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バクサン!~服が爆散する俺と爆散させたい彼女たち~  作者: りつりん
向き合うことを決めた幼馴染による爆散カーニバル
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できなかった

 しかし、映画が始まると同時に俺を襲ったのは、また別種の恐怖であった。


「やばぁ……。やばいよ蓮……。いや! ちょ、ダメ! ダメだよぉ……。うううう、こんな怖いなんて聞いてない。聞いてない。ほんと無理ぃ……。怖いぃ……」

 

 麗奈はあれだけ自信たっぷりだったのに、映画始まってからずっとこの状態。

 スクリーンを見てはいるものの、体は明後日の方向、ていうか、俺に引っ付いている。

 もちろん、俺をエロスで爆散させる余裕なんてない。

 ふふ。懐かしい。

 小さい時も、ちょっとでも怖いことあったらこうして俺にひっついてきていたな。

 けど、胸ぇ! 

 あの頃と胸が違う! 

 胸が凄い! 

 ワンピースという薄着だからこそ感じるこれまでにない圧倒的な柔らかさ! 

 決して制服の上からは感じることのできなかった柔らかさ! 

 爆ぜる! 

 爆ぜちゃう!

 そんな俺の葛藤をしり目に、二時間にわたって麗奈は俺に引っ付き続けたのだった。


「あはは。全然克服できてなかった」

「みたいだな……」


 映画館から出た後、近くにあったカフェに入った俺たち。

 麗奈は恥ずかしそうに頬を掻く。

 まだ、恐怖が残っているのだろう。

 アイスコーヒ―の注がれたグラスを持つ手が震えている。

 そんな麗奈を見ながら、俺は秘策のあまりにも大きな手ごたえに感動すら覚えていた。

 そっと、胸元を撫でる。


―――俺は今日、いつもの肌着ではなく、楔帷子を着ている


 これまでの俺は、肌着は薄手で重ねることができるものを着ないといけないと思い込んでいた。

 しかし、よくよく考えるとそうじゃなくてもいいじゃないか? とつい最近気づいたのだ。

 まさに発想の転換。

 爆散するのであれば、爆散しない服を着ればよかっただけなのだ。

 実は、服爆散には未知の部分が多いのだが、わかっていることがある。

 それは、体内に溜まったエロスによって増幅されたエネルギーが外へとあふれ出し、それによって衣服が爆散するということだ。

 主治医の先生が教えてくれた。

 ということは、一番肌に近い衣服が破れなければ、全爆散には至らないわけだ。

 けれど、そのエネルギーは非常に大きいらしく、正直、楔帷子も吹き飛ばす可能性もあった。

 だが、そこはこれまでの爆散を回避するための努力が功を奏した。

 麗奈の圧倒的なエロスと魅力であっても、楔帷子とエロスを脳内で言葉に転換していくという合わせ技で、爆散することを回避できた。 

 やはり、積み重ねるべきは努力。

 俺はこれまでの自分に感謝した。

 その後、麗奈のアタックを受けつつも、合わせ技で難なく爆散を回避した。


 そして、デートの終わり。

 帰路を歩く俺の足取りは軽い。

 シンプルに麗奈とのデート、というのかはわからないが、外出を楽しめたことが嬉しかった。

 爆散に怯え続けたこれまでとはさようなら。

 ありがとう楔帷子。

 これからもよろしく楔帷子。

 未来への明るい兆しに、俺の足取りはさらに軽くなっていく。


「れ、蓮」

「どした?」


 だけど、そんな俺とは対照的に麗奈は立ち止まる。

 見ると、唇を噛みしめ、やや下を向いている。

 そこには不安の色が浮かんでいるように見えた。

 これまで見たことのない彼女の色に、俺の心がざわつく。


「えっとさ、私とのデートつまんなかった? 嫌だった? 爆散しないほどダメだった?」

「え? い、いや、楽しかったぞ?」


 俺は想いをそのまま素直に言葉にして返す。


「じゃあ、私のこと、嫌い? 爆散したくないほど嫌い?」

「それも……そうじゃない。あー、えっと、今日は爆散しなかったのはだな……」


 俺は上着を少しだけはだけさせ、楔帷子を麗奈に見せる。


「これを着ていたおかげなんだ。そのおかげで、麗奈との、その、デートも存分に楽しめたぞ」


 俺は満足げに胸を張る。

 麗奈は爆散させたいようだが、俺としてはこうして幼馴染と爆散を気にせず過ごせたことが嬉しかった。


「……そっか。今日、私はチャンスすらもらえてなかったんだね」

「チャンス?」


 ワントーン、彼女の声が下がったのがわかった。


「私はね、前にも言ったけど、君だけの人生でいいの。君だけがいればいいの。でもね、君の服を爆散させられないなら、諦めてもいいとも思ってるの。思ってたの。だって、君の服を常時爆散させられない程度の私が、蓮の横にいてもいいとは思っていないから。私は、君の努力をずっとそばで見てきたから。血の滲むような努力を……ずっと見てきたから……」


 でも、と彼女は続ける。


「今日の私は、そのチャンスすらもらえなかったんだなって。楔帷子って、何それ。私には爆散のチャンスすら与えたくないんだね。やっぱり、美里ちゃんだよね? 美里ちゃんにはここまでしなかったもんね。美里ちゃんだから楔帷子着なかったんだよね。爆散プレイに勤しんでたんだよね。ねえ、美里ちゃんのこと、どこまで本気なの?」


 矢継ぎ早に繰り出されるこちらへの疑問。

 しかし、俺はどれにも答えることができない。

 言いづらい。 

 彼女のお姉さんのエロスきっかけで病になり、今もまた美里ではなく、七瀬先生の面影で爆散してるなんて、

 諸々説明しづらい。

 いや、やや美里に対しても爆散のきらいはあるけれども。

 どちらにせよ言いづらいこと極まりない……。

 答えられないでいる俺の楔帷子を麗奈は掴む。

 その手は震えていた。


「ほんと……私のこれまでが馬鹿みたい」


 ぽつりと、麗奈の目から涙が一滴落ちる。

 すると、俺の楔帷子が麗奈の涙の軌跡を追うように、すっ、と縦に割れた。


「え? なんで……」


 それを見た麗奈の目がこれまでにないほどぎっと吊り上がる。

 今しがた涙を流したとは思えないほど、乾ききった瞳が俺を捉える。


「なにこれ? お情けで爆散ってわけ? 私が泣いたから、こんなことしたの? ふざけないでよ。ほんとに……ほんとになんなのよ」

「いや、ちが……」

「さよなら。もういい。もういいよ」


 そこまで言うと、麗奈は目をつむりどこかへと去って行く。

 押し出された大粒の涙が麗奈の頬を伝う。

 待って。

 そう言いかけて喉につかえてしまう。

 なぜなら、麗奈の真っ直ぐな思いに応えるだけの思いの確かさがわからないから。

 彼女の好意は嬉しかった。

 今日のデートも楽しかった。

 けれど、それが好きという気持ちなのかがわからなかった。

 俺と麗奈はずっと一緒にいた。

 麗奈はずっと一緒にいてくれた。

 そんな彼女の言葉に、想いに応えるのであれば、好きということじゃないと失礼だ。

 だからこそ俺は、彼女を追いかけることができなかった。

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