第105話「協力者との話し合い」
「でも、協力するって言ってもどうするつもり?あの人達はキミを倒すためにかなりの戦力をそろえてるみたいだけど、大丈夫なわけ?」
「その辺りの判断をするためにも、まずは現状を把握したい。奴らが貴様に接触してきてからこれまでのことを詳細に教えてくれるか?」
オレがそう言うと、エリスはフィフスの計画に関して自身が知ることを話してくれた。
四日前、エリスの前に突然フィフスが現れてリダンを殺す計画に加担するように脅してきたこと。
フィフスがこのタイミングで狙ってきたのは、リダンがエルトシャンの下についたという噂が原因であること。
エリスはリダンについての情報提供と、作戦決行時にリダンをひとけの無い場所に誘い出す役割を指示されていること。
リダンの学園での様子や、その強さについての情報は既にフィフスに話してしまっていること。
決行日は6日後の6月15日であること。
既に70人近い人数がアストラムに集まってきており、決行日には150人ほどが集まる予定であること。
エリスの話を要約すると、大体こんな話だった。
「...。なるほどな、状況は理解した。それならば問題はなさそうだ」
「なんとかできそうなの?相手は150人もいるんだよ?」
「単純に数の力で攻めてくるのであれば、オレが負ける道理はない。雑魚がどれだけ集まったところで雑魚には変わりないからな」
「とんでもないことを言ってるのに、キミが言うとホントに聞こえるから恐ろしいね」
エリスは少し呆れたようにそう言う。
「とは言え、懸念がないわけではない」
「どういうこと?」
「奴らが真っ向から仕掛けてくるとは限らんからな。例えばイヴやナディアを人質に取られでもすれば、オレは自由に戦えない。貴様が学園でのオレの様子を奴らに話しているのならば、そう言った卑劣な手を取ってくる可能性もある」
先日のネルとの一件から分かる通り、今のリダンにとってあの二人は明確な弱点と言える。
フィフスが実際にどの程度の力を持っているのかは分からないが、この手を使われてしまえば恐らくリダンはやられてしまうだろう。
エリスの協力を必要とする建前として、これは丁度良い要素だ。
「...」
「どうした?」
エリスが愕然とした様子でこちらを見ている。
「あ...えーっと...。キミがそんな事を言うのが意外だったから驚いちゃって。そんな心配をするなんて、あの二人の事そんなに大事に思ってるんだね」
「勘違いするな。オレの事情に巻き込んで無関係な奴に被害が及ぶのが嫌なだけだ」
「...ふーん?そっか」
エリスは何か含みのある笑みを見せる。
「何だその反応は」
「ちょっと思う事があっただけ。気にしないで」
「...ふん、まあいい。ともかく、その懸念を払うためには貴様の力が必要だ」
「そうならないように、あたしにあの人達をコントロールしてほしいってこと?」
「そういうことだ。できるか?」
「簡単じゃないけど、それくらいならできると思うよ。あの人達がキミだけを狙うように情報を流せばいいってことでしょ?あの人達もキミについての情報はあたし頼りみたいだから」
「そうか、助かる。...それと、奴らが仕掛けてくる場所は既に分かっているのだったな」
「うん、そうだよ。キミを倒すために色々と仕掛けもするつもりみたい」
「ならば、逆にそこに罠を張りたい。決行日の二日前、つまり四日後にその場所に連れて行ってくれ」
「分かった。あたしがやるのはその二つだけでいいの?」
「基本的にはそうだが、他にも細かい仕事を頼みたい」
その後は細かい部分についての話を詰めていく。
「...。今話しておくべきことはこんなところだろう。あとは決行日まで奴らの動向を報告してくれればそれでいい。残りの事は全てオレがやる」
数十分かけた話を終え、オレはそう締めくくる。
「何か貴様から言っておきたいことはあるか?」
オレがそう問いかけると、エリスは少し考えてから口を開いた。
「あ、じゃあ一個だけいい?」
「何だ?」
「もしあの人達に何かされそうになったら、コレでキミを呼んでもいいかな?」
エリスはそう言いながら、先日オレが渡した魔道具を見せてくる。オレの下にゲートを開く魔道具だと偽って持たせた、盗聴機能の付いた魔道具だ。
今は受信側の電源を切ってあるため、声を発しても何かが起こることはない。
「ああ。状況に関わらず、身の危険があった時にはそれを使え」
「じゃあさ、今使ってみてもいい?貰った時に使い方を見せてくれたけど、もしもの時にちゃんと使えるか不安でさ」
