表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
感情希薄なモルモットは二重人格者  作者: 識友 希
第5章「協力者編」
104/111

第104話「協力者」

「貴様に一つ提案がある」


 エリスの大嫌い発言から一呼吸置き、オレはそう切り出した。


「...何?」


 エリスが訝し気にこちらを見る。


「オレと貴様には今、共通の敵がいるだろう。そいつを倒すために協力したい」


「協力って...。...本気で言ってる?」


「ああ。貴様が味方についてくれるならば、簡単に奴らを潰すことができる」


 正直なところ、エリスが味方になろうと敵になろうとフィフスを対処する難度は大して変わらない。この協力要請は、エリスに踏み込むための建前だ。


「さっきあんなことしておいて、あたしがキミに協力すると思ってるの?」


「脅すような真似をしたことは謝る。すまなかった」


 オレは軽く頭を下げ、さっきまでの事を素直に謝罪する。そんなオレを見て、エリスは言葉を詰まらせた。


「...」


 見定めるような視線がオレを貫く。


「...大体さ、キミの方はあたしを信用できるわけ?もしあたしがここで協力するって言って、キミはそれを素直に信じるの?」


「ああ」


「ああって...。あたしはキミの敵なんだよ?無理やりとは言え、フィフスの言いなりになってキミを殺す計画に加担しようとしてたんだよ?」


「そんなことはどうでもいいことだ。オレは貴様を敵ではないと判断した」


「...何それ。...意味わかんない」


 自身を殺す計画に加担していた相手を信じる。そんな行為の意味が分からないのは当然だ。普通ならば、例えそれが強制されたものだったとしても、相手への疑念を拭い去ることはできないだろう。

 実際のところ、オレだってエリスを信用しているから協力を提案しているわけではない。エリスが協力するふりをして裏切る可能性だって考慮している。ただ、仮に裏切られたとしてもその裏切りを許容しているというだけだ。


「では逆に聞くが、貴様はオレを信じられないか?」


「そんなの...信じられるわけないでしょ。キミなんか」


「確かにこんなやり方をしたことはオレが悪かった。...だが、今回の件以外でオレから貴様に何かした覚えはないんだがな」


 多少酷い言葉を浴びせてあしらったりはしたが、そのくらいのことは許してほしいものだ。そもそもの話、エリスが嫌がるリダンに対して執拗に絡んで来なければそうなることもなかったわけだしな。


「直接何かされたかなんて関係ないよ。あたしは...キミみたいな人なんて信じられない」


「ではどうすれば貴様の信用を得られる?」


「何をされても、あたしがキミを信じることなんてないよ」


「そうだろうか。今、貴様は少し揺らいでいるように見えるが」


「何言ってるの?そんなわけないじゃん」


「隠しても無駄だ。貴様の中で、オレへの認識が少しずつ変わってきているのだろう?」


 エリスがリダンを嫌う感情が変わったわけじゃない。だがそれとは別に、エリスの中で新たな感情が生まれている。嫌う感情はそのままに、それとは矛盾するとても小さな感情が確かにそこにある。

 いくら演技したところで、伝わってくる感情はまでは隠しきれない。


「そんなこと...」


「無いと言い切れるか?」


 否定しようとするエリスに対し、間髪入れず言葉を重ねる。

 反発する言葉を奪われたエリスはしばらく下を向いて黙り込んだ。


「...。...確かに、あたしはキミの事を少し誤解してたのかもって思い始めてる。キミは自分勝手な人だけど、あの人達みたいに最低な人じゃないのかもしれないって。今だって、その力で無理やりあたしを押さえつけることもできるはずなのに、キミはあたしに選択肢を与えてくれてる」


「弱い人間を力で強引に従わせるなど、オレのやり方ではないからな」


「...でもさ、だからってキミを信じろって言われても、それは...無理だよ」


 エリスは一定の理解を示してくれたが、それでもこちらを拒絶する。押せばいけるかと思ったが、どうやらエリスは想像以上にリダンが受け入れられないらしい。


「...ふん、そうか。では仕方ないな」


 今はこれ以上踏み込んでも大した成果は得られないと判断し、オレはすっぱりと提案を取り下げることにした。エリスが協力の提案に乗ってこないのなら、それはそれで良い。


「どうしてもオレを信用できないと言うのなら話はこれで終わりとしよう。怖い思いをさせて悪かったな」


 オレはフォローを入れてエリスに部屋を出るように促し、発動していた魔法を解除する。

 だが、意外にもエリスは下を向いたままその場を動こうとしなかった。


「どうした?もう帰って構わんぞ」


 オレが声をかけてもエリスはまだ動こうとしない。

 それから少しの間沈黙が続いた後、エリスがこちらを向いて口を開いた。


「...。...あのさ、キミはさっき言ったよね。あたしとキミが理解し合える道があるかもしれない、あたしの抱えてる問題を解決できるかもしれないって。本当にそう思ってるの?」


「当然だ。でなければ今こうしていない」


「なんで...キミがそんなこと思うわけ?そんな風にキミがあたしに歩み寄ろうとするなんて、おかしいじゃん」


「貴様がどう思おうと勝手だが、それがオレの本心だ」


 本気であることが伝わるように、オレは可能な限り真摯な態度でそう答える。

 思惑を隠している部分も多いが、少なくともエリスに歩み寄ろうとする考えに嘘はない。

 オレの言葉を聞いたエリスはまたしばらく黙り込んだ。オレは何もせずにエリスの次の出方を待つ。

 そしてそれから十数秒の静寂の後、エリスは独り言のようにぽつりと呟いた。


「...初めて見た時のキミと今のキミはまるで別人みたいだね」


 あの時はリダンで今はオレなわけだから、エリスがそう感じるのも無理はない。学園に入学してすぐの頃はオレもリダンのフリをしていたが、最近ではそれも必要最低限となっているしな。

 それから更に十数秒の静かな時が過ぎ去り、不意にエリスがオレの目を見た。


「...。ねぇ...やっぱりさ、協力してもいいよ」


「そうか。だが、何故考えを変えた?」


「冷静に色々考えて、あの人達の脅威をできるだけ早く取り除くためにはキミと協力したほうがいいと思っただけだよ。...言っておくけどけどキミを信用するわけじゃないから」


 そう言いながら、エリスは素っ気なく目をそらす。協力関係こそ築くことができたが、エリスからの信用を得るのはまだまだ難しそうだ。

話が面白いと思ってくれた方や続きが気になると思ってくれた方は、

下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援をお願い致します。

面白かったら星5つ、まあまあだと感じたら星3つ、つまらなかったら星1つなど、正直に感じた気持ちで気軽に評価してほしいです。

また、『ブックマークに追加』という黄色いボタンからブックマークをしていただけると、とても励みになりますので、良ければそちらもよろしくお願いします。

感想もお待ちしております。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