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俺と主人と奇妙な人生  作者: 紫苑
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第二印象と初対面

「誰だ、お前っ!」


ああ、どうやら俺の顔は覚えるのにも値しないらしい。若干悲しい俺こと、側仕えにランクアップした七歳児です。

というか、側仕えですって自己紹介したじゃん。

アラン様に疑わしい目で見られて(?)少しだけ冷静になった俺は、自己紹介が聞こえてなかったらしいアラン様にもう一度話しかける。


「アラン様の側仕えになったものです。今日から…「さっきも聞いた!嘘をつくな!お前は誰だっ」


え、ちょっと…人の話は最後まで聞きましょうよ。ていうか聞こえてたんかい!お前は誰だって、だからもう…


「ですから、側仕えになった、「嘘だ!もっとマシな嘘をつけ!きのう会った側仕えはお前みたいなヤツじゃなかった!髪の毛もぼさぼさで格好もよれよれだったもん!嘘つき!」


ぐっさあああ!


幼少期特有の高く甘い声色で詰られる。いや、俺も悪いんだけどね!?ものすごい勢いで見えない言葉の矢が心に突き刺さった。言われてみれば、そりゃそうだ。俺が湯浴みから出たときにはアラン様は寝てたしな。

自分でさえ別人だと思うのに、他人から見たらもう訳がわからんだろう。

これで、俺との話が食い違ってたんだな。

まあ原因がわかったので、良しとしよう。


「アラン様、私は昨日お会いした側仕えでございます。ただちょっと身綺麗にしただけで…」


ううん…なんだこいつ的な視線をアラン様からチクチク感じる。ま、負けないぞ!


「アラン様がお眠りになられた時に少しだけ散髪をして湯浴みをしただけです」


「……本当か?」


ホントにホント。というか疑り深いな!話が進まない!キリがないので乱暴だが、アラン様に向かって足を進める。


「えっ…ちょっとまって!来るな!近付くな!」


ごめんなさい、アラン様。これが俺の仕事なんです。なにやら慌てて周囲の物を隠し始める小さな主人の傍らにしゃがんで話しかけた。

俺達の身長差だとこっちがしゃがんだとしても、アラン様が見上げる形になる。その見上げてくる目が反抗的に睨んでくるのが少し辛いけど。なまじ顔が整っているぶん迫力がある。


「私はアラン様の側仕えになったのです。アラン様のことは何でも知っておかないといけませんし、知りたいと私は思います。アラン様は何をしていたんですか?」


できる限り優しく優しく声をかける。俺はお世辞にも愛想笑いが得意とは言えないので、声を柔らかくしないとよく勘違いされるのだ。その上アラン様には誤解というか疑念を抱かれてる訳だし。


スラム街出身の側仕えで主人に嫌われてるとか、本当にマイナスからのスタートだよな。


ま、だからこそ、中々口を開かないアラン様を前に辛抱強く待って居られるんだが。


「アラン様?私などに口を開くのは、嫌でございましょうか…」


「……別に、、ただ世を改新させた偉人達の書を見ていただけだ」


ぼそぼそと俯いたままアラン様が言葉を発した。俺の少し悲しげに言った台詞が効いたんかな?

大人が思っているより子供っていうのは案外物を考えてるし、何より人の気持ちに敏感なんだよ。

そんな純粋な気持ちを逆手に取らせてもらって申し訳ないが、しょうがないのだ。若干冷たそうな印象を持つアラン様だが、気まずい気持ちにさせてしまったかもしれない。


アラン様を覗き込む。


覆い被さる前髪の隙間から覗く紅の目に、色濃い影ができた丸い頬。

やっと返事をしてくれた、俺の主人。

目線が落ちて、引き結ばれた唇。

俯いた全ての中で、目が、瞳だけが、熱く意志を燃やしている。


ああ、アラン様。そんな顔しないでほしい。俺の勝手な願いかもしれないけど。


どうして貴方はそんなにつまらなそうにしているの?



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