「使い方はポータブルとほとんど一緒なんだが、それでも不安なのか?」
「うん、ダメかな?」
「...いや、構わんぞ。やってみろ」
オレが許可を出すと、エリスはオレの目をじっと見つめて魔道具にマナを流した。
「何故こちらを見ている?」
「使い方は合ってるかなって思って」
「大丈夫だ。合っている」
エリスはまだこちらを見つめ続けている。オレの様子をじっと観察しているようだ。
オレは見つめてくるエリスから目を逸らし、闇の第10位魔法『ゲート』を発動した。
少しして周囲に二つのゲートが発生する。
「これで満足か?」
「うん」
エリスはようやくオレから視線を外す。
「他には何かあるか?」
「ううん、大丈夫」
「そうか」
エリスの行動からしてこの魔道具の秘密に勘づいている可能性があるな。もしそうなのであれば、やはりエリスは侮れない相手だ。
「...じゃああたしはもう帰ろっかな。大分遅い時間になっちゃったし」
「ああ」
エリスが玄関の方へ向かい、オレはそれを見送る。
だがオレはあることを思い出し、その背中に声をかけた。
「いや、待て。ちょっと確認しておきたいことがある」
「何?」
「貴様とアイゼンの関係についてだ。貴様と奴の間には何かしらの協力関係があるようだが、どういった協定を結んでいる?言っておくが、誤魔化しても無駄だぞ」
これまで手に入れた情報からしてある程度の推測は立っているが、一応エリスに直接確認しておきたい。
「...そう言えば、キミはあたしがアイゼン君に相談してたことも知ってるんだったね。...もしかして、あたしとフィフスの関係をキミに話したのがアイゼン君ってこと?」
「いや、奴は恐らく何も知らん。オレの持つ情報源は別だ」
リダンの顔の広さを考えれば自ずと答えには気づかれそうなものだが、ここでわざわざ明かす必要はない。
「何であたしとアイゼン君の関係を知りたいの?」
「フィフスとは別件なんだが、少し調べていることがある。それと関係があるのかを知りたい」
「調べてることって?」
「キスキルレッドに対してシュトラールブルーの情報を流している裏切り者がいる疑惑がある。そしてオレは、それが貴様ではないかと睨んでいる」
「...」
オレの言葉に対して黙り込んだエリスは、一度大きく息を吐いた。
「...実はさ、アイゼン君はあたしの事情を知ってるから、もしもの時は守ってくれるようにお願いしてるんだよ。あの人達のことだけじゃなくて、色んな危険からね。...でさ、そのお願いをしに行ったら、その代わりにシュトラールブルーとキミの情報を教えて欲しいって言われたんだ」
「随分と素直に白状するのだな」
「だって、キミの様子からしてほとんど確信しているみたいだったし。隠しても無駄かなって」
「オレに執拗に絡んできたのも、アイゼンとの協定が理由だったということか?」
「そうだよ。まあ、キミに近づいた理由は他にもあるんだけど」
「そうなのか?」
「うん。あたし個人としてもキミの事は気がかりだったからね。どんな人か知っておきたかったんだ」
「なるほどな。...ちなみに、アイゼンは何故貴様にそんなことを持ち掛けたんだ?単純に特別演習で勝ちたいからか?」
「さあ?そこまでは分かんないよ」
「そうか...」
アイゼンの思惑は分からないが、ジークとのこともあるしエリスをこのままにはしておけないだろう。当初の予定通り裏切り者を処理してもいいが、この状況になるともっと良いやり方がある。
「アイゼンとの協力関係は解消しろ。今後は奴の代わりにオレが貴様の安全を保障してやる」
「...どういうつもり?あの人達を倒したら、キミがあたしに手を貸してくれる理由なんてないでしょ」
流石に話がうますぎると思ったのか、エリスが訝しむようにこちらを見る。
「このまま裏切りを続けられても困るからな。それだけだ」
「クラスのためってこと?...キミらしくない言葉だね」
「それも全くないわけではないが、違う」
「じゃあどういう...」
「ともかく、アイゼンとの関係は解消しろ。いいな」
エリスがまだ何かを問おうとしていたが、オレはそれを遮って強くそう言い放つ。
「...うん。分かったよ」
エリスは少し不満そうな顔をしていたが、それを飲み込んでオレの命令を聞き入れる。
その後は特に何かを話す事もなく、今度こそこの場は解散となった。
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