第108話「協力者とフィフス」
6月13日。
今日は学園の授業が終わった後、エリスと共にゲートでアストラムの外に出てから、当初の予定通りフィフスの襲撃場所までやってきた。
フィフスが考えていた襲撃場所は、アストラムから出てすぐ近くにある平原だった。街から近く開けた場所だが、アストラム周辺の公道からは大きく外れているため現状人通りは全くない。100人以上で1人を囲い込むには絶好のスポットだ。ところどころには身を隠せる場所があるのも向こうからしたら良い要素だろう。
アストラムから近いため、騒ぎが起きれば人が集まって問題になりそうなものだが、向こうからしたら目的さえ達成できれば関係ないのかもしれない。
「奴らの計画は、明後日貴様がオレをここに誘い込んで袋叩きにするというものだったな」
「うん、そうだよ」
「奴らはオレを殺すために何か仕掛けをするつもりだと言っていたが、どんな仕掛けなのかは聞いているか?」
「分かんない。聞き出そうとしたけど教えてもらえなかったんだ」
「では、既に何か仕掛けがある可能性もあるのか?」
「それはないと思うよ。仕掛けは明日と明後日の午前中にするって言ってたから」
「そうか」
オレは周囲を見回しながら平原を歩く。エリスはオレから少し距離を空けて後ろをついてきている。
「ねぇ、罠を張るっていってたけどさ、何するつもりなの?」
「見ていれば分かる」
「今は教えてくれないわけ?」
「説明が面倒だからな」
「なにそれ。協力関係なのに酷くない?」
「じきに分かるのだから別にいいだろう」
エリスは不満そうな顔をしていたが、オレはそれを無視する。今オレからエリスに言う事は何もない。
それから少し時間をかけて一通り周囲を歩き、役者がそろっていることを確認できたタイミングで、オレは足を止めてエリスの方を向いた。
「追加で必要なものができた。一度学園に戻る。貴様はここで待っていてくれ」
オレはそう言いながらゲートを開く。通じている先は学園にある寮の自室だ。
「え!?ちょっと待ってよ。あたしをここで一人にするつもり?」
「ついてこられても邪魔なだけだからな。安心しろ、10分から20分程度で戻るし、何かあればその魔道具を使えばいいだろう」
オレはそれだけ言い残してゲートを通り、そのままゲートを閉じた。
自室に戻ったオレは椅子に座り、エリスを監視する用の魔道具を取り出す。
それから5分くらいが経った頃、魔道具が光り出してそこから声が聞こえてきた。
『...ス、こんなところで何をしているのですか?』
『...っ!『イアハート』さん。...どうして...ここにいるんですか?』
聞こえてくる声は二つ。一つはエリス、もう一つはエリスがイアハートと呼んだ人物のものだ。エリスの声からは相当緊張していることが伝わってくる。イアハートという人物はフィフスの人間とみて間違いないだろう。
『少々気になる情報を仕入れまして。それが事実かどうかを確認しにきたんです。...それで、あなたはここで何をしているのですか?』
『あたしは...明後日のためにこの場所を下見に来たんです』
『そんな命令をした覚えはありませんが...まあいいでしょう。...ここへは一人で?』
『はい...』
エリスが弱々しくそう答えると、二人の間に少しの沈黙が訪れる。
『はぁ...』
その沈黙を破ったのはイアハートの大きなため息だった。
『エリス、嘘はいけませんね』
これまで落ち着いていたイアハートの声が強い圧を含む。
『あなたはリダン・ブラックヘローと共にこの場所に来たはずですが、何故それを隠しているのでしょう。もしや、私たちを裏切ろうというのですか?』
『え...?』
『どうしました?早く答えてください』
『...』
『答えられませんか?ではやはり私たちを裏切って...』
『ま、待ってください。あたしは裏切ってなんて...!』
『では、あなたがあの男とここにきた理由を納得のいくように説明してください』
『それは...』
エリスは口ごもり、沈黙してしまう。万全のエリスであれば持ち前の演技力でこのくらいは乗り越えられそうなものだが、完全に委縮してしまっている。
『はぁ...。...エリス、残念です。本当に裏切っていたなんて...。悪魔に近づいたせいで惑わされてしまったのですね』
イアハートは嘆くようにそう呟く。
『あなたはもう手遅れなようです。ですがせめてもの救いとして、最後に悪魔を殺すための大役を与えて差し上げましょう』
魔道具の向こう側で、大きな物音が聞こえてくる。
『な、何をするんですか...!』
『あなたには悪魔を殺すための贄になってもらいます』
『贄...?』
『ええ。今からこの場所にあの男を呼び出します。あなたとあの男は親しい関係のようですし、あなたを人質にとればここへ来てくれることでしょう』
『...あたしなんかを人質にしても、来ないかもしれませんよ...。あたしと...リダン君は別に親しいわけじゃないので』
『...?もしや、あの男を庇おうとしているのですか?』
『...そんなのじゃありません。あたしは...ただ本当のことを言ってるだけです』
『...困りましたね。報告ではあなたとあの男はかなり親しい関係だと聞いているのですが、今のあなたが嘘を言っているようにも見えません。はぁ...。...まあいいでしょう、試してみればわかることです。あの男との連絡手段は持っていますね?今すぐここへ戻ってくるように伝えてください』
『...』
イアハートの言葉には応じず、エリスは沈黙する。
エリスからしたら絶体絶命のピンチ。渡している魔道具を使ってオレに助けを求めてもいい状況だ。だが、そのサインはまだ送られてきていない。
エリスはそちらを選択するということだろうか。
『なぜ黙っているのです?悪魔を殺す役に立てれば、あなたの罪も許されるかもしれませんよ?』
『...』
エリスはまだ沈黙を選択する。何を考えているのかは分からないが、どうやらエリスはオレを呼ぶつもりはないらしい。
そろそろ自室に戻ってから10分が経過する。もう頃合いだろう。
オレは立ち上がり、エリスの下へとゲートを開いた。
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