第5話 狗奴国の刃
歴史はアニメでは語り尽くせない。
「失われた光」――邪馬台国最大の謎が、いま小説と音楽で甦る。
火の国が動いた夜――「見える目」が目覚める
風の匂いが変わった。
戦の前は、いつもこうだ。
【一 不穏の風】
高千穂の谷に、初夏の風が吹く。
雲は低く、朝靄は川面を滑っていた。
壹真は中庭で水を汲んでいた。
その時だ。
ただの物音じゃない。
遠くで、叫び声。
次に、兵の騒めき。
空気が一気に変わった。
駆け込んできたのは佐士だった。
革鎧に霧がまとわりつき、息が荒い。
「いっしん、急げ。日向様の前に集まれ。火の国が――動いた」
「火の国……?」
佐士は、鋭く頷く。
「南の大国だ。……だが、狗奴国と通じてた可能性が高い」
「国境の要衝が襲われた」
胸の奥がざわついた。
日向が「光は託されるためにある」と語った、あの夜から。
何かが、少しずつ狂い始めている。
【二 揺れる連合】
大広間には、諸国の使者が集まっていた。
奴国、伊都国、不彌国――そして火の国。
日向は玉座に座り、静かに見つめている。
凛としている。けれど、疲労も隠しきれない。
奴国の使者が詰め寄った。
「日向様! 火の国は狗奴国の手先! このままでは我が国も危うい!」
火の国の代表が、声を荒げる。
「我らは知らぬ! 急襲など予想できぬことだ!」
罵声が飛ぶ。
怒号が跳ねる。
壹真は、中心から一歩外で佐士と見守った。
(これを……日向ひとりで支えきれるのか)
日向が立ち上がる。
その瞬間、広間が静まり返った。
「火の国よ。通じている証は、まだない。――しかし」
声は冷たい。
優しさの奥に、“女王の顔”があった。
「この乱世で、二心を抱くものは倭から落ちるだけ」
火の国の代表が青ざめる。
「今宵、長老をこの宮へ。狗奴国との関係を、すべて話してもらいます」
政治劇が――止まった。
壹真は、日向の背中を見つめた。
(これが……卑弥呼の力)
胸の奥が、熱くなる。
【三 火の影、夜に蠢く】
その夜。
宮殿の外で、不穏が渦巻いていた。
壹真は宿舎の前で空を見上げる。
二つの月。黒い雲。
(落ち着かない……また、あの夢を見るのかな)
夢の中の日向は、霧の中で手を伸ばす。
掴もうとした瞬間、光になって消える。
胸が締めつけられた。
「いっしん」
振り返ると、日向が立っていた。
白衣ではない。淡い紫の衣、朱の帯。
「少し……歩かない?」
壹真は頷いた。
【四 闇の中の真実】
宮殿裏の山道。
夜風が衣を翻し、月光が髪に反射する。
日向が問う。
「火の国は……どう思う?」
壹真は、言葉を選ぶ。
「裏切った……と思う。
でも、全員が悪いとは限らない。誰かが勝手に動いた可能性もある」
日向は微笑んだ。
「あなたは優しいね。
でも、それでは国は守れないこともある」
……痛い。
正しいから、なおさら。
日向は立ち止まり、谷の灯火を見つめる。
「いっしん。連合は揺れている。
これ以上、光が揺らげば……倭は本当に滅びる」
「光……?」
日向の声が、さざ波みたいに弱くなる。
「未来視で見た“光の消失”。
あれはこの国だけじゃない。あなたの光も……いつか消える」
壹真は、迷わず言った。
「俺は消えない。君がいる限り、絶対に」
日向が、わずかに震えた。
壹真はその手を掴む。
「日向。
どんな未来が来ても、君の光になる」
日向は、そっと壹真に寄りかかる。
「……いっしん。
あなたが来てから、私は初めて“生きている”と思えた」
その声は、脆くて――美しい。
手を掴んだ。
確かに触れた。
――なのに、胸の奥には嫌な予感が残った。
(この夜は、終わらない)
この先、火の国の裏切りが“確定”し、壹真の勾玉が脈打つ。
そして――壹真は初めて「見える目」の片鱗を見せる。
戦闘と覚醒の核を収録。
続きはNOTEで公開中。
「失われた光」は、Web小説と主題歌「Lost Light」が同時に紡ぐクロスメディア体験。
アニメではなく、“読む冒険”がここから始まる。
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