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第3話:「私のドライブを全部拾って!」――放課後の秘密のマンツーマン特訓

お読みいただきありがとうございます!作者です。

前回、強引すぎる天才ギャルの一ノ瀬凛に、紬の部屋の卓球台と、100年の因縁や戦時中の暗黒時代の歴史までバレてしまいました。

今回は、凛と紬の秘密のワンルーム特訓が本格的にスタートします。

そして何やら、男子の超強豪校である「黒鉄学園」の不穏な噂が聞こえてきて……。

今後も不定期での更新となりますが、じっくりと楽しんでいただければ幸いです!

「ッパン! ッパン! ギュルルルル……ッ」

私の狭いワンルームアパートに、ピンポン球が激しく空気を引き裂く異音が反響する。

時計の針は、夜の8時を回ったところだ。

「嘘……信じらんない! 今の、私の全力のパワードライブよ!? なんでそんな、一歩も動かずに当たり前みたいに拾えるわけ!?」

金髪混じりのウェーブヘアをポニーテールに結び、額にびっしょりと汗を浮かべた一ノ瀬凛が、信じられないものを見るような目で私を睨みつけていた。

ここは私の自宅。

部屋の中央を丸々占領している世界大会仕様の特注卓球台の向こう側で、凛はすでに2時間以上もドライブを打ち込み続けている。

「だから言ったじゃん。おじいちゃんのカットは、相手の力を利用して何倍もの下回転をかけるの。凛が強く打てば打つほど、私に戻ってくる球の回転はエグくなるんだよ」

私は涼しい顔でラケットを構え直す。

一歩も下がらず、台のすぐ近くで凛の弾丸ドライブの威力を完全に殺し、ネット際数センチにポトリと落とす。バウンドした球は手前に戻るように不気味に跳ねた。

戦時中、第一次・第二次世界大戦の「暗黒時代」に、私の先祖たちが防空壕の地下や憲兵の目を盗んだ山奥で、命がけで磨き上げた絶対防御の技術。

それが、私の身体には文字通り血として流れている。

「はぁー……本当、バケモノね。大正時代から100年続いてる因縁の重さってやつ? 骨の髄まで染み渡ってるじゃない」

凛は荒い息を吐きながら、ユニフォームの裾で首筋の汗を拭った。ギャル特有の派手な見た目なのに、卓球のことになると誰よりも真剣で、貪欲だ。そのギャップが、少しだけ眩しく見える。

「でもね、紬。私があんたのそのカットを、絶対に力でブチ抜いてみせるから。それができたら、私、世界一の攻撃型になれる気がするの」

「不吉なこと言わないでよ。私は静かに翠ヶ丘高校で普通の女子高生ライフを送りたいの。凛の練習相手になるのも、私の正体を学校でバラさないっていう条件の取引なんだからね」

私が釘を刺すと、凛はニヤリと悪戯っぽく笑ってラケットの先端を私に向けてきた。

「はいはい。あ、そうだ。学校といえばさ、明日、あの『黒鉄学園』の男子部がうちの体育館に合同練習に来るらしいわよ」

「……え? 黒鉄学園?」

その名前に、私は思わずラケットを握る手を止めた。

黒鉄学園。

男子卓球界において、圧倒的なパワーと重量級のパワードライブで県内の頂点に君臨する、超エリート強豪校だ。

翠ヶ丘高校には男子卓球部がないため、彼らはよく「都合の良い練習台」として、あるいは「女子だけの弱小部」と見下して、うちの体育館を半ば占領するように遠征にやってくる。

「そう。しかも今回、黒鉄の今年の新入生エースで、中学全国ベスト4の『荒金』って奴も来るんだって。相当性格がひねくれてて、女子の卓球をお遊びのオワコン女子卓球部ってバカにしてるって有名よ」

凛は不機嫌そうに口を尖らせ、手元のピンポン球をぽんぽんと弾いた。

「うちの先輩たちも、黒鉄の男子が来るといつもビクビクして場所を譲っちゃうのよね。それが本当にムカつく。特にその荒金って奴、私たちが同じ女子卓球部がある蒼ヶ溪高校と100年の因縁があることすら『女のおままごとの歴史』って鼻で笑っているらしいわ」

「女のおままごと、ね……」

私は静かに呟き、自分の古いラケットを見つめた。

戦時中の暗黒時代、贅沢品だと弾圧され、道具を没収され、それでも卓球への情熱を捨てきれずに命を懸けてラリーを繋いだ先祖たちの歴史。

それを「おままごと」と切り捨てられるのは、たとえ実力を隠している身だとしても、胸の奥がチリチリと燃えるように熱くなる。

「まあ、私は明日も部内最下位の地味子として、体育館の隅っこで大人しく球拾いしてるだけだから関係ないけどね」

「あんたねぇ……その無駄に高い演技力、一発殴らせてほしいわ」

凛は呆れたように肩をすくめると、再び鋭い眼差しでラケットを構えた。

「ほら、お喋りはここまで! 紬、次の球行くわよ! 今度はバックサイドの限界ギリギリをぶち抜いてあげる!」

「はいはい、どこに打ってきても無駄なのに」

「ッパン!!」

再び、夜のアパートに激しいピンポンの音が響き渡る。

凛の放つ弾丸ドライブを、私はミリ単位の狂いもなく、すべて吸い寄せられるようにレシーブしていく。

明日、翠ヶ丘高校にやってくる黒鉄学園の猛者たち。

彼らが私たちの平穏をどれほど掻き乱そうとも、このワンルームで培われた「最強の矛と盾」が、すでに牙を剥き始めていた。

第3話 了

第3話をお読みいただき、ありがとうございました!

今後は不定期での更新となります。少し投稿日が空いてしまったらすみません。

紬と凛の秘密のワンルーム特訓。二人のバディとしての距離が少しずつ縮まる中、男子の超強豪校である「黒鉄学園」とその生意気な新入生エース・荒金の存在が明かされました。

次回、ついに黒鉄学園の男子たちが翠ヶ丘高校の体育館に来襲!

お遊びのオワコン女子卓球部、そして100年の歴史を舐め腐る彼らの横暴が始まります……。

【読者の皆様へのお願い】

「続きの無双展開が気になる!」「黒鉄の鼻をあかしてほしい!」「荒金がとてもむかつく!」と思ってくださった方は、ぜひ画面下部から、

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皆様の熱い応援が、次の話を書き上げる最大の原動力になります。それでは、また次回の更新でお会いしましょう!


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