、まさか七瀬先生きっかけだったなんて……」

「いや、これは俺の弱さのせいだ。もっと早くにちゃんと説明できていれば、麗奈に誤解を抱かせることもなかったはず」

「まあ、それはそうかもね……」


 でもさ、と麗奈は少しだけ寂しさを孕ませた笑顔になる。


「どっちにしても、私のこと、楔帷子で拒否した事実は変わんないし……。私だけのものにはなりたくなかったんでしょ?」


 美里に関する誤解は解けこそすれ、麗奈の心には俺の楔帷子が残ってしまったようだ。

 俺はその誤解も解くべくさらに言葉を紡ごうとした。


「はいはーい」


 しかし、そこで美里が割って入ってきた。


「じゃあ、この感じだと、麗奈ちゃんは蓮君を諦めるってことでいいのかな?」

「「え?」」


 俺と麗奈は急激に変えられた話の流れに着いて行けずに、異口同音。

 そんな俺らの困惑を他所に美里は話を続ける。


「諦めるなら、私が蓮君のこと、もらってもいいよね?」


 さらに加速する美里の話。

 いや、どういうことだ? 

 思わず俺と麗奈は顔を見合わせる。


「もらってもって、美里ちゃん、その、そこまで蓮のこと好きなの?」

「うん! 好きだよ。大好き」


 そう言うと、美里は俺の右腕に抱き着いてきた。

 必然的に、美里の胸の感触が俺を襲う。

 しかし、爆散している場合ではないので、俺は必死になって爆散回避ために脳内で言葉を発していく。

 今したら駄目だ。

 今したら駄目だ。

 今したら駄目だ。


「実は私も隠してたことあるんだー」


 既に夕暮れさえも過ぎ、薄暗さが占拠する時間帯。

 その中でも、美里は眩いばかりの存在感を放つ。


「私ね、本当は蓮君のこと、昔から知ってたんだ。お姉ちゃんが教育実習終わって帰ってきたときに話を聞いたの。自分ではどうしても救えなかった子がいて、そのことをずっと悔やんでた」

「え、いや、そうなのか? そうならそうと言ってくれればよかったのに」


 説明した意味ぃ。


「ごめんね。なんだか言い出すタイミングなくて」

「それも、そうか」


 美里が俺を知っていたことも驚いたが、七瀬先生が俺のこと気にかけてくれていたことも嬉しく感じた。

 俺は数年越しの先生の想いに思わず感動を覚える。


「それでね、その時に蓮君の写真を見せてもらったんだけど、可愛いなって思った。思っちゃったの。一目ぼれって言うのかな? 実はね、どうしても我慢できなくて、どうしても生の蓮君を見て見たくて、一度、蓮君を見に小学校に行ったこともあるの。すうううううううううううううううううごっくカッコよかった。きりりとした表情の小学生蓮君の顔、今でも脳裏に焼き付いてるの」


 おおん? 

 なんだか流れが変わってきた感じがするぞ。

 俺は麗奈から告白された時のような既視感を覚える。

 徐々に美里の声の艶やかさが増していく。


「うふふ。偶然だけど、蓮君と同じ学校に転校したんだってわかった時は運命感じちゃった。数年ぶりに見た蓮君、あの時と変わってなかった愛おしくてたまらなかった。まあその、病気の中身は知らなかったし、私のせいでその服の爆散? ていうのが激しくなったって聞いたときは申し訳なく思ったけど」


 俺は美里のあまりにも突然の、しかも、ベクトルが想定外過ぎる告白にただただ戸惑うことしかできない。

 いや、俺のあずかり知らないこと最近露呈していくのなんか緊張するぅ。


「けど、そばにいる麗奈ちゃんは明らかに蓮君のこと好きそうだったし、私も人の恋路に入り込んでまでどうにかしようとは思ってなかった。蓮君が幸せならそれでいいかなって。近くで麗しの蓮君見られればいいやって。だけど、麗奈ちゃんが諦めるなら別だよね? 楔帷子ごとき(・・・・・・)で蓮君のこと諦めちゃう程度の弱い想いしか持ち合わせていなかった麗奈ちゃんからなら、蓮君奪っても全然問題ないよね。って、あ、麗奈ちゃんはもう諦めるんだから奪うも何もないか」


 美里はいたずらに舌を少し出す。

 黙って話を聞いていた麗奈はそれを見て目を見開く。


「そういうわけで、蓮くんは私がもらうね。私が大切にするね。じゃあ、早速一緒に帰ろうか?」


 ぐっと俺の腕を引こうとする美里。


「待って」

「んん? どうしたのかな? 麗奈ちゃん、邪魔しないでほしいんだけど。これから私、蓮君と本当にデートするし」

「でも、その……待って……」

「待ってどうするの? 諦めたんだよね?」

「……てない」

「ん? 聞こえないなー」

「諦めてない! 諦めるわけないじゃん! 私がどれほど蓮のことを思っていたか! 思ってきたか! 美里ちゃんにわかるわけない! ちょっとだけ蓮を知ってた美里ちゃんに奪われる筋合いはない!」

「楔帷子で諦めたのはそっちだよね? 蓮君が着ている一切を吹き飛ばす覚悟がなかったのは麗奈ちゃんじゃん。さっきも言ったけど、私は奪ってないよ。席が空いてたから座っただけ」

「じゃあ、私も座る!」

「一つしかないのに?」

「美里ちゃんどいて!」


 麗奈は美里の抱き着いている腕と反対の腕に飛びついて来た。

 そして、そのまま俺を挟んでにらみ合う。

 いや、麗奈は睨んでいるが、美里はニヨニヨと不敵に笑っている。

 その煽り顔に苛立ったのか、麗奈の腕を締め上げる力が強くなる。

 痛い!


「蓮は渡さない!」


 いや、俺の意思。

 俺は俺で自分との折り合いあるんだけれどもぉ。

 けれど、そんな俺の考えが双方に伝わるわけもなく、言える雰囲気でもなく。


「うんもう、しょうがないなー。このままだと蓮君も麗奈ちゃんに未練? 的なモノ残るかもしれないし。じゃあさ、勝負しようよ。蓮君だって、さすがに二人に迫られると困るだろうし、私たちの間で決着をつけよ?」

「望むところ! 絶対に負けない!」

「こっちもね!」


 二人の間で散る火花。

 俺のことで争うのはやめてほしいけど、もちろん、そんなことを言える雰囲気ではなく、俺はただただ息をひそめることしかできなかった。

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